小坂理絵(こさか りえ)

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作風概説

 ギャグ、ホラー、スポーツ、正統派学園ラブコメなど手広くやれる。皮肉の食い込んで後をひく鋭さは無類で、ギャグの切れは「なかよし」でも最高。

 また気の弱い女子を描くのも得意で、長編のストーリーもしっかり構成できるし深い心理描写、キャラクターの成長も描ける。

 カラーページがとてもうまく、比較的単純で迫力のある構図でいつも驚かされるし、二色カラーでフルカラーより迫力のある表現をしたりもできる。
 絵そのものは安定した楷書体で不思議な迫力があり非常に美しい。特に人物のリアリティが高くて見やすいが、それが逆に不思議と笑える。似顔絵のような誇張もさりげなくうまい。


代表作

93〜98「セキホクジャーナル」るんるん連載、単行本全四巻。
 進学校関北高校新聞部の霊感少女、宮野柚枝ちゃんはいつも原稿が遅く、スキンヘッドで横暴な安原玄部長にどやされている。他にもやさしくて超絶美形の篠田毅太郎先輩、才女なのに可愛いところのある叶浅葱先輩、同学年には柚枝の相手役でカッコいいけど影が薄い佐久間藤吾、強烈にキツイ性格で毅太郎先輩命の上島実香留、後半に入学してくる後輩にはおぼっちゃまで実香留の追っかけ、甘ったれているけど一途な瓦崎直人、新聞記者志望で真面目な伊達二葉と個性豊かなメンバーが織り成す日常。
 抱腹絶倒ギャグ、にやっと笑えるえっちギャグ、心暖まる温もり、一生懸命な頑張り、上質のラブコメ等あらゆる要素を詰め込んだ傑作。

96〜97「とんでもナイト」単行本全三巻。
 天才ロボット工学者、ムサシは娘カンナを溺愛している。そのあげく娘に男が寄ってこないようボディーガードアンドロイド、小次郎(正式名称パパ守って@7号)を作ってしまった。でも彼に感情が芽生え、それが高ぶると首が取れる(一番アラレの件を突っ込みたいのは筆者)し、カンナの間に恋が芽生えてしまった。
 怒り心頭に発したムサシは解体しようとしたり感情を消去しようとしたり7号破壊ロボットを作ろうとしたりするが、全て無駄。でもロボットと人間、というコンプレックスは続く。どこにでもいるな、と確信できるムサシの生態が妙に笑える。

98〜99「ヒロインをめざせ!」単行本全二巻。
 A.D.20XXエイリアン襲来!時の首相は何より自分が生き残るため、ヒーロー、ヒロイン養成学校を作ってしまった。そこの第一期生の一人がアイドル養成学校と勘違いしたおだてに弱い新体操選手、みさお。曲者ぞろいの生徒、めちゃくちゃな学校で、地球を救うヒーローになるべく訓練に励む。
 もう、ある世代にとっての心の宝石箱を泥まみれにされ、投げ捨てられるようだが、それがたまらない快感になる。巨大ロボットに乗ってみたら、Gとシェイクでパニック、究極兵器のDボム、次元爆弾は敵近傍10000kmの空間を消去する!が、地球も危ないので何があっても使ってはいけない(ちなみに最終回に敵の手で改良された)等。

99「トップ オブ ザ ワールドな人たち」単行本全二巻。
 内気な礼弥ちゃんが入ろうとしたのは人と接触しないですむ華道部、でも入部届を出しに行く途中、鳥が。鳥?飛行機?いや、翼をつけた人!そして彼の仲間が来て、礼弥の親友二人共々、飛行妨害の責任上チャレンジ部に入部しろと。その部には入学式に諸君の夢などカスだ、世界一になれとかました生徒会長も。
 他にも曲者ぞろいのチャレンジ部はネッシー;宝塚歌劇団星組元トップスター日向薫の愛称でもネス湖のUMAでもなく、ギネスブックを版権上の問題から愛称で呼んでいる;に載る事を目的とした部。
 礼弥ちゃんと運動神経抜群の近原深雪、優等生の御子柴百合のなかよし三人組はそこに入部することになって、しかも礼弥ちゃんは男の子が苦手のはずが、入部の時になんか暗い剣崎先輩に一目ぼれ。特に断食の世界記録(18日間)に挑む中、一人が我慢できずに虫を食べるシーンには腹を抱えて十分ほど転げまわった。

2000〜2001「VAMP!」単行本全一巻。
 幼い頃両親を亡くし、修道院に送られた・・・かなりの問題児、森川りおがある日、ケーキを買いに無断外出して一人の少年を拾った。その夜、彼は突然ヴァンパイアと化す!その翌日、りおはその彼・・・「貧血療養に来た小暮徹」のお目付役として、共に生活することに。
 外面のいい彼をヴァンパイアと疑う彼女と、夢中になる志願生仲間、そして彼とケンカすると起きてしまう大トラブルで怒られる毎日・・・でもいつか、二人の心は通い合っていった。最終回の静かな情感がたまらない、深い愛で優しい笑いを起こす傑作!

2001〜2006「山田さん」
 長身でスタイルがよく気は優しいけれどものすごく怖い顔の山田さんが、人並みに恋をしようと奮闘する人情ギャグ。本当に少女マンガとは思えないほどすごい顔。本誌、増刊など準連載化。


今までの実績、現在の地位

「るんるん」と本誌で長年レギュラー。ギャグで圧倒的な人気を持つが、アニメ化などはないやや地味なポジションだったし最近本誌連載はない。

 他のジャンルでの実力もあり、スポーツものを連載したこともあるしホラーは相当怖かった。

 2006年冬、「山田さん」で待望の復活…だが、子育て中に増刊とはいえシリーズには無理があり、いろいろあって結果的には引退宣言。


個人的な感じ、思い出

 デビュー作などを見ると、今最も絵がきれいな作家の一人なのが信じられないほどで、成長に驚く。

「セキホクジャーナル」がとにかく好きだった。第一話の「ミステリージュース」が不思議とおかしくてたまらない。他にも断食中などいくつか思い出すだけで笑い転げるギャグがある。今でも「るんるん」廃刊の時に、「なかよし」に移植して続けて欲しかった、OVA化して欲しかったと思っている。

 それ以後の作品も楽しい。これからも多様な作品で活躍して欲しい。
 人気、実力、生態学的地位のどれからみてもまだまだ本誌で必要だと思うが…真正面からの正統派学園恋愛やホラーも見たい。

 復活はとにかく嬉しかった…だからこそ引退宣言は痛恨の極み。
 家族、子供最優先は当然だが、どうにかならなかったのかと叫びたい。