パターン分類7-5

立ち読み可能なコミック文庫で「北斗の拳」や「CITY HUNTER」の名作を読み返してみて、最終回にスタッフロールがあったのです。驚いたことにジャンプの現在のレギュラーがぞろぞろ。なかよしもこんなふうだったらな、と強く思いました。マイナス面もありますが。

んちゃ、講義を始めます。出席カードを回してください。前回は講義が長引いた上に内容が実質的に無くてすみませんでした。余りにも漠然とし過ぎていますし、行動と感情に関する心理学は実質的に手付かずに近いですから。

今回は又続きで男女間の噂にまつわるトラブルについてです。噂は人間の最悪の習性の一つだと思います。少女マンガにおいては極めて重要ですがやはり後味の悪い因子ですね。からかい役によるちょっかいに似ていますがはるかに悪質です。前に申し上げました通り、日本には岡焼きと言う心理と言いますか習俗と言いますか、よく分からないですしある意味万国共通かも知れませんがあります。恋愛そのものに対する複雑な憎しみと言えばよいのでしょうか。カップルそのものを妬み、何とか上手くいかないようにしようとする傾向があります。醜いものですが。特に色気付いてくる小学校中学年ぐらいから少しでも男女が仲良くすると騒ぎ立てます。否定しても無駄です。否定するとするほど「照れてる」となるのですから。まあそういうこともありますが、本当に違う場合も含めて苦痛意外の何者でもありません。

先に悪質な噂とは違う少女マンガにおけるからかいについて復習しておきます。このからかいは恋愛感情の顕在化を誘発し、かつその存在を読者に示すことが主な役割です。恋愛感情が顕在化する以前、相手に対する感情には仲の良い友達としての+とむかつく天敵としての−の両方があります。いずれにせよここでは現在の関係に囚われ、新しい恋愛という関係になることをどこかで恐れています。だから「どき」とすることはあってもそれを恋愛という言葉と結びつけることを無意識のうちに避け、否定しています。ここでからかい役に「〜が好きなんでしょ」として指摘されると感情的に否定しますがその言葉自体は消せず、自覚につながっていくわけです。顕在化した後のからかいは素直でない態度を改めさせるためなど、忠告の一環としてとられます。基本的にこれは善意か考え無しにふとした指摘であり、易こそあれ害はありません。タイミングがずれたときや第三者(特に当の相手)に聞かれたときにトラブルの種になるぐらいです。また、特殊な例として親や兄弟によるからかいに近いおせっかいがあります。わざと気を利かせて二人きりにするなどですが、余計に意識させてしまって気まずくなることが大半です。

では改めて噂について検討してみましょう。

噂の原因は何でしょうか。第一にそれが友達同士の良い話題であることが挙げられます。その底には当事者達の恋愛に関する欲求不満があることが多いです。充実した恋愛をしている人が噂に与するかどうか考えてみてください。その欲求不満が度々言及している岡焼きといわれる嫉妬に転化し、攻撃的な噂を生み出しているわけです。又男子と女子の反目も重要な要因です。男子と女子の反目は思春期に入る直前から始まり、中1位までが表に出るピークです。沈静した形では高校まで続くこともあります。この状況下で男子と女子が仲良くしている(特に恋愛感情無しで)ことは一種の裏切りであり、許せないという感情を招きます。噂にもそれが反映され、当事者に対する人格攻撃にまで発展します。又性に関する好奇心も重要な要因でしょう。「どこまでいったの?」も多い台詞です。

その発端には色々とあります。汚染源が直観的に恋愛感情の芽を嗅ぎ付けて話題にする事が多いです(が、この直感は必ずしも当たっているとは限りません。)。その根拠としては(恋愛感情以前か隠してつきあっているかを問わず)男女の日常的な仲の良さ、幼なじみであるとか塾が一緒等の外的な近さ、偶然目撃された何らかの行為など(真相は全然違うことが多い)、本人の何でもない会話中の男子評等があります。またはっきりした根拠があると見なされるものに前述のように落としたラブレターや写真等を拾われた等や偶々蜘蛛に怯えて抱きついたのを目撃されたとかもあります。意図的な攻撃であることも多いです。

その引き起こす直接的な結果としては両方の強い否定があります。それ自体には噂を消す力はない上に、確実に双方の耳に入ります。となると両方が相手に嫌われたと思い込み、誤解の悪循環に入ることに。又噂に対する恐れが相手に近づくことを自制させる事も大きいです。噂に対する恐れは十台前半期においては信じられないほど大きい秘密警察のような物です。それが男子女子を問わず全員の行動を目に見えぬ形で拘束し、支配していることも事実です。その心理の根底には今も決して完全には消滅していない恋愛に対する罪悪視がある、と言わざるをえないでしょうね。そんな亡霊に支配されていることを認めるのは辛い限りですが。加えて後述しますがそれがあるため異性間での義侠心が却って災難を呼ぶことも指摘しておきます。小学校のときに女の子がいじめられていてもうかつに助けられなかったものです。これには恋愛感情に対する飢えよりもむしろ女子のこと(男子のこと)に構わないでくれ。という排除心理も働いているのではないでしょうか。

少し詳しく発達段階を踏まえて議論してみます。

恋愛感情が双方とも顕在化する前の時期で噂が発生するのには中の良さや悪さについてであることが多いです。かなり未熟な場合ですが、偶々町や出先などで会い、事実上はデートなのに両方何も思っていない等意味のないことを目撃され、誤解されること等もあります。また困った噂の連鎖ですが、なにか異性が(恋愛のときもそれ以外のときもあり)悪評を受けたとき、うかつにかばうとそのまま恋愛感情の噂に発展することになります。ここでの噂は当然双方強く否定し、相手を避けるようになります。又その否定の言葉に相手に対する攻撃的る暴言が混じったときには深刻な怒りが生まれることも唯副作用としていいからかいと同じくお互いに意識するきっかけになることもありますね。例えば何となく話が合う(これは出会いの重要なパターンの一つですが忘れていました。(+、+)と(N、N)の中間として付け加えておいてください。その後は仲の良い友達として推移します)等ぬるま湯状態が噂をきっかけに壊れることはよくあります。

互いに全く恋愛感情がなく、例えば別の人が好きなどその芽もない場合には悲劇です。場合によっては本命に対する恋愛感情を隠すために噂を肯定し、つきあってしまう(もしくはしまわざるをえない羽目に陥る)事もあります。この時に怖いのは本命の誤解です。ここで協力に回られると(例えば両片思いで相手としては涙をのんでだとしても)それは本命に望みが全く無いと少なくともとるのが自然ですし、多い誤解です。また本命にそのことで責められることもあり、まして本命と噂の相手が親友だったりしたら・・。

女の子のほうが顕在化している場合には男の子のほうの否定に傷つくことになります。本当に「ああ、好きだよ」(@「時を経ても変わらないもの」(c)1996、講談社、安藤なつみ)と言うわけがないですし言われたら困りますけど、「冗談じゃねーや誰があんな奴」と言われたらそりゃ傷つきます。そのまま売り言葉に買い言葉が起きるのも当然のことです。起きることはそのほかの場合でも大体同じです。噂の原因として失言や差し入れなどの目撃があることも。またばれている場合に周囲による意地悪として彼にわざと近づけ、その反応をはやし立てるような悪質なケースもあります。心理的には女の子としてはまだ誰にも、特に相手に走られたくない心理が強いです。未熟な場合には特に強い羞恥と一種の罪悪感があり、噂を打ち消そうとするのですが無駄と言うより逆効果になることが多いですね。この時に男の子のほうの心理を推測するのは作品中では難しいことが多いです。また、主人公の女の子とその本命以外の噂として相手に彼女がいる、という噂は信憑性がある時には特に誤解の元になります。又彼女と別れたとか危ない等との噂があると主人公はその都合のいい噂を確かめようとします。場合によってはチャンスとばかりに告白し、却って仲直りのきっかけを作ってしまうことも。他の男の子との噂も厄介です。本当に何でもないときには相談し、協力してもらって誤解を解くことができます。唯本当にその噂になった男が主人公を好きだったりすると大変なことに。中々本命が誰か言えずに誤解を深める結果になります。又恋愛ではないのですがこの状態での相手に対する悪い噂は噂を恐れてうかつにかばえないこともあり、深刻な誤解に発展します。

男の子のほうが顕在化しているときも大体事情は同じです。違いはそれに対する反発が暴力的に描かれることでしょう。心理としては古い態度かも知れませんが硬派ぶっての否定が見られますね。又鈍感であることが多く、あいてを傷つけたことにまで言われなきゃ考えが回らない事も。相手との関係以外の噂については例えば父親と食事にいったのを目撃した奴が尾鰭を付けて噂し、否定しながらも不安がって確認、誤解して・・と言うのがよく見られます。素直じゃないのに嫉妬深いのはお互い様ですね。

両片思い状態においては双方大体同じ心理です。

付き合い初めてから怖いのは付き合いを隠しているときに公開されることと浮気などの噂による誤解です。男女交際禁止などの逆境下ではデートを目撃されるなどの噂によって発覚する事が多いですね。また噂でしかない浮気や相手のことを好きな娘の話なども疑惑と不安の種になります。その子が可愛い娘だった特に。

噂を利用することほど有効かつ卑劣な行為はありません。上手くやれば核戦争だって起こせますよ。・・ネット上で「イスラエルが神殿を再建するらしい」と流せばアラブ諸国にとっては聖地エルサレムを好き勝手にされるのは絶対に許せないことですし、イスラエルにとっても民族の悲願ですからやらないとはいえません。互いにひっこみがつかなくなる恐れは十分あります。それほど危険なことです。悪意をもって噂を広める動機には嫉妬(恋愛と勉強等の両方があります)や悪感情(むかつくと言う言葉で表現されます。相手の人格そのものの存在が脅威になるケースが多く見られます)、人の苦痛を引き起こし、支配することそのものの快感等が何らかのチャンス(偶然種になるようなものを拾った)で表に出てしまったことが考えられます。具体的には偶然一緒にいた写真(現在は用意に合成できます)や拾ったラブレター等の公開、会話等で発生させます。この場合も本来は普通の噂と同じくどうしようもないことなのですが、それでは後味が悪いのに加えこの場合はっきりと敵役が存在する事を利用し、恋愛感情を認めて「何が悪いの」等と演説させ、カタルシスにもっていく手法がとられることが多く見られます。

以上、噂について概観してみました。何か質問は?御静聴感謝。

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