Dunk Like Lightning


第10章 集中豪雨

 男女とも決勝進出を決めた大和台高校バスケ部、雨の中練習にも一層熱が入っている。
 合同練習が終わり、解散した後も帰る者は少ない。
 いくら、
「今むちゃしちゃあかんで!」
 と北野監督が言っても、隠れて練習するくらいだ。
 松浦哲太がV字ドリブルを練習している。
「がんばってるね、松浦くん」
「妹尾キャプテン!」
 妹尾舞が哲太に声をかけた。
「なんでしょうか」
「ちょっと来て欲しいの」
 舞ほどの美女にそう誘われて、普通なら悪い気はしない。だが、哲太はびくびくしている。
 冷静な雰囲気を崩さず、冷徹に全てを見通す目は、男女問わず恐れられている。竜次でさえ、舞には頭が上がらないのだ。
「さ、来て」
 と、柔らかい微笑で誘う。
 はらりと、上着を脱ぎ捨てる。
「いつも通り、ペネトレイトからのレイアップ。全速で十本!
 ディフェンスも意識しなさい」
 美しい声で、きついことを言う。
「はいっ!」
 哲太は条件反射的に叫び、忠実に実行した。
 ディフェンスをよく見る。
 一気に滑り込み、ディフェンスに回った舞に…強引に突っ込む振りをして、ボールを背中に通して止まり、パスの相手を探す。
 素早く右にドライブし、ジャンプショットの体勢に入るが、手を止める。舞に読まれているから。
「松浦くん?」
 腰を落としたディフェンスの体勢のまま、厳しい目。
「今、ファウル覚悟で突っ込んでたら、抜けてたかも。」
 言い返そうとして、つまる。
 確かに、その解はあった。
「きみのスピードは、竜次くんにも負けないわ。なぜ強引に突っ込まないの?本来のきみは、そんなプレイヤーじゃないの?」
 でもおれは、哲太は言葉を失った。
 なぜ、強引なプレイができなくなったのか。
 なぜ、感性のままに動けなくなったのか。
 なぜ、ありのまま感情を出すのが、怖くなったのか。
「南中相手の予告十本、観てたわ。」
 真剣な目に、言葉が出ない。
「なぜスタイルを変えたのかは聞かない。ただもったいないし、チームの勝利にベストとも思えないの。」
 言葉を切って…そのまま、じっと見つめる。
 哲太はその視線に耐えかね、目をそらした。
「ちゃんと目を見なさい!」
 逃がさない。逃げられない。
 追いつめられた哲太が、不可解な衝動に震えた。彼女を抱きしめ、押し倒したい。めちゃくちゃにしたい。
 かろうじておさえた彼にできたことは、ドリブルを再開するだけ。
 舞は、静かに腰を落としてディフェンスの姿勢になる。
「もっと積極的に攻めなさい。それが、大和台のバスケよ。それは君にも合っているはずよ」

 みんな、決勝戦で頭がいっぱいだ。
 相手は大和台が何年も煮え湯を飲まされた強豪、県唯一の代表、潮見大付属。今年こそ、潮見に勝って全国に行き、湘北に勝つ!それだけを考えて練習していた。
 が、それは突然起こった。だが、それ以前からゆっくりと動いていた。
 悲鳴の携帯電話が、練習を終えた七緒に。
 機銃掃射のような雨音が混じる。
「七緒さん!」
 聞き覚えのある関西弁。陵南の相田彦一だ。
「相田か?どうだ陵南、湘北は!」
「あ、うち、湘北にも海南にも勝ったで!」
「なに!」
 七緒の大声に、何人かが聞き耳を立てる。
「全国は決まりや。湘北はうちに負けてきついけど、明日海南戦で…って、それどころやないんや!」
「おい、それがそれどころじゃないって、なんだ!」
 その、切迫した口調が伝わった。
「すんまへん、大変なことをしてしもた!大和台が全国に行けなくなったら切腹ものや」
「うちが…どうしたんだ?」
「ほんますんまへん、…」
 じっと考え込む気配。
「卓巳さんと、如月まいさんを呼んでくれまへんか?」

「卓巳だけど。がんばったな!」
「おおきに…すんまへん、落ち着いて聞きよし。とんでもないことや。」
 声が落ち、まいにおびえが浮かぶ。
「あんたがたが夜、秘密で練習してる画像が、とんでもない奴に流れてしもたんです!」
 卓巳と、まいの全身が硬直した。
 一分近い間。
「なん…だって!」
 その意味は即座に分かった。そう、あの…変身能力を半ば使い、キツネの耳としっぽを出したまま、人間離れした運動能力を発揮しているまい。
 秘密が。
「今どこにいる!」
「海南戦が終わって、」
「頼む…今すぐ来てくれ、大和台に」
「はいっ!」
 もう、完全に悲鳴だった。
 大和台のインターハイ出場辞退もありうる。秘密がばれたら…試合では人間以上の力を使っていない、といくら言っても通用すまい。
 ルールブックに「人間外の存在」は明記されていないが、辞退するのが当然だろう。
 間違いなく、男女とも。廃部もありえる。
 それ以前に、まいの正体が暴かれたら、人間としての生活も危ない。解剖、実験台、見世物…不吉な言葉が脳裏を巡る。

 エンジン音を響かせて、スクーターが夜の大和台高校に飛び込んだ。
 泥が派手にはねて飛ぶ。
「卓巳さん!」
「相田」
 メットを放り出し、彦一が矮躯を躍らせる。
 そして、水たまりに土下座した。
「一体、何があったんだ!」
 卓巳が彦一のむなぐらをつかむ。
「だまされた」
 言いかけて絶句。
「卓巳くん、殴っちゃ駄目!」
 まいが必死で止めた。
「いくらでも殴ってええ!ほんますんまへん、すんまへん」
「泣くな、何が…教えてくれ」
 卓巳が手を放した。
「大和台をチェックしようとした、それだけだったんや。そのため、夜でも撮影できる特殊なカメラを、関北の新聞部におる知り合いに借りたんや。」
「なんて奴だ?」
「安原玄。こっちは大和台の情報がほしかったし、あいつはわいの情報、ちょっとした情報交換のつもりやった。でも、借りたデジカメに…消したつもりやったのに映像が残ってて、記事にするから話聞かせろって」
「驚いた?」
 軽い自嘲…そうとしか表現できない絶望。
「そりゃまあ。」
 一息沈黙、
「でも、あの日大和台女子の試合も見たで。ずるはひとつもしてへん!まいさんは、本物のバスケットウーマンやった。わい保証するで!」
「ありがとぅ…」
 まいが、半ば涙ぐんだ。
「ありがとう、彦一。だが、おまえみたいな奴ばかりじゃない。その安原って奴は?」
「骨の髄からブン屋や」
「まずいな、新聞部がそんなスクープを見逃すはずがない。」
「どうしよう、卓巳くん」
 まいは、卓巳にすがりついている。まるで、かつての気弱なまいに戻ったようだ。
「心配するな。何があってもまいちゃんは守る!たとえバスケットを諦めても」
 卓巳が、自分の言葉に呆然とした。
 自分がどれだけバスケットが好きか、それを奪われるのがどんなに辛いか。だが目の前で震えている女には、それ以上の価値がある。
「絶対に」
 まいが、卓巳にすがりついた。
「あまったれやがって」
 雨に隠れた竜次に、誰も気づかなかった。

「おい武上」
 直後の男子更衣室、竜也がびくっとする。
 やはり鬼の竜次は、スーパールーキー『狙撃手』武上竜也も怖い。
「お前、キャプテンのスランプを何とかしたろ?隠しても無駄だ。」
「それがどうかした?」
 ぽか。
「先輩には敬語だ!その力を貸せ。何とか助けたいんだ、卓巳と如月を」
「一体何が」
「その前に秘密を誓え」
「あれは俺一人の力じゃない。一秒を要する事か?俺を信用するか?」
「秒じゃないが日だ。信用してなきゃこんなこといわない」
 しばらく竜也は熟考し、
「パソコンとインターネットは使えるか?」
「一応使える」
「ブラウザは?」
「ネットドライブ5.2だ」
「なら、帰ってすぐ」
 と、メモ用紙を出してhttp://www.〜を書き
「にアクセスしてくれ。パスワードを要求されるから"Rs"ついで個人パスに"5Ryuuzi"と入力して、指示通りに動いてくれ。」
「わかった。あ、あとな」
「?」
 ぼか。
「先輩には敬語だと言ったろ!」

「直接行こう。なんとしても資料をとり返して、記事を中止してもらう。」
 卓巳が決断した。
「いざとなったら」
 まいの力、催眠術があれば、記憶を消したり行動を操作したりできる。
「でも一度しか使ってないし」
「できれば、使わずにすませたい。」
「わいも、なんでもします!」
 彦一が、雨と泥と悔恨でべちょべしょに。
「頼む、そいつの家を教えてくれ。」

 とある極秘チャットルームで、Rsの緊急ミーティングが開かれた。
 一報を受けた玲がネットから、里緒が携帯電話を通じて情報を集める。
 三十分で関北高校新聞部のプロフィールをそろえ、人間の変身についての論文を数編探し出した二人に、
>Ryuuzi;おまえらって、何者だ?
 竜次の当然の疑問。
>Ryuuya;おれたち四人は同じ中学で、問題を抱えてた
>Rio;あたしは、校内賭博にはまった担任に、カンニングを強要されたの
>Ruka;あたしははめられて、演劇部をやめてた
>Ryuuya;俺は怪我でバスケをやめて、荒れてたんだ
>Rei;おれが、ある復讐のためにそれを調べてみんなを集め、一人一人の問題を解決していった
>Ryuuya;それ知ったとき、腹立ったぜ
>Rio;今は正義の何でも屋
>Ryuuzi;正義?甘ったれたことを
>Rei;そんな単純じゃない
>Rei;携帯電話追跡したけど、相田彦一と河合卓巳が関北市に向かってる
>Rio;直接、安原って人と交渉する気?
>Ryuuya;大丈夫か?
>Rryuuzi;やばい。あいつ思いつめてる
>Ryuuya;何かあったらインターハイ出られねえ!
>Rei;相田の携帯電話をハッキングする
>Ryuuya;おれはやつらを追う。モバイルに切り替える一度落ちる
>Ryuuzi;オレもいく!
>Rei;モバイルは持っているのか?
>Ryuuzi;武上と合流する。三角公園で待て>竜也
>Rei;安原玄の住所と周辺地図を送る
>Rio;グッドラック!

 雨の中、竜次のバイクに竜也が飛び乗った。
「二人乗り、慣れてますね。彼女と?」
 竜也がにやにやからかう。
「ばかやろう、しっかり場所調べろ」
 竜次が怒鳴りつけ、飛ばした。
「間に合うといいが」
「いた!」
 スクーターと、追うタクシー。
「先回り!次の路地右に」
 地図をダウンロードし、竜也が指示を出す。バイクが大きくバンクし、泥をはねた。

 大きく、古い団地の建物にスクーターが止まり、タクシーから二人が飛び降りる。
 疲れきった体に鞭打って階段を駆け登る。と、彦一がスキンヘッドにメガネの男と鉢合わせした。
「玄!」
「彦一」
「データ返せ!記事にすな!」
 泣きっ面の彦一がしがみつく。
「もうおせーよ、それどころじゃねえんだ」
 玄の表情も、何か必死だ。
「何かあったのか?」
 不吉な予感。
 雨は激しい。
「写真のデータ、とられたんだ」
「え?」
 見ると、玄の顔には無数の、殴られたあざがある。
 腕に煙草を押しつけられた火傷や、鋭利な刃物による切り傷も。
「どうしたの?」
「…おれもお前をだましたようなもんだが、ヤツはそれ以上だ」
「ヤツ?」
 玄が黙り込む。足音がすると数人の高校生が駆けつけてきた。
「部長!大丈夫ですか」
 ふわっとしたロングヘアに大きなリボンの柚枝が、玄にかけよる。
「この人たちは?」
 柔らかい黒髪を肩でそろえた知的な女性、浅葱が彦一と卓巳、まいを振り向く。
「今回のネタだ。コイツラじゃない」
 玄が、にがにがしげに答えた。
「一体何があったんすか?スクープがあるから号外って部室で準備させといて、いきなり家から電話でSOSなんて」
 黒髪を後ろ短め、前少し長めにそろえ、白目が多くやるきなさそうに見える藤吾が聞いた。
「まるで強盗だ、ピッキングで入ってきて、おれも親父もババアもぶちのめして、ネガとデータ脅し取りやがった。」
「まるでじゃなくて強盗だな」
 美男の毅太郎が、人事のように。
「警察に知らせたら?」
 ポニーテールの実香留が、ちゃっかり毅太郎にしがみつきながら。彼女はいつも毅太郎にしがみついているが。
「そうだ、警察に…警察に、なんていうんだ?怪奇現象のフィルムを暴走族とフリー記者が強盗した?」
 玄が自分の言葉に呆れている。
「それに、親は…警察に言うなって。いったら、あることないこと報道されるって。親父の会社がつぶれる情報握られてたし、親父の援交とかでっちあげるって」
 玄の表情は、怒りと悔しさに崩れていた。
 でっちあげ報道の恐ろしさは、新聞部だからこそよく知っている。
 部員も、自業自得とはいえなかった。
 呆然としていた彦一と卓巳が、
「一体誰がそんなことを!」
「ジョニ田。あいつがつながってる悪ども」
「ジョニ田って、タレントつぶしのジョニー堀田…」
 実香留のつぶやきが、虚しくひびく。
「どこでこのスクープをかぎつけたんだか…いきなりよこせって。断ったら実力行使にでやがった」
「それにしても、そのスクープってなに?よっぽどの」
 実香留が、興味津々で。
「…これよ」
 まいが言うと、目を閉じる。
 ふわっと耳が犬のそれに変わる。ふさふさしたセピア色のしっぽが、スカートを押し上げてはねる。
 次の瞬間、彼女は一匹のキツネに変わっていた。中身の抜けた服が、ふわさと広がる。
 卓巳は抱き上げると、
「こういうことだ。おれは、まいちゃんをなんとしても守る。それに、インターハイにいきたいんだ!スクープはわかるが、頼む…出さないでくれ」
 いって、土下座した。
「もちろんよ!」
 ほろりとした柚枝が、即座に、勝手に請け合う。みなうなずく。
 玄にツッコむ気力はなかった。
 ちゃっかり写真をとりまくっていた毅太郎が、表情を出さずにカメラを開け、フィルムを引き出す。
「でも、あたしたちが記事を止めても全国誌でばらされたらなんにもならないわ。どうやってジョニ田の記事を止めるか」
 浅葱が首をひねった。
「まいちゃんの催眠術で、でも悪い奴等がついてる…よし、ワルはおれが」
「バカヤロウ」
 物陰から出てきた竜次が、卓巳の尻を蹴飛ばした。
「インターハイどうするんだ!だからてめえはあまちゃんなんだ」
「竜次、竜也も?」
「それになぜ始めにおれにいわねんだよ。まさか、おれがなんも知らねって思ってたんじゃねえだろうな」
 竜次が卓巳の胸ぐらをつかむ、キツネのまいがほえる。
「え…知ってたの?」
 また竜次が殴る。
「まあまあ、やおいなじゃれあいはそれくらいにして」
 余計な一言をいった竜也に左右からパンチが飛び、
「とりあえず、自己紹介でもしましょうか。」
 と、浅葱がまとめた。

「条理が通じる相手じゃない。」
 玄の部屋を片づけながら。竜次の言葉に皆うなずく。
 竜次と竜也は、単に彦一と卓巳の話を立ち聞きしたことにして、Rsについては伏せた。
 まいは浴室で人間に戻り、着替えてきた。
「まいちゃんが、催眠術でジョニ田初め関係者の記憶を消す」
「おれのダチが、ハッキングでデータを消せば完璧」
 卓巳と竜也が手をあげたが、藤吾が冷静に
「データは分散して保管してあるはずだ。全部見つけるのは難しいし、どれか残っていたら、いつかたまたま見つけたときに元の木阿弥だ」
 と論破した。
「まあでも、大筋はそれでいいと思う。問題は、あと五日で発売になる週刊サーズデイ」
「に、記事を載せさせないことだ。発売そのものを止めてもいいし、記事を載せさせなくてもいい」
 浅葱に毅太郎が軽くうなずいた。
「毅太郎先輩の言うとおり!」
 実香留がうなずき、毅太郎にべたべたする。
 関北新聞部は慣れているが、竜次たちは少しむかついているようだ。
「記事を載せないためには?」
「編集を説得する、というのは却下だな。暴力的な手段も使いたくはない。如月さんの催眠術では」
 藤吾がくびをひねった。
「何とかならない、霊感少女?」
 実香留が柚枝に上目で聞くが、柚枝はもう必死で
「関係ない!」
 と拒否した。
「できないの?たとえば、でっち上げ記事で自殺した人の霊を憑けて金縛りにするとか呪い殺すとか」
「どんな反動があると思ってるんですか、死ぬだけじゃすみませんよ!」
 浅葱の言葉に、柚枝は半泣き。
「できないわけじゃないんだな。最後の手段として、考えておこう」
 藤吾の指摘に、柚枝はとうとう泣き出した。
「な〜かせた、泣かせた」
 女子全員に指さされ、へこむ藤吾…
「とりあえずの時間稼ぎならおめーの催眠術でできる。で、なんとかジョニ田と対等に…弱みだ!」
 竜次が手を打つ。
「そうね、むこうが玄の、親の会社の弱みまで握ってるから手も足も出ない、なら奴の弱みを握れば!」
 浅葱がうなずき、毅太郎と視線を交わした。
「今回の件も犯罪やし、弱みになるやろ。せやけどまだ足らへんな、なんや探してくる!電話かりんで」
 と、彦一が持参したノートパソコンから線をモデムに接続、ネットに飛びこんだ。
「おれも!」
 竜也もモバイルをいじり、玲から情報を受け取って彦一に教え始めた。
「新聞と週刊誌のスクラップがあるな、見てみるか」
 と、玄も押し入れを開けて、ごそごそ紙の山と格闘を始めた。新聞部も手伝う。
「なにこれ!」
 浅葱が大声、玄が慌てた。
 エロ雑誌置き場を開けたらしい。
「みんな、あいつのせいで自殺した人がいたら名前教えて!柚枝が口寄せで情報聞けるから」
 実香留の言葉に、柚枝が嫌そうな表情を浮かべる。
「そういえば、さっき戦った海南に、陸上でいいとこいってたけどドーピングでぽしゃったのがいるんや。せやけど、ドーピングするやつには見えへんねん。」
 彦一が首をかしげた。
「その事件、覚えてる!確か週刊サーズデイだった」
 玄が、重い写真週刊誌の柱をひっくり返す。
 竜也(に玲が指示して)がデータベースを見せ、
「見つかった!署名記事、ジョニ田だ…これから調べるけど、多分でっち上げ記事だ。」
 皆が目を見合わせた。
「とりあえず、ネットでジョニ田のでっち上げ記事疑惑の、噂を作る。それで信用を失墜させて、如月先輩の催眠術で編集長を操って記事を没にさせる。これで時間稼ぎはできる。」
 竜也の言葉だが、玲の言葉を朗読しているだけだ。
「あとはジョニ田の弱みを確認し、それを武器に談判してパソコンのデータも、それからジョニ田の記憶も消す。これでいいと思うけど」
 浅葱がまとめた。
(だが、奴には暴力がある。それをなんとかしないと)
 竜次はそれに気づいている。ひそかに覚悟を決めているようだが…竜也はそれを察しつつ、自信ありげな表情。心当たりがあるようだ。
「そうそう、全部解決したら、あたしたちの記憶は消していいわよ」
 浅葱が念を押したが、まいは首をふった。
「いいですよ、皆さんを信じます。」
「ありがと」
「出たいよな、インターハイ」
 卓巳がぽつりと。
「あたりまえだ、そのためにあんなに頑張ったんだ。どれもこれも、おめえがあまちゃんだからだ」
 竜次がぽかり、卓巳を殴った。
「なにすんだよ!」
「だがな、本気で守ろうってんなら、んなことかまうな。オレも、バスケ部の皆を裏切ってでも、利用してでも守れ。インターハイに行く、友達に迷惑をかけない、まいも守るなんてあまったれてんじゃねえよ!」
 竜次の目は真剣だ。
「おれは、…」
 卓巳が絶句した。
「どうせなら、うちもアンタらにとことん勝ってほしい。インターハイで活躍して、その記事を書かせてほしい。
 それが、アンタらに負けた関北バスケ部の、記事の続きにもなるんだ」
 そう、毅太郎が漏らした。
「それを、どこかの部長(とかいてバカと読んだ)が台無しにしかけたけどね」
 と、浅葱がつけくわえる。
 初めて笑いが起きた。
 藤吾は、まだ泣いている柚枝を慰めている。

>Ruka;大手出版社と敏腕芸能記者が相手、学園長以来の強敵ね
>Rei;それ以上かもしれない。Rs史上最も困難な作戦になるだろう。覚悟はいいな
>Ryuuya;竜次先輩も卓巳先輩も、暴力に対しては自分で何とかしようとしてる。それで出場停止とか廃部とかにならないよう、なんとかしないと
>Rei;桜木花道の仲間と接触してくれ
>Ryuuya;あ、その手か。でも悪いな
>Ruka;あたしは今回、参加できない
>Rei;ぎりぎりの作戦になりそうだな
>Rio;ミッション・インポッシブルってとこね
>Rei;それでいいな。Rsミッションインポッシブル、計画(プログラム)実行(Run)!

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