笹野鳥生(ささの とりお)

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作風概説

 硬質の絵で、自然描写が見事。本質をずばりと切り取る事ができる。
 なぜか終始はっとさせられるような、表情が硬いのに内面が伝わる、浮き上がるような楷書体と言うより隷書体の絵で技術、魂全てにおいて高水準、特に間のとりかたが絶妙。

 空気がやたらシリアスな分、会話などで軽く入るギャグが効果的になる。
 ストーリーも不思議な冷たさはあるが的確で、読後感がとてもいい。


代表作

96「すてきな夏休み」
 年上で遠くの大学に行っていた幼なじみの恭ちゃんが帰ってきた!海も砂浜も何も変わらない。でも、恭ちゃんは結婚する。うそだと言って!もう、今までの恭ちゃんはどこにもいない。でも、最後に恭ちゃんは誓ってくれる。切ない心理、さりげないのだが見事な自然描写、特選だけはある作品。

97「土手道をきみと」
 繭子ちゃんと松本くんは、ある日同じ景色を見てから一緒に帰る間柄だけどつきあっているわけではなく、普通の話をするだけ。でも、ある日松本くんが転校することになって。告白されたけど、頭が混乱して。

99「学校の怪談4」
 映画原作のマンガ版。そっけない描写がかえって恐怖を煽る。

2000「グレープフルーツ」
 告白され、断った香穂は直後、自分に告白してきた深海くんが交通事故で死んだ事を知る。そして次の日、深海くんは香穂に取り憑いて、復讐のため呪い殺すと・・・でもやる事は不思議とせこい。
 半ば自棄になって川に飛び込んだら、深海くんは助けてくれた。本当は彼にも一体どうしてこうなったのか、分らない。初恋の切なさ、そして美しさを静かに、抑えて澄み切ったタッチで描き出した傑作ゴーストラブストーリー。


今までの実績、現在の地位

 お飾りと言われ、筆者が知る限り今まで誰もいなかった「なかよし新人まんが賞」特選をもぎ取った天才的実力派。

「Amie」で長いこと修行していたが、やっと「なかよし」に復帰した。KCアミでは単行本あり。

 本誌にも頻繁に読み切りで出るなど連載を期待されていた作家だが、最近あまり登場しない。


個人的な感じ、思い出

 衝撃さえ感じている芸術性の高さ。「なかよし」にはあまりにも質が高すぎる気もするので、もっと大きな場で活躍してもいいと思っている。

 連載がとっくに始まっていておかしくない人気、実力、才能の持ち主なのに二年近くの間出てこないのはどうしたことか…このまま消えるにはあまりに惜しい存在なのだが。