なかよし2022年12月号感想

とてもすっきりした表紙。ほとんど使われていない背景色が濃いのもさりげなくうまい。

この付録は魅力的ですね。こういう、小さいかわいいキャラのあるショートをもっと伸ばす力があれば。

ひとりじめしたい恋なんだ(夏園豪華)カードキャプターさくら(CLAMP)新婚だけど片想い(雪森さくら)香るわたしにキスをして。(壱コトコ)ぴちぴちぴっち(花森ぴんく)きらきら星と恋のバラード(うさぎ恵美)デリシャスパーティvプリキュア(上北ふたご)偽り姫の内緒ごと(桜倉メグ/雨川透子)約束のスノーフィルム(来海らん)ギフテッド(雨宮理真/天樹征丸)キミしか推せない(咲良香那)次号予告

ひとりじめしたい恋なんだ
父が借金を抱え、家族が変わってしまい、母の笑顔を取り戻すため頑張ってきたあゆみちゃん。
愛より金と悟り、高校で気持ちを切り替える、と陸上部に入ろうとしたら、着替え中の男子の部室…

充電期間にいい意味で絵が成長しています。強い生々しさがありつつ整っていますし、男子の筋肉が凄まじいまで。
無事に女子部員と合流できてよかった…
経験者の速さは別格…何もかもが違うんでしょうね。
回想がさりげなく重さあります。犬がすごくリアルなのがいい。
こんな言葉もらえたら…
靴ひも、相変わらずスキンシップが多い。それにしても陸上部って、靴だけでどれだけの周期でつぶすのか、経済負担が大きそう。
「同情するなら守ってあげて」も実に鋭い。
当たり前…その基準が無限にひどくなるのが家族というものの残忍なところ。
愛情が干からびていても求めてしまうのが子という生き物の無残さ…
「いつのまにかすべて失ったけど」がまた…
「つらいなら生んでくれたことだけに感謝すればいい」また鋭い言葉を。
非常に重い、想像以上の読者に共感されそう…ただ、ある程度よりきつい読者は「なかよし」を買う金も出せないでしょうけど。
ヤングケアラーや宗教二世など、犠牲となっている子供の問題も最近少しずつ出ています…ただし日本を支配しているのは、子供は好きなだけ犠牲にしていいという封建主義者たち…
それにしても夏園先生の成長は想像以上。三誌でも一人だけの、独自の世界を作り上げています。

カードキャプターさくら
影のヒロインである「鏡」…それがまさか…
ただどれだけ信用できるか、と思ってしまうのが悲しい。
別の記憶、名を刷り込まれていますが…名前、は魔術では常に重大なこと。
植物園もまたすごい世界で…
いくつもの記憶…
さて、外にはじき出された保護者側がどれだけの力を…

新婚だけど片想い
バイトでまた生活が変わりますね。大変だけど充実しているのは伝わります。
実家も関係している…
夢だと思って抱きつく、ここは笑うしかないです。
話がかみ合わなくて「イチャイチャしときます?」は苦笑しました。
電話がなかったら…
こちらも絶好調、何かを補給したから?
あまり相手にしてもらえなくて、…あんたがさんざんやってきたことなんですけど。
仕事にしっかり責任を取るかわり、夫の用事はすっぽかす…これはこれで厄介なジレンマです。
お姫様の登場、そして関心を持たれた瞬間にぱっと笑顔で…ここはお見事。完璧です。
さて、どう展開するか…楽しみな動きになってきました。

香るわたしにキスをして。
色々と大変な…科学にも似た地味さ、しかも感情や体調が影響するから…うまく伝えてきます。
いったい何を頼まれているのか。
その瞬間を映像にしたい、それほどだった…
ぱあああ、と膨らむ笑顔、これは恋人としても調香師としても応えねば…
忙しそう、悩んでるみたい、と思いやりも含まれているのが素敵。
メニューで隠してキス、これは強烈。
回想からもう天然で演技に入ってる、…立派にこの人たちに混じれる才能では?
いやこの変身描写は素晴らしい。
さらに放り込まれた彼に満面の笑顔で…これは胸が爆発しそう。
香水の素材って一つ一つがどんな金額か…うん、知らない方がいいでしょう。僕はエッセンシャルオイルの価格相場知ってますけど。今は円安と世界インフレでもっとえぐいことになってるんでしょうね…
「連れて帰っていい?」はそりゃそうなるな、と思うほどの魅力。
この振り向いたフードの二人も不穏な伏線…

ぴちぴちぴっち
どうせ全部ほしいんですから何が特別にほしいも何も。
プリンス、ということは婚約者でもある?
「掟を超えられるような」と、可能性は出しておく…
呼び声、そして記憶を引き出される、ここは実に丁寧に描いています。

きらきら星と恋のバラード
実にほんわかとした柔らかさ。
どうしても嫉妬があり、空気が悪くなってしまう、ここもうまく伝えてきます。そしてその嫉妬と恋愛スキャンダルが結びついたら、という恐ろしさ…
「一生けんめい大きな夢に」という言葉、すごく胸に伝わります。
そして本番、本当に大変ですが…
熱が出てしまい、彼はそちらを心配してしまう…すごく危ぶんでしまいます。
「その子のことが好きです」と素直に言ってしまうとは…素直すぎて怖いこいつ。
肩を抱いての写真、これまた爆弾を…
…手遅れでしたか。言い訳の余地はあるんですけど、疑われること自体が…

デリシャスパーティvプリキュア
米の食味が良すぎることがいろいろな悲劇に…ヒマラヤのほうでは、米は作れないけどトウモロコシは作れる地域の人が得られるカロリーが減ってでも米と交換する、とか聞いたことも…
そして糖尿という…
いろいろな形で表現を膨らませるのもいいですね。
いろいろなことがあって、どんどん成長していく…胸がいっぱいになるような。

偽り姫の内緒ごと
ええと一体何の作品でしょう…という扉。
ただひとりの妃って男子ができなきゃ国が危ない。
変装…命知らずというか。どれだけ完璧にしていても、連帯責任だとかランダムとか背番号下二けたとかで拷問されたら何の意味もないんですけど。
正しい舞、中国の古い史書や儒教の聖典でも、宮廷の音楽が変になればそれは亡国につながるとみんな思ってます。要するに魔術。
今度は前の主人に会う…
いやこんな大量の書物を集めるのはそれ自体危険視される行為では?
神話時代だったら紙とか、いや紙が発明される以前でしょう。
書いたのが自分だったって…さらに黒歴史の山…
あれを参考にするとは恐ろしい…
故郷は翡翠座…ということは全員五分刻み確定、と。
皇位簒奪…さて皇太后がどう動くか。

約束のスノーフィルム
ひよちゃんにカメラを向けているのは、もうすぐ卒業してしまう幼馴染のシンくん。
卒業式までに、雪が降ったら告白すると決意しているけど。
でも彼が、別の女の先輩を撮影しているのを見てしまって…

いやーこれほど、デビュー作らしい絵を見るのがどれだけ久々か。増刊さえあればと思えてなりません。
確かな実力…
カメラ、というのも、写真そのものはめちゃくちゃに増えていますがコダックが潰れたように…暗室での現像というのもいつまで持つ技術でしょうか。
雪が降ったら、男の側も思っているのが…これ、男サイドから読み返したくなります。
別の女、年齢も美貌も…心の動きが実に大きい。
会わないまま…ここで祖父が動いてくるとは。暖かく大きい言葉、これを入れるだけでも相当勇気がいる決断ですし、すごくいいシーン。実力の高さがわかります。
雪…
「特別になりたい」というシーンもとんでもなくうまい。
「これ以上好きになったら耐えられない」という言葉は衝撃的なまで…
なんというとてつもない実力。古い、と見せてしっかり独自の世界を築き上げている…
審査の時の衝撃が目に見えるようです。もっと上の賞でもよかったのに。
次回作、さらに連載…いや、今の「なかよし」で育つのが無理なら…とんでもない。

ギフテッド
「なんでしょう天草…刑事?」と振り向くのがうまい。弟分の友人、から警官と容疑者に関係性がぱっと変わってます。
連続殺人…日本のシリアルキラーはとても奇妙ですね。アメリカのように何百人も殺すケースは知られていない、でも別のやり方で何人も長期間…
異端児が組むのを、苦労より楽しむ…いい上司ですねえ。
恐ろしく精緻なセミと木の肌の描写。そこからの突然のイメージ…ホラーの定石。
いや尾行はしちゃだめでしょ…
そしてそれが現役警察官…さて、どの程度の戦闘力なのか…
現役警官が拳銃を発砲したらどんな理由があろうと言い訳がめちゃくちゃに大変なんですが。そしてこれを目撃されたら、また監視カメラ…
客観的に見れば、夕也くんは死ぬとしても、この警官が指名手配にされるのは確実でしょう。

キミしか推せない
知らないふりを謝る、ちゃんとわかってくれていた、これは神対応というものですね。
ふっとこちらが冷たくなる、これは不安になりそう。
さらに推しからのチケット…それで恋心に気づくのもじつにうまい。
普通に「関わりなくなってから好きって気づいた」と話せるのも素敵ですね。
おわびが隣のチケット、これはすごい。
追いかけるのも優しく見守ってる、いい人すぎますよねえ。
…そういう誤解でしたか。リアコ、面白い言葉ができたものです。
そしてカップルになっても推し活を続けている、いい関係がしっかりと…
もも、という人の人間的魅力がこの作品をすごく深めています。
素晴らしい作品でした。これからもすごく期待しています。

月から遠山先生復帰、「なかよし」らしくなったといえば。

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