なかよし2009年冬ラブリー感想

今回読みきりが結構多かったのは嬉しいです。

また新しいメンバーが多いのも新鮮で楽しいです。こうしてあらためて見るとすごく面白いメンバーがいるんですね。
これだけたくさんいいメンバーがいるんだ、そして今回出ていない人々も…そう思うとたまりません。
増刊が増えてもなかなか新人枠が増えないのはもどかしいですが、年三回しか増刊がなかった地獄の十年を思えば…

ジミコイ/わたしに××しなさい!番外編(遠山えま)1年5組いきものがかり(フクシマハルカ)おんたま♪(美麻りん)地獄少女R(永遠幸)星の-W-王子さま(花森ぴんく)にげない。(高上優里子)ふたごごっこ(伊藤みんご)妖界ナビ・ルナ特別編(菊田みちよ/池田美代子)オオカミ少年(水上航)スマイルアルバム(桜倉メグ)ナイトメアバスター(明日賀じゅん)空色シンドローム(渡辺留衣)名探偵夢水清志郎事件ノート(えぬえけい/はやみねさとる)偶像少年!(紺のんこ)若おかみは小学生!(おおうちえいこ/令丈ヒロ子)ゴースト・キッチン(瀬崎ちか)涙、少しだけ(本野ゆな)蜘蛛女(秋本葉子)

ジミコイ
いいですよねこういうスタンダードなのも。
ある意味遠山先生らしくもありますが。
地味系が大好物…まあ蓼食う虫もとか割れ鍋にとか…
ギャルという妙な生き物がすごく身近に、人間らしく描かれているのも嬉しいです。
なんで難解というと太宰になるんでしょう。この世で一番難しい本って何でしょうか…数学?現代哲学?神学?
地味な男子には地味な女子、だったらいいんですけどね。
同じがあるだけで幸せ、ってそれは乙女じゃないですか…
マフラーを間違えるというのもかなり…他の何より色香が強いです。マフラーはもろに匂いが染みつくし、どうしても鼻の近くで使うから匂いをかいでしまいます、そして匂いと性的な脳の動き・深い感情はあまりに近いです…
線香の匂い、というのも…「星雲だから」ってテンパってるのも見て楽しいです。
つい「好き」と言ってしまうのはびっくりしました。
かんがえさせてもらっても、という彼の反応にびっくりするのもかわいいです!
友達の反応がまたすごいです。
あわせて地味子、というのも楽しいですね。
読書に慣れていないなら児童向けの本から始めては?ルビがしっかり振られていますし、実は内容もすごくいいんですよ。児童向け本をなめちゃいけません。問題は他人に見られると恥ずかしいという一点だけです。
赤毛のアン…アーノなのもそれを考えてでしょうか?
文字を見ると一秒で寝る…となるとどうしようもないかも。
悩みを率直に話してくれるって結構心開いてますね。
あ、テレてる?顔に出てるよ、とまっすぐ表情を向け合うのもすごく素敵です。
逆にすぐに出てくるトラブルも、気持ちがとてもまっすぐで…地味がどうとか言うのも、要するに男の子が胸が大きいのが好き小さいのが好きみたいなもんですよ。
翌日の変身はびっくりしました。
マフラーを足に巻きつけて転ばせるのは…危ないですけどお見事…
頭を丸めると言うのはもう地味通り越してますよ。
「つりあうかわかんなかった」で一気に男側の心理も見えてくる…さすがです。しかも恋愛に関しては…うはは。
やっぱり地の実力はずば抜けてますよね。

わたしに××しなさい!番外編
お父様が厚かましというか正直すぎます…
この母親もなんかすごいです。
晶くんもそりゃぽーっとしちゃいますよね。
この盛りは「ちゃお」の某作品と競合できそうですね。

1年5組いきものがかり
むすばれる、という言葉だけできゃあきゃあしてしまう乙女心がうまく出てます。
指は洗わないと汚れているのでは?
両方にむすばれむすばれと迫られる…ちょっと大変ですね。
好きにさせたほうが、ってそれが簡単にできたら苦労はないんですが。
いきなり犬というのも大変ですね。読み返すと苦笑しますが。
「どっちがだいじなんだよ」で「犬」と即答するのは苦笑しました。
先生が犬だったというのは…頭抱えました。というかどれだけ見られたんでしょう…本当に風呂とか…
ぜんぶほしい、というのも過激ですねえ。
で、また別のモンスター…キスしたクラゲですか…横島並みに非人間に好かれますね…
なんというかいろいろ暴走して突っ走ってますが、逆にこれだけのベテランでありながらここまで飛びまくれるのがすごいですよ。

おんたま
やはりこの可愛らしさはたまりません!
そういう活動があるのはうらやましいです。
口の形でいろいろいじられて、とうとうキスを求める唇になってるのは爆笑しました。
クリスマスツリーのジンクスってそういうのみんな好きですね。
やる気を出したらこぶしを入れてしまったり、いろいろあるのは楽しいです。
先輩もここで、頑張りすぎを抑えればよかったのに…
本番前に妙な寝方をして、遅刻して…というか電話とかは?
「今のお前には」…確かに事実なんですが。とにかく現実を見ろ、とどうすれば彼女にわかってもらえるのか…
無理を承知で歌わせる先輩の決断も辛いですね。
先輩の中に溜まっている怒りの大きさには胸が痛くなります。
歌えなくなったところを皆でフォローするのは、そうなることが事前にわかっていて計画的に、でしょうね…
自分のためだからとか、でも努力したのは…それは本当だと思いますよ?だからみんなも助けてくれるんですよ。
「あせってオレみたいにのどつぶすようなことは」と、最初に言ってやれたら…彼がどれほど自分を責めていたか、見えないところですごく描かれてます。
手が触れ合って二人とも焦るところがかわいい!
増刊ではこういう正統派がやっていけるのが嬉しいです。

地獄少女R
…地獄少女が存在していなければ「普通の少女漫画」でしたよね。決裂したままかもしれませんし、また仲直りできたかもしれませんが。
同情するなら地獄に流すのをやめろとしか…
この話は「だから日本を銃社会にしないよう厳しく取り締まろう」ということなんでしょうか。なら納得できるんですが。アメリカで、このレベルの嫉妬から友達を射殺してしまう事件ってどれぐらい起きてるんでしょうねえ…

星の-W-王子さま
こういうベッタベタ好きですよ。
かわいいなと抱きしめたり、絶対これわかってやってますよね…ふふ。
「星くんならだれでもいーんだ」…
入浴シーンが珍しく大人しいですね。この増刊は規制がちょっと厳しいんでしょうか?
ナンパ男も何か落としたの、と親切を装えばまだチャンスはあったかも。
なめときゃなおる、でこういうことをするのも花森先生らしいというか…
デート自体はあっさり描かれすぎです。まあ先がわかっているからどうでもいいといえばどうでもいいですが。
「東のことが気になる?」と抱きしめるの、わかっててやってるというのが実に楽しい。
胸に飛び込むシーンはやはり素敵です。激しいキスも楽しめました。
もっと力が抜けているほうがいいですね。

にげない。
かなり冒険的な最終回ですね、最終回だからって恋愛方面での盛り上がりではなく、「リアルな問題」に徹するとは。恋愛での激しい盛り上がりは前回がすごかったからでしょうか。
上野谷くんって運動もすごいんですね。乙女になってしまっているのはかわいいです。
バスケ優勝高って山王…いや能代以外にないですよね、普通。気がついてみると今もそうなんでしょうか、個々何年もバスケには縁がなくて…
なんでもすぐ外部生徒差別になる、というのがどうしようもないです。
裏サイトのURLを伝えたのはほんのちょっとした悪意ですが…重いですね。
悪意に対する恐怖が、下着がじわりと濡れるように気持ち悪いです。
学校に行くのすら辛い…「どうしてこんな学校に入ったの」…どれほど多くの人が同じ言葉を口にしているでしょう。むしろ「どうして人間に生まれちゃったの」かもしれない…
上野谷くんの励ましの暖かさが、こんな形で暗転するなんて…
読み返して、「以下の書き込みを削除します」という言葉を冷静に見たら、管理人としてすべきことをしていただけとわかりますが…壊れかかっている感情で、冷静な判断ができないのも当然ですか…
「おまえらといっしょにすんなよ」という言葉の重さがまた痛いです。
上野谷くんが叩かれる立場になってしまう、というのもネットの炎上の恐ろしさですね。ありがたいことに僕はネットの中で、集団で叩かれた記憶はありません…荒らされたことはあるにしても単独犯ばかりでした。
奈子ちゃんの大声で上野谷くんが発奮するところはすごくカッコよかったです!
試合自体の組み立てももっと見たかったですけど。
サイトは…そういうことでしたか。人間性・ネットについての認識不足…ですけどね。
黒髪の子が謝ってくれたのが、描かれずに描かれているのがまた素敵でした。
最後に告白とかじゃなくて、すごく温かい思いだけに包まれるような感じ…
なんというか本当にすごい作品でした。単行本ももちろん楽しみですが、それ以上に何とか本誌に出られないものか…でも今の雰囲気の本誌じゃ…この温かさと深み、強い光のメッセージを本当に生かす場があって欲しい、もっと多くの人にこんな素晴らしい作家がいると知って欲しい!

ふたごごっこ
双子みたいに見えるいとこ同士でクラスメートの里奈ちゃんと優太くん。里奈ちゃんは本当は優太くんが好きなんだけど…
優太狙いと思われるユカ先輩が雄太を嫌うよう、ひょんなことから里奈ちゃんは優太くんに変装して嫌われるよう行動するけど、何もかもが裏目に出て…

男女でそっくり、双子じゃなくていとこ、絶妙な距離感です!
冒頭の印象もすごく強いです。二人とも男・女になりかけている、という感じがすごくして。
プロフィールがほぼいっしょ、というのはよほど家庭環境が近い、というかその親同士の関係がどうなんでしょう。まさか大家族で同居しているとか?
恋愛感情が出てくるまでちょっと長いのが、なんとなくのんびりした感じで楽しめます。
ユカ先輩の態度が見ていてなんだか楽しいです。
段ボール箱の持ち方は違いますよ。一方の手で体から遠い角のそばを持つと安定します。抱えるのは持ちやすいですが力尽きたら落とします。
カツラをかぶって入れ替われることに気づいてしまう、というのもうまい!
男の着替えがショックなのもある意味お約束…だからこそ楽しいです。
クッキーをはたき飛ばしてカッコいい、じゃどうしようもないですね。というかひどいことしてます。
何をやっても、というのが見ていて本当に楽しい!恋は盲目といいますが…
いきなりお菓子の雨、というのも嬉しいですね。
先輩のいきなりのキス…これはもう笑うほかありません。どうやって収拾するんだ、という気にもなりますが…
それでぶつかって入れ替わりに、ここからの収拾はお見事としか言いようがないです。
自分に告白、というネタも面白いですし。
総合的に「面白い」といえるのはすごく貴重だと思います。

妖界ナビ・ルナ
原作者書き下ろしというのがすごい。
なんというか…子供向けと、そして菊田先生の資質をよくわかってるな、としか言えません。
桃に「やきそば」というのもすごいシュールさです。そりゃ見なかったことにしたがりますよね。
鬼退治の動機が妙に貧乏臭いのが楽しいです。
犬がまた楽しいです。
このハーレムには笑うしかありません。
デフォルメのままのアクションシーンも楽しいです。
シリアスな感じなのに間抜けな決着も読んでいてかゆいですが楽しい。

オオカミ少年
目が覚めたら目の前に犬、というのはかわいいですね。
うちの犬も飼い始めた夜、小さいのがわざわざ階段を登って僕の寝室のドアの前にいたんですよ。かわいかった…入れてやればよかった…
それで人間に変わって、というのは違う方向の妄想になりそうです。あの子が人間化したらどんなにかわいい美少女だったでしょう…
いただきまーす、の色気はちょっと期待させますね。
いきなりとんできた別の山神さまに「なんだこの異世界」と思ってしまうのが面白い感性です。
ものすごくきりっとした美人ですが、読み返している今は…はは。
「応援してくれ」というのもずるい言葉ですよね。断れないし、うんといったらそれに縛られてしまう…
運動ジャージ姿の千風さんも凛々しい感じでいいです。
本当に好き…本当の恋愛感情に触れたことで、ひよりちゃんも本当の恋心にめざめていく…この組み立てはさすがです。
「千風さんをお嫁さんにするのがいいと思うよ」って、初読時はすごく切ない一言だったんですが…
もういいよ、と拒否される…この切なさもたまらないです。
余計なひねりのない純粋な正統派恋愛ものが見たいですね…
消えてください、とこう来ましたか…地獄少女に依頼されなくてよかったですね。
どんなにすきでも…きらいなんだろ…木に押しつける、攻撃的な行動も…すごくわかってしまいます。あまりにも気持ちが激しすぎてどうしていいかわからない、どうしようもない…
男と結婚…呆然としました。あまりにもすごい。
それで恋心を自覚してしまうというのもある意味間抜けです。
さて次には…冬真くんに告白されるのか、という予想が外れればいいんですけど。
一度水上先生には、何の余計な要素もない、完全に純粋な正統派恋愛を描いて欲しいです。ものすごい作品になるのは確実ですよ。

スマイルアルバム
 小学校の卒業アルバムに変な顔で移ってしまった紺野亜弥ちゃんは写真が大嫌い。蒼井くんがそんな彼女を撮りたいと迫ってくるけど…
 笑顔やフィルムカメラのすばらしさをまっすぐ語る彼がなんとなく気になるが、彼の転校を知って…

強く目を引く絵のパワーは期待以上に向上してます。
確かにすごい顔かも…僕の手元にはなぜか小学校の卒業アルバム&文集がないんですよ。多分小学校が違い中学校が同じ誰かが、好きな子の写真目当てにもっていったんだと思います。
この表情が何なのか、種が明かされたときの感動が大きいです。
写真嫌いの女の子、という設定は昔の名作を思い出させます。
友達にばらされて、その写真を見る優しい表情…これを笑ってると見るのってよほどの被害者意識ですよね。
カメラ自体は無事だったんでしょうか?
本物の笑顔が欲しいから、というのもいいですね。そのまっすぐな心がすごく丁寧に出ています。
デジカメじゃなくてフィルム…フィルムカメラは本質的に解像度が原子に近いスケールですから、デジカメでは追いつけない部分もあります。
絞りとか複雑な技巧があるのもまたいいですね。
母親の形見、という言葉もさりげなく、まるで液体の中を重いものがふっと沈むような感じがします。
それで蒼井くんの姿を目で追うようになるのがうますぎます。
悲しいとき笑ったりできない…素直なんですね。
笑顔は感染する、確かにそうですね。笑い話を集めた児童書の解説に、「火の玉はわらうか?」と、「進め一億火の玉だ」だった戦時中は笑いも抑圧されていた、という話があったことも思い出します。
笑っててほしい…なんて素敵な言葉でしょう。
あの卒業アルバム写真は変じゃなくて…自分でも気づかなかった思いを見てくれる人…
転校の知らせのショックも丁寧に表現されてます。
また無理に抑えた笑顔を作ろうとして…ここでは蒼井くんに行動して欲しかったですよ。
好き、という瞬間の笑顔のまぶしさは、僕の容量から完全にあふれました。すごい。
抱きしめるのもある意味当然ですよ。
なんというかものすごい作家です。デビューした時代を間違えたんじゃないかという不安感もありますが、僕はこういう作家にこそ、このまままっすぐ伸びて本誌連載をしてほしいです。祈るしかないですよ。

ナイトメアバスター
 授業中、恐ろしい何かの長い髪に首を巻かれる夢に目覚めた倉本怜夢(レム)ちゃん…そのときから、結構多くの人の頭に暗い影がさしているのが見えるように。
 しかもの特濃のやつが友達の慧ちゃんに!その夜から、彼女とともにおぞましい魔女に追われる夢を毎夜見るように…翌朝見た彼女の首には締める指のように闇がまとわり、その首にも深い傷が見える…
 突然その悪夢に見知らぬ人が出てきて、その魔女と戦い始める。翌朝、その戦士そっくりの男子生徒と出会い、「夢入り」をしていると知らされる…

冒頭の恐怖感は圧倒されますね。
首を絞められる恐怖も根源的ですし。
昼を食べ損ねたのは先生もでは?いや、先生は授業がない時間もありえますか。
というか給食ではないんですね。
頭の周りに黒いもや…というとそれは死期ですが、こんなにたくさんがもうすぐ死ぬって大変でしょう。
この夢はすごいとしかいい用がないです。
レムちゃんはちょっと現実感がないような感じをしているのがまた雰囲気出てます。
この魔女というか恐ろしいイメージ…M870ショットガンがあっても怖くてちびりそうです。
首が闇の手に絞められ、傷もあるのに自分以外見えていない…怖いですねこれは。
その夢に自分も出ていた、二人で夢を共有していた…
単純なホラーじゃなく悪夢退治になるのは嬉しかったです。
いきなり夢の中の人が出てきて、って…いや別にすごく遠くに住んでる人でもいいような気がしますけど。
夢そのものが別世界だとしたら…あれだけ妙なのが別世界だったら大変です。
夢が命に関わる、というのはまた強烈です。
意識を他人に向けなきゃ、って無理ですよ。まして友達なのに。
おびえながら手伝いに来ているのがカッコいいです。颯爽としているよりおびえながら行動しているほうが意志の力としては上ですよ、絶対。
落ちてくるのが家具だったりハンドバッグだったりするのが、読み返すといいヒントです。
なんなの、と問うことがキーだった…ただ戦うだけではどうしようもなかった…
だまっていい子にしてれば…「話さないことには気持ちは伝わらないよ」この言葉の重さは信じられないぐらいです。僕でさえ自分に言われたような、全部ぶっ壊されるような思いなんです…もっと幼い読者たちにとってはどれほどでしょう。
でもそれは、相手が…母親が「良心を持つ人間だったら」です。良心がない4%、または言葉や信仰に絶対的に囚われて、他人の言葉を一切聞けないタイプの人間だったら…話したら余計傷つくことになります。そのときには自分が引き受ける、と安全な場を確保しなければ怖くてできませんよ。
それも、自分で作り上げたゆがんだ気持ち、というのが恐ろしいですね。人間はひとりで思考をループさせることでどこまでひどいことをしてしまえるか…
解決じゃなく、あまりに恐ろしい夢魔の姿…
友達を守りたいから…でも、「深淵を覗く者は自分も深淵に覗かれている」夢魔に見られたというだけであまりに危険です。魔の世界では視線はナイフと同じ武器ですから。
どんな続編があるのか…特に男子の夢に入るときは危険ですね。
すごくいい新連載だと思います。これからが楽しみですよ。

空色シンドローム
成績も悪くドジで存在感がない長沢桃ちゃんがある日、万引きを捕まえたけどその万引き犯に逆に訴えられて帰って疑われてしまった不良っぽい空くんを助ける。
そのお礼として意外と優等生だった彼に勉強を教えてもらうけど、人にかまわれるのが怖い彼女には…
これまたものすごい力のある作品です。
最初に描かれる劣等感自体は軽い感じですけど、それが先になってどんどん重くなるのがすごい。
万引き犯がとっさに「やったのはこの人です」…これをやられたら怖いですね。
指紋を見れば確定しますが、そんなこと思いつく人は…外見で判断する、というかその「判断」は論理じゃなく、感情が判定しているからたちがわるいです。論理の「どちらがやったのかわからない」「指紋を取ればいい」を感情の「こいつに決まってる」は吹っ飛ばすものです。
どれほど感情のほうが論理より強いか、ほとんどの人は自覚もしていないのがより悲惨です。
ここで足を踏み出す勇気がどれだけ大きいか、でもそのあとおびえまくっている…「すっごい勇気だしてくれたんだな」という言葉となでてくれる手、これ嬉しいですよね。
ドキドキする間もなくテストを見られて…軽い感じでテンポよく読めます。
ヨル様って…韓流には詳しくないのでわかりませんがなんかここは苦笑します。
いきなり教室に押しかけられる、というのもびっくりしますね。
カーテンに隠れているというのがすごい。
前髪がジャマ、でもその理由を素直に言うだけでもかなり心を開いているのでは?
こわい、やさしくない…優しくして欲しいのでしょうか?
面倒でも全部書く、それが数学では一番大事なんでしょうね。飛ばさずに全部の部品をきっちりそろえて。
顔を上げてからまたプリントに取り組む、強さをちょっと出した表情がすごくいいです。
手にキスされて緊張が飛んで、テストには取り組めて…でも、いきなり激しい嫌がらせを受けて、ここの辛さは言葉が出ないです。
恐怖というのがどれほど激しい感情だか、空くんにはわかるのでしょうか。
空くんの突き放し方はあまりに冷たいですよ…
「おまえ自身を」というメッセージの強さ、あまりに熱い氷の刃…これには圧倒されます。
プリントに書かれた彼のメッセージ…
最後の髪型で伝えたメッセージと「勉強以外もおしえちゃおかな」という言葉も大胆でかわいいです。
かわいい絵と軽い雰囲気、なのにメッセージの重さと深さは並大抵じゃない、ものすごい作家になってきました。
是非今年は本誌進出して欲しいです。

名探偵夢水清志郎事件ノート
ハワイ編の解決は次に回して今回は大江戸編の続きですか…ひっぱってくれます。
ハワイ島…ハワイの歴史の数々の悲劇がしっかり下敷きになっている、上質の歴史ものでもあるのが素晴らしい。
いきなり犬神家ですか。
穴だらけというのは特に大規模牧畜には嫌われる要素ですね。
買った土地がこれ…これも日系移民の歴史にはたびたびある悲劇です。肥沃な土地はもう欧米人が買い占めていて、後発の日系人が手に入れられるのは不毛の地だけ…
そしてその不毛の地さえも、欧米人から金で買った取引は先住民を無視している…加害者でもある、と。
土地を肥沃にさせるのは不可能じゃないです、最初は狭い領域で肥沃な土を買って高く売れるものを作って生活を支え、同時に海から海藻を運び、荒地でも育つマメ科植物でヤギなど粗放牧畜をしながら長い時間をかけて土地を改良する…理論的には可能です。
でもそれが理論どおりに成功するのは、それこそ百人に一人でしょうね。悪い業者・悪天候・病気…些細な悪い要素でも返せない借金になり、破滅します。
家を建て、必死で生きようとする…そのすばらしさが、逆に先住民や先住生物から見れば侵略であり、欧米人から見れば搾取の対象でしかない…その残酷さを直視するのは実に辛いです。
出て行け…そして出て行ってどこでどう暮らせと?
呪い、差別…それに対する夢水の分析も見事です。人間は本質的に魔術的に、感情の部分で心が動く…理性はそれを追認するだけであることがほとんどです。
亜和ちゃんが泣いた…それだけで動く理由には十分、ですか。
お互いに言葉が通じない、でも会おうとはしてみる…
人間を斬る目…やはり刀しか物は言わないのか、そう思うとため息しか出ません。
元は武士だった…
柄を切り落とし、そして殴り飛ばすここのカッコよさは凄まじいまでです。
夢水の行動はなんというか…「どう舟を手に入れたかきかないでおこう」が爆笑。
カイでクジラを…ちょっとまてええええ、と叫びたくなりました。
人食いクジラって…どう見てもこれはヒゲクジラなんですが。
日本以外の国では…ハワイ先住民に習慣があったかどうかは知りません。というかこのシーンに目くじら立てないように>保護団体
三日もしたらもう腐り始めているのでは?大量の塩が必要ですね。あ、干したんですか。
食事で呪いを解く、というのもわかってますよね…みんなで食べることが魔術的にどれほど大きな意味を持っているか。
神と話す…「ほっかいどーはでっかいどー」は爆笑しました。というかこの時代まだ北海道は…もうありましたっけ。
浜に文様ができる、これはものすごい説得力ですねそりゃ。
そして異様な匂いって…
海水を詰めたクジラの腸…考えたなとしか言いようがないです。
今度はフランスへ…いいですねこの美しい三本マストシップ儀装。
言葉がわからなくても通じ合っているのがまた面白いです。
結局別の土地を買う、そして今の土地は…国立公園制度が早くあればいいんですけど。
次からまた現代ハワイ編に戻るんでしょうか。いいところでひっぱってくれます。

偶像少年!
 美少女戦士アイドル、姫島ひなこちゃんは今日も大活躍。でもその「正体」はなんと男の子、霧島ひなた…事務所社長である兄がサギられて借金を背負ってしまったためである。
 ある日公園のトイレに急いだら、カツラが落ちているところを同じ学校の牧野さんに見られた。彼女はどうしようもない美少女好きの変態で…その大胆さときたら、口紅つけっぱなしなのを男子に見られたとき「さっきキスしたときについたのね」と言ってくれるほど。
 で、恐ろしいことに自分の学校の文化祭でライブをやるはめに…

すごい明るさです!デビュー作のパワーがそのまま明るくなったようで読んでいてすごく気持ちいいです。
なにこのクソ恥ずかしい口上。すばらしい!
いやもううらやましくなりますね、「おしおきライブのお時間」で盛り上がれるおにーさんたちが。
なんというか悲惨な境遇で…一千万という額がなんだか現実的でいいです。
いきなりこの姿でトイレというのもリスク大きいですね。
「どばっと出してサクッともどって」というさりげない言葉がすごい。下品で露骨で大笑いです。
確かにこれを見られたら…しかもクラスメート…詳しすぎて段階を追ってばれる、ここが妙に楽しいです。
制服で女装というのもなんかすごい変態。
発熱って興奮しすぎです。
口紅がついたまま、というのはびっくりしますよねえ。
「あたしの口紅だわ」…そりゃまあショックでそれ以上の詮索は無理です。なんというかあまりに強烈過ぎて男子なんて脳がオーバークロックです。
誤解されても全然かまわない…なんてきっぱりした変態。
「スゲーいいと思う!!」「ありがとう」と心が通じ合うシーンもしっとりしていて素敵です。
矢でも鉄砲でも…鉄砲以上でしたねこれは。ひどい兄…もっと儲かる道ならいくらでもあるでしょうに。
確かにこれはこの世の終わりですね。
彼女の前ではあれを見られたくない、だからいつもの仕事も卑しめてしまう…その気持ちがすごくわかってしまいますね。
思い切りかんだり失敗して、知り合いだらけなので動けなくなる…ここの恐怖感は強烈でした。
ここでの牧野さんの行動もなんだかカッコいい!なんというか力づくで感動させてくれるというか、心臓直接マッサージ食らったような…げふっだけど気持ちいい、そんな感じです。
キスして「ホレた」の一言もすごい。
というか考えてみるとこの話、徹頭徹尾男主人公だったのにそれに違和感がないというのもまたすごい…
いや…本当にものすごい話でしたこれ。めちゃくちゃ面白い。
このなんともいえないパワーと面白さと明るさがどんな方向に成長してくれるか、すごく楽しみです。
次回作が楽しみでなりません。

若おかみは小学生!
いきなりパニック!彼のほうには幽霊が見えていないんですし。
いきなり女の子に手を握られたりしたら男の子はびっくりしますよ。
神社の噂の子、とすぐそうして情報が回ってしまうのが怖いですね。
僕だったら森の奥で過ごせるので人に気づかれはしないと思いますが。
たいへんじゃん、とすぐ親身になれるのも彼女の強さですね。伝統的な世界の人情はわかっていながら、逆にそっちの成員外に対する本質的な冷たさはまだ学んでいない、と。
まさか恋?というので女の子は盛り上がりそうですが、美陽ちゃんしか女の子がいないと盛り上がり仲間がいなくて寂しいですね。
同じクラスの鳥居くん…彼もこれから話に出てくるでしょうか?楽しみです(僕は原作は読んでいません)。
木のうろというのは確かに便利な居場所です。オークの古い巨木などでは、それこそロビン・フッド伝説のように何人も樹上で暮らせるとか。
でもこの、雨が降ったらたちまち滑り落ちるというのが、人間が樹上生活種じゃない証拠かも。
一回くらいなら落ちても…その一回で死んだ、ってしゃれにならないです。逆にベテランだからこそ落ちることがわかるというのも面白いです。
落ちるのをとっさに乗り移って、すごい。
弟の孫、そういうことですか。
おじいちゃんが亡くなったから替わりに会いに来た…それにしてもすごい行動力です。
金を持ってないから食べられない、というけじめの真面目さもすごい。
ここで働いてみる、というのもかなり無茶な話ですが…逆に親戚みたいなものだからこそ受け入れやすいのかも。
なんと言うか同居ものとしては複雑ですけどね。

ゴースト・キッチン
 食べることが大好きな愛ちゃんがある日、家庭科室の噂の幽霊を友達に誘われて見に行き、一人だけ空腹で倒れてしまった。
 気がついたら素晴らしい料理が並んでいて、食べたらおいしい。そこにいたのは雑誌で見たことがある三ツ星最年少獲得有力候補の天才少年シェフ、生瀬久留米くん…の幽霊だった。
 彼に取りつかれた愛ちゃんが帰ると、そこには冷たい感じの小さい女の子がいる。愛ちゃんの姪の由真ちゃんで、その両親が忙しいので預かっている…そしてお菓子しか食べない彼女を心配するけど、由真ちゃんの母親は手作りの料理に込められる愛情を骨の髄までわかってない…
 それでクリスマス、前もそうだったけど久留米くんが愛ちゃんの体にのりうつって料理を作ることに。

ものすごい可愛らしさと、なんというかほわほわにみっしり柔らかい綿が詰まったぬいぐるみ抱いてるような、すごくふんわりしてそれでいて量感もあるお菓子にかぶりついているような、粉を入れすぎた特濃ココアをすすっているような贅沢な幸福感がします。
結構登場するしそのたびにどんどん違う面を見せてくれますね。
冒頭からまたものすごい表情で…食べるのが大好き、というのはなんだかうらやましいです。
かなり手の込んだのを作ってくれてますね。親も大変です。
幽霊であっさり主人公を見捨てて逃げる友達…これでてっきりひどい話系のホラーかと思いましたよ。
倒れたのはおなかがすいてだった、というのが苦笑します。
いいにおいで目が覚めて何の疑問もなく食べる、ってもしここが冥府だったら…異界のものを食べたら現世に戻れないというのがお約束ですよ?
天才少年シェフが幽霊、というのも面白い設定でした。
料理を食べたからついてきてください、というのも変な話ですが、食事って無条件に深い恩になりますよね。
夕食でこの豪華メニューというのも親のスキルが相当高いですね。冷凍食品とかでそれを嫌っているというのならわかりますが…
お菓子でカロリーを補給し、サプリメントでビタミンとミネラルを補っているようなむちゃくちゃな食生活をしている人も今は多いそうですね。
このクリスマスツリーセットも贅沢で…かなりこの家総合的に生活水準高いですよ。
ごはんが人生の100%…幸せですね。でもまあ、85%ぐらいはごはんでしょう。
最高級の食材で、という言葉に「高級な食材ばっか使って」…これは料理人には禁句かも。結構きついですね。
何が出るかわからないから面白い、…ギャンブルにはまりませんように。ギャンブルはその回(試行)は何が出るかわかりませんが、統計的には来年の土地代借金の返済計画が立てられるほどはっきりしていますので。
家族と一緒にクリスマス…ですぐ行動する優しさにはすごく好感が持てます。
この義姉、若すぎるというか女の子っぽさがすごく強いです。現役の女が100%で、母親の部分がほとんどないんでしょうね…
家族でご飯を食べる喜びがあると思ったこともない…ですか。
料理人をバカにしたな、って結構いろいろ恨んでるんですね。
学校では実は愛ちゃんの体を借りていた…ここは笑うしかありません。ひどい。
「かわいそうな体型にキョーミはない」も爆笑です。
女の体で制御できると言うのは…女の体には生理関係の周期があり、時期によって情緒や感覚が全然違うとも聞きますが…
そば粉のガレットは確かに菓子と食事のいい中間ですね。ブルゴーニュでは食事でもありますし。というか菓子と食事ってそんなに区別できるものじゃないです。
料理シーンの簡潔な美しさも抜群です!
子供に対抗心を起こさせて食べさせるのもうまい。
そしてこの笑顔…親にとっては一番嬉しいでしょうね。
このコンビ、これからシリーズ化するのでしょうか?それも楽しそうです。
それにこんなに実力あるんですから、他の次回作もすごく楽しみです。もうたまりませんよこれは…

涙、少しだけ
 川島優ちゃんと川島陽介くん、血縁ではなく同姓の他人、ついたあだなは川島夫婦で委員長も一緒にやらされる。
 二人で掃除のあと、陽介くんが何か食べたいと言い出したので、優ちゃんは干し梅を渡した。彼は笑うけど食べた。みんなにはからかわれるし、下の名前で呼び合おうとして固まるし…

 ある日陽介くんがかわいい子に告白されているよう、そして優ちゃんに「ごめんな」の一言…
……どこまで僕好みなんだか……黒パンやウェルダンの赤味肉が口の中に広がるような重く力強い満足感。すごく豊かな表情とたくさんの感情。
冒頭の絵からもうたまらないものがあります。服と体の質感がすごく高くて。
男の子のいたずらっぽい表情もすごく性格伝えてきますし、次のチビキャラもすごくかわいい。
どうしても夫婦、というのも実に楽しいです!
ちょっとダルデレな感じの不思議な色気がちょこちょこ伝わってきてまたすごく魅力的です。「こんなヤツといっしょにされてて〜」と言っているシーンなんかはっとするほどきれいで生き生きとしています。
干し梅…確かにおばあちゃんくさいですが疲れたときには最高ですね。
いつもは女の子扱いしないのに…中学校の頃の自分は女の子扱いするということがどんなことなのかも何も知りませんでしたっけ。
先生の「愛の力で」も苦笑します。
下の名前だと照れちゃうのもかわいいです。
告白されてるのをのぞくというのも楽しいですね。
いきなりの「ごめんな」もびっくりしました。日直のことでしたか…
なんて答えたんでしょうね、実際には。
そっか、とほっとする表情もやたらかわいいんですが。
とりあえずお友だち、というのも具体的にはホントどうするんでしょうね。
「かわいいこと思うわけないよな」と、そんな小さなことが話の中心というのがまた感性豊かで…すごく過敏な女の子の気持ちがすごくよく出てます。
チョコレートをもらって、それに苦笑して…干し梅とチョコ、と食べ物を通じて女の子を対比させているのも、それぞれの正確とかすごく伝わってきます。味から先に、心のすごく深い部分が動くようです。
そこから教室に飛び込んできて、「なんかちがうな」という言葉だけ…どういう告白なんでしょう。
お互いに好きとは一言も言わない、あくまで夫婦漫才…ずーっと、という言葉の繰り返しなのもたまらなくいとおしさが伝わってきて…
なんて二人でしょう。
はっきりとした告白やキスシーンのない、静かな二人の心の動きと、ありきたりな形・名前に当てはまらない思いと関係がまたすごく好きです。
陽介くんの立場で読み返すと、彼が優ちゃんに感じている形にならない想いがすごく伝わってきます。その変化と、告白してきた子への誠意も。描かれていない部分でどうしていたか見たいところも、作業の箱を持っていく優ちゃんを見送った後の彼とかいっぱいあります。「お友だちだからってなにするの?」と聞かれてびっくりしてついからかってしまい、否定されて少しほっとして複雑な思いなのも自然にわかります。と言っても僕に、ここまで自分の感情だけに素直になれるかというと…
そう思うと「描かずに描かれて」いるシーンがすごく多いんですよ。送ってもらっての帰り道も具体的に描かれていないからこそどんな会話が会ったか気になりますし。
名前も出てない「告白してきた子」がまた控えめで優しくて、すごく魅力的です。
ちょっと正直に言えば、女子とこんなに仲良く会話できるのもうらやましいです。本来の読者も、男子とうまく離せなくて優ちゃんがうらやましい、という子も多いのでは?
二人のこれから、本格的につきあうのは、ファーストデートは、下の名前で呼ぶのは、そして…それもどんな風か見てみたくなります。
というかなんて作家がデビューしたんでしょう…どんな方向に成長してくれるんでしょうか。
胸が熱いというか悲しくさえなるぐらいです。あまりに期待が強すぎて、あまりに満足感が強くて、あまりに素敵で。
次回作が怖いぐらい楽しみです。

蜘蛛女
さてどっちの方向に行くやら。
小さい虫の身を守る方法は、まず子供をたくさん産むことです。何千何万産んで、二匹生き残ってその二匹が子供を産めば、それで遺伝子は絶えません。残りは全て食べられるのを前提にしている、それがほとんどの生物では当然ですよ。人間が極端な少産少死なだけです。
そして体内に毒をもつこと。小さい虫や動けない植物は、体内に実に多様な毒を作り、それで自分を食べる大きい動物や、体内から食い荒らす微生物を殺します。微生物さえ多様な毒を造りますし、人間だって体内で毒を作って多くの微生物や寄生虫を殺して生き延びているんですよ。
そしてより高度なのは擬態、そして夜は葉の下で休むとか細かな動きにもたくさんの、進化によって創られた身を守るための工夫があります。
こんなところを見られたのがこんな美少女だったら、そりゃショックですよね。
その美少女がいじめのターゲットになるって…泣くふりをしながらその下での表情がまたすごい。
この無数の蜘蛛に腕を這い回られたら、僕だったら発狂するか恐怖のあまりガソリンぶっかけて焼き殺そうとします。
「クモだっていっしょうけんめい生きてる」…だから僕は、クモの巣にかかっている蝶は助けないことを覚えました。クモにとっては大事な食事、自然のルールの中なんですから…ただし建物に閉じ込められてガラスにぶつかっている虫は、人間がルール違反を犯しているんですからできるだけ助けますけど。
影が食いついているのもすごい眺めです。
いきなり夜抱きつかれて、キスしながら翌朝…これってかなりものすごい事件なんですが。
麻痺毒系のクモっていましたっけ。逆にある種のハチがクモを麻痺させて子供の餌にすることは知られていますが。
糸に吊るされ中身を吸われている…ものすごい事件ですよね、実際にあったら。
蜘蛛の食事について書かれている教科書って親切ですね。というかこの作品の最初から僕がツッコんできたこと、当然先刻承知でしたよね。なんか頭の後ろをこすりつつ苦笑して片手拝みしたい気分です。
「マヌケって…だれのことかな…」という会話がまたスリルあります。
というか相手が怪物かもしれないと思うなら無防備に誘って責めるな、とも思いますが、こういう魔術的な面だけが肥大化した人間は自分の群れは無敵だという幻想に取りつかれるものです。
死んでたら閉じ込めるんじゃなくてもっと隠蔽工作しないと。
必死でしがみつく芳野くんのカッコよさは素晴らしいものがあります。
さっき倒れたときと体勢が違う…ここからの恐怖はさすがです。
あ、もちろんわかっててだと思いますが蜘蛛は昆虫じゃないですよ。
「こいつらは食っていいから」…蜘蛛よりよっぽどたち悪いです。
ここまで巨大な怪物だと、それこそ12ゲージフルオートショットガン+338.ラプアマグナムの超高速三点バーストぐらいは欲しくなります。
現存する銃ならS&W-M500六発、12ゲージショットガン七発、7.62mm×39AK弾30発、7.62mm×51NATO弾20発ぶち込めば…いや50.BMGの一発勝負で止められるでしょうか?
できればM134ミニガン(7.62mm×51NATO)とM2HMG(50.BMG)とXM307グレネードマシンガンを並べて…ってティラノサウルスでも瞬時に挽肉塊になりますね。
いろいろな架空銃器の画像と設定があるサイトで言えばM212ダストトレイル(9mm×19ガトリング)・M186メテオ(5.56mmガトリング)・ハンバーガースミス(7.62mm×51NATO+50.BMG単発)あたりがよさそうです。
食わない、だから助かったわけじゃなく…でることも死ぬこともかなわない、って残虐さは蜘蛛以上ですね。
助けてたんですね、芳野くんは…今まで一度も見せることがなかった彼女の優しさにびっくりしています。
「見ただろ?蜘蛛(かいぶつ)だよ」という言葉もびっくりしますが…ポケットのハンカチに戸惑う彼の姿も印象に残りますね。
今までひたすら食欲のままに全て食べていた彼女が、初めて人間みたいな行動をとった…それはこの作品をどんな方向に向けるでしょうか?それが大人への一歩…繁殖を求め始めているのでしょうか。でも人間は繁殖相手になりうるのでしょうか?同じ蜘蛛の男を求めるのでしょうか。
ハッピーエンドかアンハッピーエンドかギリギリまでわからない、最後の最後にどんなどんでん返しがくるかわからないスリルがこれから楽しめることは嬉しいのですが。

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