パターン分類9-16

今回脱字が一個所ありますが、わざとです。いつものミスとは違います。それがどこか判った方には素敵なプレゼントがありますのでお申し出ください。しかし、つくづく自分の文体を見直してみますと句読点が無くて文が長過ぎます。わかってんならなおせ、との突っ込みが聞こえてきますが、簡単なことではないです。

んちゃ、講義を始めます。出席カードを回してください。

今回でつきあっている状態については一応終わりで、倦怠期と結婚及び別離そして補足になりますが、禁止が強いときの対応の一つとして駆け落ちという要素があります。

もう一つついでに補足として、試すという行為について考えていきたいと思います。これについて系統的な取り扱いをしていませんでしたから。簡単に言いますと相手の気持ち、つまり恋愛感情(このつまりとかすなわちとかのあいまいな言葉、全部<=>;同値で表現できたら便利なのですが)が本当かどうかを確かめるために何らかの変化を引き起こし、相手の反応を探る行為です。結果としてはトラブルの解決と付随して恋愛感情の確認を期待しています。本質的に少なくとも何らかの嘘が混じり、発覚したときには重大なトラブルや罪悪感の元になります。

簡単に状況として、つきあっている状態とそうでない状態に分かれます。また誰が試すかですが、ヒロインがヒーローを、ヒーローがヒロインを、(三角関係)サブヒロインがヒーローを、サブヒロインがヒロインを、サブヒーローがヒーローを、サブヒーローがヒロインを(これらは実際には複雑な共犯関係)、その他家族等が二人をがあります。

つきあっている状態において試すのには偽装浮気、病気などの嘘、物に関するもの等があります。その動機としては基本的に嫉妬や不安です。嫉妬は必ずしも特定の同性にではなく、異性、つまりつきあっている相手の同性の友達や相手の趣味等に対しても向く場合があることに注意してください。これらは基本的につきあっていない状態での試す行為にも共通します。それが強く出るのはトラブルの最中であり、この試す行為は当然それを解決するつもりが更に深刻にします。そのことが解決の助けになることが多いのですが。

ヒロインがヒーローを試す行為ですが、相手の変心を疑った時には浮気を装うのが多いです。これは既述のようにその偽装の浮気から様々な厄介ごとがあります。何か嘘の呼び出しをし、わざと待ち合わせ地点に行かずに物陰から見張り、どれだけ待ってくれるかを見るなどもあります。これの変形として転校など別離の時わざと出発時間だけ相手に教えて(伝わる可能性を作って)来てくれるか、そして間に合うかどうかに運命を試す事もあります。わざと冷たくしたり(具体的にはデートをたびたびキャンセルしたりスキンシップを拒否したり)すねたりするのも広義の試す行為に加えていいでしょう。友人や趣味等に対する嫉妬の時には相手と嫉妬の対象にとって大切なとき(友人の場合大切な約束、趣味特に部活の場合には大会当日)に病気などにかこつけて相手を呼びだすことで妨害したりします。つきあっている状況上気軽に相手を呼び出すことができるのが強みです。これはヒーローからしますと試された怒りはありますが、やはり相手が大事と再確認できます。ヒロインも上手く確認できればいいのですが、逆に試したことを相手に言えず、後々罪悪感で苦しむこともあります。この場合にはそれについての(再)告白が話の基本になります。このように実際の話は様々な要素が絡み合ってできているため、非常に難しいです。

ヒーローがヒロインを試すのも大体同様ですが、偽装浮気の場合その相手に流されてという形をとることが多いです。または噂による疑惑がきっかけであることも多く、主体性が無い印象です。

サブメンバーが関わってくるのは最終的にトラブル解決のためのおせっかいです。サブヒロインがヒーローを試すのは状況としてはヒーローがトラブルで疲れ、自分の気持ちに自信がもてなくなったりヒロインのことを疑ったりしたときです。サブヒロインからしますとそれを見ると何のために譲ったのか判らなくなります。譲ったとき、せめて二人には幸せになって欲しいと言う祈りがあったものです。逆に二人がつきあい初めてからサブヒロインがヒーローに恋した場合、最終的にサブヒロインのほうとヒーローがくっついてしまうケースが多いので微妙ですが、少なくとも試す心情としては憧れの素敵な二人になかよしていて欲しい一心です。心理状況は他も基本的に同じことです。具体的にはヒロインの悪い噂を(善意の讒言もありましたね、訂正します)わざと吹き込んだり、浮気の誤解が始まりだった場合それを助長し、それに乗じてヒーローを強く誘惑したりします。またヒーローに偽装浮気を持ちかけることもあります。言うまでもなくヒーローとヒロインがくっつく以前にはサブヒロインはヒーローのことが好きで泣く泣く諦めた状態です。それゆえに誘惑や偽装浮気にもリアリティがあります。より強く試すのには崖から落ち、ヒロインとサブヒロインの二人ともヒーローにつかまっているのに似た状況をどちらを選ぶか見るためにわざと作るようなのがあります。

サブヒロインがヒロインを試すのは目の前でヒーローにべたべたし怒らせるなどの嫌がらせや相談されたときにわざと別れたほうがいいとか心にもないアドバイスをするとかがあります。暴走(偽装のはずが本気になる、噂が暴走して手がつけられなくなる等)したときには厄介です。(大抵くっついた後は仲良くなっている)友人と言う立場上例えば手紙や写真、プレゼントなど、記念になる品に触れることができ、それを隠したり捨てるふりをしたりして探させる事もできます。

サブヒーローがヒーローを試すのにはヒーローがヒロインを疑ったりした場合で、ヒーローの目の前でヒロインを強く誘ったりします。心理は男女逆と同じです。サブヒーローがヒロインを試すのもその男女逆と同様です。

秘密交際がばれた直後で、一方が名家の場合にその祖父母(の世代)が出て試すことがよくあります。またファンタジーでも一方の所属する氏の長老等が同様のことをします。大概彼らは過去に家を選んで恋愛を諦めたことがあり、その傷が関わっています。特にそれが強く出るのが旧家同士が対立している{ロミオとジュリエット}の形式です。このテストに合格したら認める、ということですがその内容には少年誌や半ばギャグマンガでは戦闘能力や根性を試す大げさな試練、普通の少女マンガでは身分をごまかして自分の孫の相手(当然相手の祖父母もしくは長老の顔など知らない)に接触、人格を様々な形で試し、秘密交際が発覚してピンチになったときに出てきて認める決定をすると言ったことがあります。始めは特に禁圧的に振る舞い、多額の金銭を提示して取り引きとして別れるよう持ちかけたり暴力的な強迫をしたり様々な事情を説明して情理に訴えたりすることで相手の気持ちが本物か試すということもあります。身分が高くて反対されているほうの当事者の親が出てくるケースもあり、この時にはそれが女子の場合は母親、男子の場合は父親が最終的に試した上で認める決定をすることが多いです(少年誌にむしろ多いパターンで、基本的なモチーフは一人暮らしの男子の家に女子が転がり込む〜邪魔がるがいつしか情が移る〜デートの最中に連れもどすボディーガードと対決しその過程で告白、母親が出てきて結婚を認め、そのまま同棲生活に入る)。

つきあっていない状態での試す行為は心理的な違いとして互いに気持ちが通じあっておらず、また時には恋愛感情が顕在化してもいない場合もあります。試す行為によって(試してしまったことに気付いて、または試されて始めて気持ちを自覚して)顕在化するケースも多く見られます。その点、むしろ恋愛感情の顕在化の所ででもやるテーマでした。

ヒロインがヒーローを試す場合には動機として相手の気持ちを探るため、相手の告白が本物だか確かめるため、相手の信念や意志を確かめるためなどがあります。相手の気持ちを探るのは相手は自分とサブヒロインのどちらが好きなのかを探るのが最も多いです。試すという意図が自覚されないこともあります。具体的な方法としては嫉妬を誘うのと無理を押しつけるのとが多く見られます。嫉妬を誘うのはわざと他の男子について気をもませるような発言、行動をとったり極端なのではわざと危険な状況を作って助けを期待するのもあります。告白の真偽を探るのには高慢なキャラクターの場合屈辱や肉体的な無理で証明するよう求めたりすることもあります。そしてからかうつもりだったのが相手の必死な姿を見ていつしか、ということもあります。わざと待惚けを食わせて本当に待っていてくれるか確かめる、何かを探させるなども。無理を押しつけるものは恋愛感情の有無のみならず、無理な約束をしてそれを守らせるような相手の人格に対するものもあります。

ヒーローがヒロインを試すのも同様です。

サブヒロインがヒーローを試すなど、三角関係下での試す行為は自信がある場合とない場合に分かれます。自分こそが想われていると自信があればそのことを確かめるためです。逆に自信がない、というより確信に近い形でライバルのほうに好きな人の想いが向いている、と解っている場合には主にヒーローとヒロインのトラブル解決のために試す行為をし、それで二人がくっつくのを確かめて気持ちに整理をつけるためです。つまり試すのはヒーローのヒロインに対する恋愛感情です。後者のほうが多いですね。これでよくあるのはヒーローにヒロインについて嘘の情報を吹き込み、飛んで行かせるパターンです。嘘は誇張が多く使われ、例えばちょっとした海外旅行を海外に永住すると言ったり風邪を死病だと言ったりちょっとした知り合いとの会食を見合いだと言ったりがあります。

サブヒロインがヒロインを試すのはヒロインの気持ちを確認し、ついでに(端から見て両片思いなんだから)くっつけてしまうためが基本です。上と同様に誇張された情報を吹き込み、反応を探ったり(ここでヒロインにとって夢と恋のどちらが大切かを選ばせることも)ヒロインにとって大切な、ヒーローとの関係に関わる思い出の品やヒーローの大切な品などをわざと隠して探させたりします。またそれが否定の言葉(恥ずかしくて、もしくは顕在化自体に抵抗があって)に対するいらだちからであることもよくあります。

サブヒーローがヒロインを試すのもその男女逆と同様ですが、例えば強引に迫って拒絶を確かめ、それによって(サブヒーローのことが好きと勘違いしている場合)顕在化させたりすることもあります。女子が男子にスキンシップを迫るのは幼年少女誌では今のところ無いようです。

サブヒーローがヒーローを試すのも心理的にはその男女逆と同様ですが、「もう彼女とキスしたんだ」とかのたちの悪い嘘が混じることもあります。

家族等によって試す行為はつきあっている場合と同様です。家族には両片思いとつきあっている関係の区別などありませんから。

つきあっていた状態において、その進行状況には既述のスキンシップが一方にあり、他方つきあいそのものが進んでいくにつれて様々なトラブルや倦怠期などの危機をはさんで最終的には(これは話の外)別れるか結婚するかに落ち着きます。あと一つ、やや特殊ですが日本独特の恋の完成として心中もありましたね。

今まで考えていなかったトラブルに倦怠期があります。ただ、これは幼年少女誌ではあまり見られません。なぜなら倦怠が出てくると言うのはマンガとしての話が退屈になるという意味ですからそれを避けるため、転校生などの新キャラクターや何らかの状況変化等の新展開にしてしまうからです。少なくとも倦怠期をじっくり描写した幼年少女誌は見たことが無いです。倦怠期とは本質的に相手に慣れてしまい、仲が安定してしまって刺激を感じられなくなることです。相手のことをどんどん知っていく、これもつきあうことの重要な意味です。故に知り尽くしてしまったときには興味が失せることに。特に幼なじみの場合相手のことをほぼ把握しているため、マンネリになり易いです。何らかのトラブルがあるとこうならず、危機感によってまとまっていられます。特にトラブルが禁止や妨害などの外的なものの場合ロミオとジュリエット効果によって倦怠期どころではないです。浮気や段階ギャップなどの内的なトラブルも刺激にはなります。そしてどんなに上手くいっていても幼年少女誌である以上性的段階に制約があり(有体に言うとセックスはできない)、その欲求不満と段階ギャップによるトラブルが刺激になり続けます。比較的安定している状態として男女とも無垢や男女ともに性について理解しており、キス止まりでお互い納得している状態等がありますが、これらの状態でも倦怠感は性的な欲求不満のせいと誤解され、段階ギャップになりますので深刻な意味での倦怠期にはなりません。結論として本来の意味での倦怠期は幼年少女誌ではありえないと言うことです。ごく軽い一時的なものはありますが、結局何らかのトラブルでそれどころではなくなります。

恋愛の結果ですが、少女マンガではしばしば長編のフィナーレを結婚式で締めくくります。本編の何年後かで、その間、特に結婚までの経緯については基本的に幼年少女誌では語られません。一応理想的な恋愛の成就としてでしょうね。昔話の典型的な結語{二人は末永く幸せに}(の一部、完全には「もし今も元気ならば今も元気でいるでしょう」等と続く)の変形といっても差し支えないでしょう。

別れについてですが、現実には中学生位でくっついたカップルがそのまま結婚まで添い遂げるというケースは珍しいでしょう。となりますとどこかで別れることになりますが、そこまでは幼年少女誌では描写されません。幼年少女誌の主人公は恋愛ものの場合大体小学校高学年から高校2年までです。そこでくっついた二人が終わるのはやはり卒業での自然消滅が大半だと思います。これの現実については男子高出身の上高校生以上向きの女性マンガには無知なため詳しく知りませんが。結婚からの離婚は両親が、はしばしばありますがこれは恋愛物でない話に回します。幼年少女誌で主人公が結婚していると言うのは特殊なパターンで、これについても別章後述とします。

現実はさておき、別れについて検討してみましょう。別れの理由は恋愛感情が無くなったからとそうではないけどに大別できます。また別れそのものにも決定的な絶交、友達に戻る、一時的に冷却期間を置く、秘密交際にして対外的に別れたと言う等があります。

恋愛感情が本当に無くなるケースは詳しくは浮気のところで既述の通りLoveそのものが移る真性のものとつきあっていたのがLikeでしかなくLoveのほうが顕在化してしまったのとがあります。

そうでない、恋愛感情があるのに別れるケースは基本的につきあい続けることがお互いに不利益にしかならないからです。相手を苦しめたくないから、と考えますが自分も苦しいものです。そして幼年少女誌では実際に別れることはむしろ少なく、結局はよりを戻して想いを確かめ合うことになるのが普通です。愛それは甘く、愛それは強く、愛それは尊く、愛それは気高く〜というわけで。具体的には遠距離になってしまって互いに縛ることになるから、決定的に相性が悪いから、禁止が強すぎるから、つきあっていることが他の誰かを苦しめるから、禁忌に触れているから、もう異性とつきあうこと自体できなくなったまたは自分に禁じたから等があります。

これらの要因によって双方が苦しみ、片方が相手のためにと別れ話を持ちかける場合、しばしば真性の浮気でもう愛情がない、と偽ることがあります。愛しているけどこのままでは苦しいだけだから、ときちんと言うのは少ないです。しかしそれが嘘であり、本当はまだ愛情があることが親友や元ライバル、様々なハプニング等で発覚し、気持ちを確かめ合う結果に終わることのほうがパターンとしては多いです。

心中は幼年少女誌ではほとんど扱われません。克服不可能な障害を抱えてしまい、それでも諦めることができず、多くは社会的にもその恋などが原因で破滅しており、追いつめられてこの世が駄目ならいっそあの世で結ばれようと。経済的その他による現実によくあるものは幼年少女誌とは関係ないです。他にも心中に近いものに後追い自殺があります。

克服不能な障害は決定的な禁忌、(現代においては先進国内で合法的には非常に難しいが)完全な支配、無理による破滅等です。

駆け落ちとは強い障害があり、交際の継続や結婚が不可能になった場合に社会的、世間的な立場を捨てて二人で転居、二人だけで新しい人生を始めようとすることです。社会的に自立できない(働けない)中学生以下には非現実的です。幼年少女誌では現実を考えずにただ旅に出るだけの事が多いです。短期間の家出に終わり、すぐに帰宅します。結果的には気持ちを確かめあうことになり、親が禁止している場合認めるきっかけになることもあります。

今回でつきあってる状態については終わりますが、まだ足りないことは多くあると思います。それは見つけ次第やっていきます。くれぐれも本講義を現実の参考にしないように。そのために不都合があっても僕は責任を負いかねます。

次回から恋愛もの以外のパターンについて考えていきます。お疲れさまでした。御静聴深謝。

もくじへ

もえるごみへ

ホームへ