パターン分類10-8

んちゃ、講義を始めます。出席カードを回してください。

昔の講義を読み返していて、かなり重大なミスに気付きました。なぜこれにそのとき気付かなかったのか、かなりショックなのですが・・・。性的発達段階のところで、本講義では現実的解釈ばかりでしたが、少女マンガではそれだけとは限りません。むしろ、特に昔の作品では美形で言動も大人っぽいことから心理的にも成熟したタイプで、それなのに性欲をもたないとしか解釈できない理想化された男性像があります。僕はそれを成熟しているが押さえている、と解釈しましたが、この解釈では説明し切れませんね。やはり性を受け止められない少女読者のための理想的な男性像として性を除去されたキャラクター、ととらえたほうがいい場合のほうが圧倒的に多いでしょう。これは男女の両方にあります。読者としての女子も性を受け入れられない場合、自分の投影である主人公に性欲が存在するのは我慢できないでしょうから。そして、その性が除去されていることと、その外見にも大きな関係があると思います。昔の(現代でも正統派の)少女マンガの女子が普通、まず胸が大きく描かれることがなかったり男子も筋肉質ではない事について、今までは単純に胸が小さいのは主人公は読者である普通の(特別にスタイルがいいわけでもない)少女の投影だからだと思っていましたが、性を除去した結果でもあると思えてきました。反面意地悪役やそこまでいかないライバルなどでは胸の曲線などを強調し、大人っぽさを演出しています。最近、女子の胸が大きく描かれるようになってきた、僕の用語ですがスタイル革命は本質的に性の除去を弱めたという意味もあるのかも知れません。無論男性読者の増加に対応した読者サービスの一面もあるでしょう。

以前の作品のキャラクターは、行動の深層にも性的な要素が見られないことが多かったと思います。近年それが弱まってきて、かなり多くのキャラクターが現実に近づいてきてはいますが。

もう一つ、これは単なる思い付きの概念ですので、どう使えばいいのか分からないのですが、この概念の導入によって理論が分かりやすくなると思います。理論構造全体にも関わるかも知れません。

「恋愛欲」と言う概念を定義しておきます。定義はそのまま、「恋愛をしたいと言う欲求」です。これと性欲の区別が難しいのですが。恋に恋する状態は、この欲求が特に強くなっている状態、と解釈できます。なぜこれが発生するかについてですが、まあ既述ですがまとめます。まだ性的に全く無垢な段階では、大人になりたいと言う気持ちがかなり強くあります。大人になるため、大人の象徴である恋愛(性については概念自体がない、正確に言えば抑制している)をして見たいと思っています。その模倣が恋愛に対する欲求になっています。恋に恋する状態というのは恋愛欲が強くなる状態と言い換えたほうが分かりやすいかも知れません。性的に目覚め始めてからはひそかに性欲も後押しをするようになります。特に男子の場合、性欲なのか恋愛欲なのか分かりにくいところがありますね。

他にも細かく検討したら面白いかも知れませんが、それはまとめのときにします。

さらに補足、もう今回は補足中心ですね、パターンが思いあたらなかった(古い少女マンガは余り読んでいないもので)のと、現代ではそれほど重要なパターンではないのでほったらかしにしてしまいましたが、上流階級ものについて少し詳しく考えてみるべきでしょう。

上流階級ものでは、基本的にどのような状態変化が話の始まりになるか、これが関心の中心です。状態変化の主体には大別して主人公個人と家全体があります。個人の状態変化は無論大きく家の状態を変化させますし、その逆も言えるのですが。

これについて考える際、どうしても家を上下で考えるような言い方をしなければなりません、それについてかなり良心の呵責があるのですが、作品世界において明確に分けられている以上やむをえぬ事と御理解下さい。

家の状態変化ですが、上昇と低下が大きいものです。他には家族構成の変化、社会構造そのものの変化(歴史ものに多い)等があります。家の内部における状態変化には各構成員の状態変化に還元できますので後述とします。

家が上昇するというのは、基本的に家長の出世で表現されます。地位や身分の上昇、財産の増加、利権の獲得、名誉などがありますが、中でも大きいのが身分の上昇です。これは非常に微妙なことです。前提として、はっきりした身分制度や社交界などがある社会でないとこれは起こり得ませんし、特に共産圏のような変形の身分制度がある場合には複雑になります。非常に多く見られるのは財産を得たブルジョワが、ある社交界への参加を認められることです。

家が低下するのはその逆です。中でも「社交界から相手にされなくなった」というのが(分かりやすく言うと階級内での村八分)大きいです。その原因には家長の左遷や粛正、スキャンダル等があります。

主人公個人の変化としては、やはり上昇と低下があります。その変化は正確には家の中でのものと外でのものがあるのですが、普通は密接に関連しています。

家の中での地位変化は養子縁組についての検討で考えていきます。外での地位変化ですが、これは学校等における地位の変化が基本です。学校での生徒の地位はまず年齢ですが、同級生同士の地位は上流階級中心の学校においては基本的に親の地位に直接反映します。歴史ものなどでは親の地位が高いものが、それゆえにいじめられることは難しいですね。故に家の変化と直結しています。

主人公の状態変化において特に重要なもので、古いパターンなので触れませんでしたが、養子縁組が話の基本になるものが多いです。この場合、上流の家に新しく主人公が養子に入るか、今まで何の疑問もなく育ってきた主人公が本当は養子だと発覚したかが始まりになります。

主人公が養子になるパターンの変形として、親の再婚によって継母と継子ができたり、逆に自分が継子として母とともにその家に入ったり隠し子が見出されたりがあります。

他に重要な主人公の状態変化には家の変化と直結したものが挙げられます。大体のモチーフは既述です。

やっと本題ですが今回も前回同様家族がテーマの話で、主な舞台が家庭である場合について考えていきたいと思います。これは、普通の子供の生活である以上、どうしても学校と密接に関連します。その中でテーマとして家族が強いものです。最大の分類事項は不良が関わるかどうかだと思います。不良ものについては後述し、そうでないケースについて検討していきます。他関連して家を舞台とし、そのペットを中心にしたものもありますが、これも後述します。

この、普通の生活をしている小学校から高校までの一般学生の主人公を中心にその家庭を描写するものですが、この場合起き得る問題として、その問題の原因となった出来事が家族の誰にふりかかったかが大きいです。一番多いのは主人公です。他には父親、母親、両親の関係変化、兄弟姉妹、祖父母の問題等があります。もう一つ、より大きな問題が互いの葛藤でしょう。

今回は簡単な項目分けに止めておきます。どうしても浮かばないし、その他で重くなってしまっていますので。

ペットに関してですが、ペットものはそれ自体が別のジャンルですね。人間の家庭生活を背景にしており、ある意味家族の一員であるという点ではここで議論するのも妥当ですが。ペットを中心にした話には大別して、ペットの擬人化があるかどうかが中心になります。

擬人化がある場合ですが、その擬人化も三つに分かれます。一つは普通の動物が、読者にのみわかる言葉でのモノローグや動物同士の会話をするもので、人間の登場人物は普通の世界です。もう一つはギャグマンガに近い極端なデフォルメがあるもので、犬や猫が直立二足歩行し、人間と口の音声による人間語で会話し、読み書きをし、箸さえ使うようなものもあります。この場合には普通の人間も動物と離せることを自然に受け止めています。最後が中間的なもので、ファンタジーに分類してよいでしょう。何らかの魔法で一時的に動物の会話が可能になった、特定の人物を中心にした話です。

擬人化がない場合ですが、これはむしろペットをを見守る飼い主の話になってきます。これにおいて、最初は普通の日常かペットを入手・・・購入か捨て犬、捨て猫を拾ってくるかです。拾ってくる事の変形として、小学生位の子供が捨て犬や捨て猫を見つけて情が移り、そこから始まる話も多く見られます。これについては後述。入手したばかりのペットは子供であることが多く、最初にそれを育てる段階から大変な思いをします。育児に近いものがありますね。その時に、飼い主の女の子が自分ではどうしようもなくなって、それで男の子の助力を求める、または飼い主のほうの間違いを指摘、その時は喧嘩になるが死にそうになって間違いを悟り、助けを求める等のパターンも多く見られます。

育ってから起きる問題ですが、一番大きいのは転居に伴う飼育不能です。日本の最もやるせない問題の一つです。日本人の大半を占めるサラリーマンは住居の点で非常に不安定です。年中異動等があり、転居を余儀なくされます。その際、大抵行き先になる集合住宅では基本的にペット不可です。そのために今まで育ててきた犬や猫を・・・個室内で飼育可能な小鳥やハムスターは禁止に入らず、大型獣を飼える家庭は異動とは無縁です・・・手放さなければなりません。それには一番いいのが知人に引き取ってもらうことですが、それは幸運なケースです。保健所で処分を依頼するのは心情的に耐え難い、と結局捨ててしまうことが圧倒的に多いです。ペットを捨てる理由には、他に育てられない数の子供が生まれた、アレルギーなどを発症した等があります。いずれにせよ、かわいがってきた子供にとっては・・・言葉にならないほど辛いことです。必死で反対するのは勿論ですが、どうしようもないことも勿論です。パターンとしては、奇跡的に捨てたはずのペットが新居までたどりつき、それで後悔した親が万難を排して飼い続けることを決意するか、または直前に意外な引き取り手(そこで恋愛とからめることが多い)が見つかるかです。本当にこれについては、僕は運よく大事な犬を飼い続けることができていますが、胸が痛いです。

ペットが育っていく過程でよく見られるパターンに、ペットの恋に付随した飼い主の恋があります。単に出会いや成り行きデートなどがそのペット同士の恋によって、というわけです。他にはペットと感情的に争ってしまって、暴力をふるってしまい、(それについて友人や恋愛の相手と争ったりも)結局それを反省すると言うのも多く見られます。

そして最終的にはペットは普通飼い主より早く死ぬわけですが、それについての話は余り見ません。やはり辛すぎるからでしょうか。

動物を拾ってきた話ですが、この場合最終的に拾った者が飼うか飼わないかに大別できます。飼う場合には集合住宅の賃貸契約のような、家人の意志でもどうしようもない障害がない場合です。家出などの極端な抗議での説得が多いですね。飼わない場合にどうなるかですが、知り合いが引き取るのと他の人が拾うのとに別れます。知り合いで多く見られるのは、長期連載中のエピソードのようなものなら友人でもいいですが、普通恋愛の相手です。

かなり尻切れ蜻蛉ですが、今回はここまでにします。何か質問は?御静聴深謝。

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