菊本さや (きくもと さや)

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作風概説

ぱっちりした、何とも言い難い印象。甘味は抑えめ、でもどこかふわりとしたところもあり、生気がとても強い。
とても整っていて透明感がある。ただし、それが変な方向になるととんでもない冷血な印象になることも。豊かな表情も描ける。厚めの唇と丸い瞳が面白いリアリティを産んでいる。身体の線がとてもきれい。
非常に細かく古い木を描き、破綻がない。老人のしわなども逃げずに描く。

意外性が強く、先が読めない楽しさがある。ストレートないい話を作れる。
ストーリーの省略が大胆で、そこまでやるかというほど本質だけを簡潔にえぐりだす。
組み立てが精緻で丁寧、非常にわかりやすく、心の動きだけを描くこともできる。

ちびキャラの使い方がうまい。大胆な手抜きをあえてやる。

話とほぼ無関係に「新作のパンおいしい」とただリラックスするコマを入れるような遊びもある。


代表作

2015「灯りの先には」
 雨漏り、エアコンなし、扉がたがたのぼろ家でおばあちゃん、おじいちゃん、お父さんと暮らすみこちゃん。
 ぼろ家のことは誰にも知られたくない…
 ある日、新聞の集金に出たとき、ドアの隙間から見られてしまった…クラスメートですごく怖そうな顔の神谷くんに。
 なぜか彼は奪取してきて何か頼んだけど、とにかく撃退して布団にくるまって震えている。
 神谷くんに翌日呼び出され、「あの芸術的な家におれの手をくわえたい」と。彼は大工修行中だったのだ。脅されて断る余地はなく、しかも自分では嫌で仕方ない家を褒めてくれる…

2016「甘いキミ恋するワタシ」
 いつも抱きついてくる幼なじみのたけちゃん。「父と子みたいなもの」とすら言ってくる…娘あつかいされるかのんちゃんは、彼のことが好きなのに。
 もうすぐ、女子が男子にお菓子を渡す伝統がある学校のイベント、でも今までの二年間はわざとまずく作ってしまった。今年が最後のチャンス…

2016「北川くんには近づかない!」
 北川くんを尾行している、学園トップの河野あゆみちゃん。成績はいいけどいつも寝ているので、先生に何とかしろと言われた。
 そして教室に入ると、なぜか布団が敷いてあってその隣に倒れこんでしまう…
 さらに翌日家に押しかけたら、両親とも忙しいので家事をしていることが多いそう。
 それで仲良くなるけれど、意識しすぎて彼を拒否してしまう。だが一人で熱が…

2017「うつむき姫に恋をした」
 吊り目がコンプレックスで前髪を伸ばしてしまい不気味に定評がある小松さんに、人気のある豪炎くんが大胆な告白。
 とっさにむりと叫んでしまったが、文化祭関係で縁ができてしまい…
 丁寧に心情を組み上げた最高傑作。

2018「家族のカタチ」
 ももちゃんの家は共働きで、父母が交互に帰ってくる。ただ、父母が目を見て話すことはなくなっている…
 ある夜、激しい口論を聞いてしまう。そして離婚…母親に引き取られるが、その母親も忙しい。
 思いが爆発したとき、父親が飛んできてくれた…
 とても多くの人が共感する思いを、真正面から描き切った最高傑作。

2018「フェチなあたしを許してください!」
 大好きな加藤生徒会長に会いたくて生徒会をしている皆本ちゃんは、実は先輩の脱いだ上着などを盗みかぎする悪癖がある。変態という自覚はあるが止められない。
 ついでにその会長も、部屋に飛びこんだら血のりをつけて座っていたりと結構お茶目。
 そしてもう二度とやらないと決意して、マスクとサングラスで清掃の仕事。そうしたら風邪だと思われてお姫様抱っこされて、つい直接…


今までの実績、現在の地位

 デビュー直後から本誌登場が多い。


個人的な感じ、思い出

意外性がありとても面白い作品。未熟さも目立つが切れは素晴らしい。

話作りの能力はすさまじく、この実力が最大限生かせればどれほどの傑作が生まれるかわからない。

最高傑作の連発、なぜ本誌連載にならないのかがわからない。