松本洋子(まつもと ようこ)

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作風概説

 サスペンス・ホラーの女王。人間の心にある「魔」と素晴らしさの両面を知り尽くしている。最近丸くなったが昔は本気で「皆殺しの松本」だった。

 たった一つの例外(川上君)を除いて余り崩さないが、結構ユーモアや暖かい面もある。その人間洞察の深さには恐れ入るほかない。

 絵はやや古風な面もあるが、上品な美しさと内面描写は素晴らしい。


代表作

「黒の輪舞」文庫本発売中。
家柄と黒魔術に支配される学園に入学した従姉妹のエリーとジュリア。
 でも、学園の女王クラリスにエリーが捨て子だった事が暴かれ、エリーは最下層に入れられてしまう。そこでは不気味な事件が多発していた。幼い頃から敵に災いをもたらす力を持っていたエリーはその力を魔女達に見込まれ、優しくしてくれたラウルとジュリア双方の裏切りもあって闇に引き込まれていく。

88〜91「すくらんぶる同盟」文庫本全四巻。
 探偵の娘でミステリー同好会の瀬名はとても勘が鋭く、それだけで犯人を当ててしまう。他の部員も動物好きな正孝、物静かに見えるが口が悪い芽衣、実験好きな優等生の拓郎、瀬名の弟で別居している金持ちの母と暮らしている冷血小悪魔の静と曲者ぞろい。
 コメディから上質のサスペンス、ホラーになぜか異世界ファンタジーまでなどあらゆるジャンルで楽しめる名作。
 ギャグキャラクターの犬、川上くん(川上君の家の前で拾われたから。絶対に吠えない。吠えたら次元の扉が開いてとんでもないことになる。初対面の人にはかみつく)が面白い。

94〜99「闇は集う」単行本九巻。
 闇の中、ふと見つけた応接室様の部屋には、一人の少年が。彼は客が一度死んだことを告げる。客となった死後さまよう魂を導き、本来こうして死ぬ運命だったのか、それともどこかで狂ったのか相談し、時には生き返らせ、また時には外で飢える魔物の餌にし、時には心残りの願いを叶えてそのまま成仏させることになる。
 彼はろうそくの炎にその死に至る過程を映し出して死者に己の死の真相を解き明かし、そして死者がやり残したことをかなえさせるが、それは生者にとって時に慰め、時に自分の罪に対する復讐、そして時に愛する者の復活の奇跡となる。
 あまりにも深く壮大な、人間の生死罪業因果愛憎すべて、ついでに人情や笑いも取り混ぜた傑作叙事詩。


今までの実績、現在の地位

 ホラーの大家で、長年「なかよし」で連載、膨大な作品を創ってきた。

 長期に渡った「闇は集う」がついに完結した後「なかよし」からホラー自体が無くなり、登場しなくなっている。

 作品数も非常に多く、文庫化されている作品も多いがまだまだ未発表の名品も多い。


個人的な感じ、思い出

 昔からその作品の、あまりの恐怖に全身がすくんでいた。一度は大学生の男子であった筆者がしばらくにんじんを食べられなくなったこともある(文庫本または単行本「魔物語」参照)。

 なにより人間の無意識の奥底を冷たく見通し、その魔を容赦無く暴き出す作品には自分が人間であること自体絶望を感じたほど。もちろんパンドラの箱の希望のように、その中に輝くいい部分も描かれているのだが…ごくたまに見せる暖かさにはほっとさせられるし、逆に徹底したギャグや甘々のラブロマンスも見てみたいと思っている。