なかよし2009年春ラブリー感想

何より夢水講談社漫画賞受賞おめでとうございます!
増刊作品が受賞するというのもなんとも皮肉です。

今回は本誌連載番外編が少なかったのでバラエティ豊かな作家陣を楽しめました。
男中心の表紙にはさすがに驚きました。

シリーズがまた増え、また多くの読みきりが連載前提に感じられました。
ラブリーはこれから多くのシリーズを持ち、それを単行本にすることもする、「るんるん」同様に姉妹誌と考えればいいのでしょうか。
そう思えば、「これほど実力があるのに、まだ本誌連載にならない」と多くの作家について思っていることは間違っているのかもしれません。本誌連載と増刊連載に優劣がない、対等な雑誌での連載と考えてしまえば、増刊連載も一つの山の頂点…単行本も一応出ますし、講談社漫画賞を受賞することもありますし…もしラブリーのシリーズからそのままアニメ化される作品があれば、それこそ対等だと宣言してよさそうですが。
それほど「なかよし」本誌との編集方針が離れてしまい、また本誌はレギュラーが固まりすぎて新人を入れる余地がない…僕から見ていい状態ではありませんが、新人のほとんどに描く機会がろくになく、まず単行本化されなかったランド年三回時代よりはまだましでしょうか。
また今の「なかよし」本誌の編集方針は僕は嫌いなので、それと違う編集方針の姉妹誌があると考えたらそれは嬉しいことです。

15(瀬田ハルヒ)セレブな奴隷(青月まどか)2〜3秒にかける少女(明日賀じゅん)にげない。(高上優里子)名探偵夢水清志郎事件ノート(えぬえけい/はやみねさとる)魔術師にくちづけを(あおいみつ)hana(茂呂おりえ)メガネ王子(水上航)むりやり探偵部!(佐藤みなみ)執事のススメ(栗沢じゅん)若おかみは小学生!(おおうちえいこ/令丈ヒロ子)おんたま♪(美麻りん)てのり@あいつ.jp(菊井風見子)恋する落書き(みつき成流)ラブレター(ハタノヒヨコ)蜘蛛女(秋本葉子)姫系ライオン(渡辺留衣)こいゆい(大塚さとみ)

15〜恋するフェルナンド〜
これは熱い、というか暑いでもありますが。
ふられて四年も追い続けるというのもいい根性ですね。
普通ならそんな関係維持できませんが。
「やさしさがない」というのも苦笑させます。
恋愛妄想…恐ろしい言葉です。というかはしか以上、青少年の九割はこの病気に感染するのでは?
悪魔になってやる、という言葉と…普段の彼のイメージのせいか、ここまでかっこいい話になるとは思いませんでした。
泣いている乙姫ちゃんを見つけたときの表現はかなり強いです。ここから強引に連れまわして…というか小川たちがいるんですが…
うばうなら、と…ここでキスしていたら奪えていたでしょうか?
バラでひっぱたくシーンはすごかったです。なんかしびれましたよ。
「わかっているならなぜ泣かせる」という直截な言葉も。
優河の素直な言葉も、しっかり受け止めたなと嬉しいです。
氷見ちゃんのキスにはびっくりしました。なんか不器用な感じで楽しいです。
まあとにかく、バラで叩くシーンがすごすぎました。

セレブな奴隷
扉の華ちゃんの胸がすごく柔らかそうですねぇ。
料理は下手なんですか…セレブ時代習わなかったのでしょうか?
このメイドさんの大人しい感じもすごく好感を与えてくれます。
いきなり「お嫁さんになってくれないかな」は吹きますよね。
というかモデルでも雇ったほうがいいのでは?
脇から「ぷっ」で、挑発されて引き受けるのも相変わらずいいペースで楽しいです。
もうお嬢様じゃないということを言えない、というのも…まあ仕方ないですけど。というか相手はそれぐらい知っているのでは?大きい企業の倒産はニュースになるでしょうし。
新婚さんシミュレーション…これはこれで楽しいです。
本番のウェディングドレス姿はさすがに美しいです。
すごく何気ないところで魅力があふれてきます。
梓さんの切ない思い…華ちゃんの応えかたは実に見事でした。「告白します」のミスリードもお見事。
キスを本当にすると見せて、そこからの勇気と迫力には驚きました!
それで「いまのわたしはかがやいてはいませんか?」…今の自分にもすごく自信がある、その圧倒的な強さ…トオルさまもよく応えたものです。
三バカは何とかフォローしただけです。
そして梓さんもその華ちゃんの姿を見てやっと勇気を出した、というのがまっすぐ伝わってきます。
今回はすごくメッセージがしっかりしていて楽しめましたし、ものすごく魅力的な絵がいくつかありました。
本誌での最終回…どうなるか、今から楽しみにしています。

2〜3秒にかける少女
面白い形のオムニバスシリーズですね。
こういう男女関係も面白いですね。クラスが離れたら自然消滅ということも多いのに、よほどお互い好意が強くて、しかも恋愛でなく悪友でいられる…すごい理想的な男女関係。
照れてひっくり返るところなんてかわいいですが、それでテレパシーというのも…すぐ「いまわたしなにかんがえてるかあててみて」と試してみる科学精神が素晴らしい。
タンパク質の消化は本当に口腔や食道では全く行われていないのでしょうか?あと胃は切除してもタンパク質の消化に死ぬほどの支障はないですよ。
うまくコントロールできない能力、というのが前作と共通していますね。
まず陽一くんに教えなきゃ、というのが子供らしい感情の動きでかわいいです。
行ってみたら美少女が…うわ楽しくなりそう。ここのパニックも見ていて楽しいです。
聴診器のイメージがかわいいです。
いきなり「目やについてる」は女としては死にますね。
言葉だけ読むと…好意などもっと深い部分の動きを読めればいいのですが。わずかな言葉の断片しかわからない、じゃわからない、というのも非常にリアルです。
るみちゃんの内心の黒さはびっくりさせます。
そして「陽一に似合うのは」を読み返してみるとまた苦笑させられますね。
「可能性がすこしでもあるとわかれば」というのが人間の弱さ、哀しさですね。すぐ告白すればいいのに…だからおまじないをしたり、とにかく勇気を出すには背中を押してもらわないといけない…何かがないとどうしても勇気がない、現状維持を選んでしまう…
それでこれじゃどうにもなりませんね。
逆に、相手の気持ちがわからないのに普通に暮らしている人々がすごいと思えてしまう、というのはよくわかります。僕も恐怖症気味ですし。
それで柱に頭をぶつけて走り出すのはすごくカッコいいですし、わかりやすいメッセージがはっきり伝わってきます。
この大文字のモノローグが…読み返してみると笑うほかないです。
さりげなく背後から「がんばってください」と言われていたり。
「もういうなよ!!」のまぎらわしさは笑うしかありません。
逆にサトラレになっていたとは…同時に天才にもなっていればいいんですが。
あらゆる人にだだもれ…人々の優しさにはほっとします。というかそれが声じゃなくテレパシーだと気づく人がいないのもあれですが。
るみちゃんの反応も笑うしかありません。
というか、誤解を解かれるところの会話だとテレパシーがばれているとしか思えません。
で…目をつぶった時にキスされる、というオチはまた崩れました。
なんというか強烈な作品でしたね。バランスもよく、すごく楽しめました。
これだけの圧倒的な実力が増刊でしか活かされない状況は本当に残念です。いや、もう本誌連載と増刊シリーズを優劣で感じる必要はないのかも…

にげない。―あたしたちの格差ライフ―
 小中高一貫の名門校、東上皆川学園に、中等部から外部生で入学した村山奈子ちゃん。
 外部生は背中の襟からスカーフが出てしまっているので、「しっぽちゃん」と初等部から持ち上がりのクラスメートにばかにされ、教室移動を教えてもらえないなど色々嫌がらせがある。息が詰まりそうな空気に屋上で叫んだ奈子ちゃんは、こんなのは間違っていると声を上げて孤立してしまう。
 逆にそれで全教科満点の上野谷くんや、モデルの超美人糸山さんと仲良くなる…
本誌連載でなく増刊シリーズなのが少し残念ですが、やはりすごく嬉しいです!
絵もすごくすっきりして見やすくなり、はっとするほど美しくもなっています。
サブタイトルが少しまぎらわしい気もしました、てっきり極端な貧困層を描くかと思ったので。でも今回の話も深層構造としては格差の問題と共通したものがありますし、これからどこにでも発展できますね。
ぶつかった美人の美しさには魂抜かれました。ぶつかるのはまず異性じゃないかという気もしますけど。
冷静に地図を探せばいい気もしますが、僕もまあはじめて入ったところの地理がわからなくてパニック、というのはよくあります。でもそれは下見をしておけば…となりますがもうきりがないです。
入学そうそう遅刻、というのも運が悪いというか…
外部生徒で集まる、というのも仕方ないですね。
雑誌などに出ているモデルと同じクラス、というのもすごい話です。
「外部生はしっぽちゃんだ」という言葉がすごくうまいです。ユダヤの星と同じ、元々「違う」存在にわかりやすい言葉と見分けやすいレッテルを張り、人間としてではなく「しっぽちゃん」としてしか見ないようにし、貶める…差別の基本的な構造です。人間の低い部分、動物的・魔術的な部分はそちらの論理で動いてしまいます。大抵の人はそちらが主です…
経済的な差も元々あるので、格差というサブタイトルも看板に偽り無しです。
平均点も全然違う…まあ僕の経験上は、入試で入った人のほうがエスカレーターの内部生よりレベルが高いこともありますが、学校ごとに校風もあるでしょう。
またはテストのレベルが違う、内部生は小学六年の終わりで一般の中二ぐらいまでは軽く学んでいるし、ほぼ全員公文式で高校レベルまで学んでいるのが当然になっている、とか。とても競争意識の強い学校のようですし。
全教科満点というのはすごい…
「内部生の女子って」…この言葉で更に対立がひどくなるというのは…人間らしくとてもリアルです。
藍ちゃんははっきりと怒りを表明していますが、それが解決にならない…
競争意識を勉強ではねかえすことはできないのでしょうか?
屋上で叫ぶのも悪くはないです。ここから上野谷くんと知り合うのもうまい…彼の気さくさも面白いです。普通なら「全教科満点の」なんてつけられたら腹立ちますよ。
お互い心を開いて話している、というのがすごくわかってここはすごくいいシーンです。
場所変更を伝えないというのはあまりにもひどいですね。「いいわけをするな」というのは…かなり軍隊的な面がある学校のような感じもして少し不快感を感じます。
というか内部生と外部生の対立は毎年ある、構造的な問題では…学校側がそれを察して対処していないということは、この問題を分断統治のために容認している?
藍ちゃんが怒りをぶつけてしまうのは理解できる分すごく悲しいです。
ここではっきりと問題を分析し、確かな言葉にできる奈子ちゃんの強さと明晰さはすごく尊敬できます。中学校の頃の僕には絶対無理でした…さすが難関校に合格しただけはあります。
「東上皆川の生徒なら」と、学校の誇りを逆手に取るのもうまい。
どちらも悪い面を明晰に指摘する…「どっちもいやだ!」というハッキリした言葉、この凛とした姿には呆然とさえします。
糸山さんがそちらの側についてくれたのも素敵でした。
孤立という代償は当然とも思えますが、それで泣いてしまうのもすごくわかる…逆に彼女の正義感の強さがすごくわかってきます。
糸山さんも辛い経験をしたからこそ、何が正しいのかしっかりわかっている…この強さもすごいです。奈子ちゃんが強いからこそ認めてくれたんですけど。
羽奈ちゃんが来てくれたのも嬉しいですし、それに上野谷くんも…みんながみんな動物的・魔術的な存在、差別する人ではない、わかってくれる人もいる…このメッセージがどんなに胸を熱く暖めてくれるか。
どんな学校生活か…これから大変なことも多いでしょうが、わかってくれる人もいるという暖かいメッセージがすごく強い勇気をくれます。
また最高傑作の予感がピリピリしますよ。楽しみです!

名探偵夢水清四郎事件ノート
講談社漫画賞受賞おめでとうございます!
この可愛らしさの影に隠れた不気味さがえぬえ夢水らしくていいです。
ハワイ、という楽しさがすごく伝わってきます。
レーチも気の毒に…相変わらず。
リッチな話からいきなり貧乏くさい話になるのもうまく落としてくれます。
この美形に真衣ちゃんがドキドキするのも何かと楽しみです。
いろいろと細かいところから相手の素性を見破るのはホームズ以来の伝統ですね。
「Why didn't they ask YUMEMIZU?」は「Why Didn't They Ask Evans?」…クリスティー「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」のもじりですね、今思い出しました。
いきなり幽霊話というのもすごい。
呪術師とのトラブルというのもあちこちの植民地では多いでしょうね…根絶が完璧に近い地域以外は。
論理的科学的にはわからない、は確かに正しい態度ですね。「見えない竜(カール・セーガン)」として扱うのもいいですが。
再現性は別に難しい話ではなく、単にレシピどおりに作れば誰が作っても同じ味の料理がまた作れる、というだけの話です。常温核融合はそれができず、トップクオークはそれができ、ヒッグズ粒子は今それに挑んでいるところです。ちなみに相対性理論も量子力学も、不断に恐ろしい精度でそれができ続けているから正しいといわれているだけなんですよ。
このような形でも、子供たちに科学の本質を教えてくれることに感謝します。
ついでに押しかけるというのもある意味厚かましいですが…まあ向こうにとってさしたる違いはなし、と。
もう一人の助手…からかう笑顔がすごく見ていて楽しいです。
というかもう両方思いになっているのが踊りだしたいような気分になります。
人の気持ちがゆがんだら…わかっているんでしょうね、真相に。異次元とか幽霊とかは最後の手段で、できる限りは現実的に考えている…
しかしハワイって…広いんですね。
確かにもろに城です。すごい。

魔術師にくちづけを
いたずらっぽい扉が楽しいです。
かえって迷惑をかけている、という状態は僕にとってはあまりに心当たりありすぎて泣きたくなってきます。
約束が対価、ってちゃんとシステムわかっていますね。
そりゃまあ泣くしかないですし、そこを励まされたら…
誰なのか何の根拠もなく姫宮先輩と信じてしまう…頭を抱えるほかないです。
モテモテのイケメン、でベタな欲望と呆れる、かなりばかばかしい始まり方でした…読み返すとそこから話を深めていく技量はさすがでしたよ。
変わりすぎではありますが、人相が誰にもわからなくなるほどではないでしょう…ごくわずかな修正や態度・髪などで十分大抵の人はかなり美は向上できます。
約束を忘れた結果、モテることしか頭になくなった…僕もそんな感じで、脳内の色々なことを失えばかえって幸せに生きられるかもしれません。どちらが幸福か、誰に裁けるでしょう。
「下僕さ〜ん」というのも聞かれていたらどう思われるやら。
そんな対価でも受け付ける本というのも器用なものですね。
千沙子ちゃんと変わった総太くんの会話がなんとも面白いです。「ちさのほうがおれはいいし」なんて女たらしな…
姫宮先輩がうそのようにすりよってくるのは、正直ちょっと気持ち悪ささえ感じました。
約束の真相も寂しい話です。
約束のときまで待つ、というのも…引っ張りすぎましたね、せっかく両思い確定だったのに。
あまりのバカさに言葉が出ませんね。怒るのもわかります。
他人のことは放っておくのが確かに賢明ですけどね。
「色恋ごとでなぜそんな必死に」って人間は動物で、生物で、生物の細胞全部は自己再生分子があって、だから自分の遺伝子を増やし伝えるのが生物にとって本質的な目的ですよ。当然じゃないですか。
対価を返してくれ、といきなり言ってくるのは驚きました。
約束はともかく、千沙子ちゃんは泣かせたくない大事な人だった…なんとなくですが、ここから魔法を使わなくても…二人とも約束の件を忘れれば、ただお互い大事な人だから、というだけでもよかったような気がします。
「バカなくせによくかんがえたな」は確かにその通り。そこまでわかるならたいしたものです。
「大切な子泣かせんじゃないわよ」だけですよね、本質は。
いきなり本から奪ったはずの代価が飛び出すのはびっくりしました。
愛のパワーで決着しちゃったら魔術師やってるのがばかばかしくなるでしょうね。またクロウリーが晩年挑んだ性魔術の世界…そっちは非常に危険で果てしがない話です。
すごく楽しくなってきました。次回もまた楽しみです。

hana
 子供に石をぶつけられて叩き落され、いじめられていたカラスが助けられた…目が覚めたら男の子のところで手当てされていた。
 そして翌朝、カラスは女の子になっていた。裕くんとその幼馴染、智美ちゃんの三人での奇妙な生活が始まるが…

人魚姫の使い方も見事ですしすごい作品ですよ。
実際のカラスにとって人間はどんな存在なんでしょう。獲物にするには大きすぎるけれど自分たちを積極的に捕食はしない、ただ追い払おうとする、環境の一部のようなもの?
カラスは非常に知能が高いので、意識に近いものがあってもおかしくないです。
子供が石を投げるのはありえますね。まあ落とされるカラスの何倍もガラス窓が割れているだけでしょうが。
子供が追い払われて抱き上げられ、読み返すといかにもうまいミスリードです。
カラスの目が輝くのは色々不気味です。
人間になりたい、で…翌朝、視点の動きが実にうまい。
裸の女の子、しかも包帯って…よくまあそんなこと智美ちゃんも信じたな、と初読時は思いましたが読み返せば納得。
「ああ大好きだ!」という感情の直截さも動物らしくてすごく納得できます。この花ちゃんの人格造形は見事としかいえません。
「ただの幼なじみ」というのも…
あっさり裕くんと一緒に寝ている…でも手を出さなかった裕くんも紳士じゃないですか。
「智美もいっしょにねようか?」とエロ冗談を兵器で連発する彼の態度が実にいいです。
三人で遊園地に行く、というのも家族みたいで楽しいですね。
智美ちゃんが嫉妬を出しそうになるのも…彼女の気持ちで読むとまたいろいろ伝わってきます。
この変なおじさん…そんなにこういう変質者は多いとは思いませんが、三人の絆を確かめるためですね。
おふろに「いっしょに入ろっ」と何も知らない花ちゃんが言って吹いて、「オレはいいけど」…エロギャグの繰り返しが実に楽しいです。「そろそろねるか」に「いっしょに」「バカ…」とさりげなくついていたりも。
その影で「そんないいやつじゃない」と智美ちゃんが自責の念に…
はっきりと「オレは智美が好きだから」…それから花ちゃんが飛び出してしまう、ここからの緊迫感と強い思いは読んでいてたまらないものがあります。
車にはねられそうになった智美ちゃんに、彼女の愛情の深さを思い出して…あまりに激しく直接的な感情に、もう受容するところが破裂しそうです。
激しすぎる悲しみに歯を食いしばっている智美ちゃんの表情がすごい…
エピローグであの髪飾りを奪い返してしまうところは…悲しい温かみがあります。
七月号の重大発表が今から楽しみでなりません。タイアップではありませんようにと祈っているのが悲しいですが。

メガネ王子
ずいぶんと長いことラブリーをしっかり支えていた重要な作品だったと思います。
確かにすごい状態です。
「ミジンコ以下だということが確定しましてまことにありがとうございます」というのはなんだか笑える言葉です。ネットの一部のカルチャーも思わせますね。
自分一人の力で生きて生きたい…それが夢、家族に絶対的な信頼を持ったことがない…あまりにも悲しいですし、それで自分ひとりで生きられる強さを子供も含め誰でも持てるわけじゃない…
友哉くんの寂しげな顔もたまりません。
「たのむな」というのは…友哉くんと幸子ちゃんがつきあったほうがいい、という意味でしょうか?
家族愛を求めてない、と…ここで立ち上がってからの彼女の暴走は相変わらず楽しめます。友哉くんもよくわかってますね。
「だまってしたがってくれる?」というのも怖いですね。「友哉とつきあうから」にはびっくりしました。
友哉くんの怒りは静かですごく強いです。
それでバスに…読み返すと思わせぶりですね。
そして肝心なところで出てくる…憎い男ですなあ。
メガネをかけさせてのキスもたまりませんね。しっかり影に隠れている友哉くんには大笑いしました。
本当に追いかけていくとは…イギリスの店で物を注文する、というとどうしてもハリーポッターの杖を注文する場面を思い出します。
お疲れ様でした!すごく描いていて楽しい作品なのはわかりますが、かなり長いことこの作品に拘束されていた気もします。
これからまた、どんな作品を書いてくれるか楽しみにしていましょう。

むりやり探偵部!―藤原那由多少年記―
 ある日、(オカマの)先生が黒板に悪口をかかれて怒っているとき、藤原那由多くんが遅刻してきた…犯人扱いされた彼は、鮮やかな推理で真犯人を暴く。
 推理小説マニアの愛沢ちまきちゃんはそれに感動し…人気者のクラスメートである那由多くんをそのときまで知らなかったというのもぼけた話だが…探偵部の申請を認めてもらうため手伝って欲しい、と頼む。
 生徒会長は他ならどんなくだらない一人部も認めるのに、探偵部だけは却下する。そして那由多くんを見たと同時に、問題児扱いして勝負を挑んできた。都大会優勝選手である会長とテニスで…
あ、相変わらずすごい世界です…。
くっきりしてそれでいてどこか虚数方向にずれた雰囲気は相変わらず強烈です。
女装男性がそのまま教師として認められるというのも…現実にありえるでしょうか?
でも「年増」というのはしっかり女扱いしてますね。
この推理はお見事。左手でペンを回しているのはわかりやすいですね。
その那由多くんのことを知らないというのがすごい…そしていきなり自己紹介から、告白と思ったらなんだこりゃ、と。
カレー部を認めるなら探偵部ぐらい…というか推理小説研究会とかにすればまだ認められやすいのでは?
「またきみか」ってクローゼットに隠れた前科があるんですか。どこが品行方正…
いきなり那由多くんが出ただけでケンカを売ってくる会長も…こんな子供っぽい挑発に引っかかるのもなんですが。
「部費が出ないじゃないですか」…すげえ…
「そんなのカンタンさ」で雨だからというのはこけました。
読み返すと彼が真相に気づくのがうまいですね。
美樹ちゃんとの話ではなんというかフェアプレイ精神が感じられます。でも、窓から見える幕から弓道場とわかるのは経験者だけですよ。ちょっとここはアンフェアです。
都大会優勝選手…ひどすぎる話です。
打ち返せたら1ゲーム、でもそれだけ差があれば…
「この試合のあとあいつを殺る!!」も笑っちゃいます。
必死で打ち返すのは迫力ありました。
ここからの推理は見事ですね。
あ、残念…引く形自体はかなり綺麗なのですが、肝心なことが…矢は弓から見て親指側です。あともう少し右(馬手)肘は引きます、右肘から左手まで一直線が基本です。腰も少しゆがんで見えます。
もう一度前のほうから弓を引いている姿を描いたときにはほぼ正確です。
一々「キモイをとおりこして挙動不審ですね」ってひどいですよ。
「超ハンデでかってよくあんなにいばれるなあ」って…さりげなく裏からすごく冷たいというかドライな言葉が飛んでくるのが面白いです。
会長と美樹ちゃんがいい感じになりそうなのは嬉しかったです。
これは連載予定でしょうか?殺人事件ありの本格的ミステリも面白そうですし、学園での殺人がないミステリもよさそう…楽しそうです。
この独特の世界自体も面白いので、いろいろな作品も楽しみにしています。

執事のススメ
代々漆原家に仕えてきた佐々木家に生まれた努くんは、祖父によって漆原家のお嬢様、マキナさま(同年齢)に仕えるよう幼い頃から厳しい訓練を受け、執事体質が骨の髄まで染みついた。
だがある時期からマキナちゃんのあまりのわがままについていけず、仕えるのはやめると宣言して対等なクラスメートでいるつもりが、体が勝手に反応するのは止められない。
そんなとき、いきなり屋敷にいて茶をいれるよう命じられ、それで彼女の涙を見てしまう。彼女はもういいと言うが…

冒頭のきれいな出会いから、いきなり優雅な動きで「お嬢様」…まあメイドブームの逆として執事もかなり堂とか聞きますが、そんなものでしょうが…
かなり過激で豪快です。
制服姿での優雅なエスコートはすごく印象強かったです。でもそれが、ほとんど…後から殴られるのをきれいな合気道技で固めるような条件反射だとは。
ドーベルマンはしゃれになりません。いやそっちの訓練を受けたドーベルマンは、優れた格闘技者でも殺される確率が高いです。ドーベルマンが複数なら絶対に。
「お姫さまと執事の禁じられた恋」…みんな面白がってますね。きれいと思っていても自分が声をかけるつもりはない、というのも面白いです。
声を賭けられたらとっさにひざまずいてしまい、そしてこのお姫さま抱っこは読み返してみるとマキナちゃんの気持ちが切ないです。
帰り道に子供を注意して自分が悪者にされるのは…すごく腹が立つのはわかりますが、僕だったらなんとも思わず犬だけ保護して去ります。目的は犬を保護することですから…子供を諭し改心させることは人力を越えているので。
信じてもらえるというのは実に嬉しいことです。人間にとって大きな支えになるぐらい。
今まで悪い印象ばかり与えていたマキナちゃんの印象が変わる、同時に茶に誘うことも入れる、うまい転換の仕方です。
涙、そして解放宣言、それで政略結婚の話…ここからの熱さ、「バイトでも〜マキナさまひとりくらい」には叫びだしそうになりました。
バカ、と言ってキス…婚約の話をなしにする、株の問題はなんというかご都合主義もいいところですが心地いいです。
この二人のこれからの関係も見てみたい気がしますね。実に面白かったです。

若おかみは小学生!
かなり変なところで熱いです。
読み返してみるとおっこちゃんはやや被害感覚が強すぎるような気がします。でもまあ普通幽霊なんておはらいするだろう、と思うのは当然ですし…
いきなりインチキ呼ばわり、その上で自分の昔の事を話す源蔵さん…カッコよすぎます。
思いあがるな、というのがすごく強い言葉というのはわかります。魔物と戦う、ということ自体が思い上がり、というのも納得できますし。
自分にはおはらいしかできない、恩を返したい、という藍竜さんの気持ちもわかりますが。
おっこが早くはっきり自分の気持ちを言っていればよかった気もしますが。
源蔵さんが保護者のポジションに立ったのは良かったです。
ウリ坊が出てきて、堂々と対決してそれでおっこも勇気が出た、というのも熱い!
幽霊には効くけど魔物には通用しない、というのが苦笑しました。
読み返してみればおっこの心配がバカみたいに思えますが、まあ仕方ないですね。
ここからもろに孔雀王展開、と思ったら…こんなかわいい鬼だなんて…なんというかのんきに…続くんですね。

おんたま♪
絵の可愛らしさと表現力はどんどん増していますね。
試験がペーパーテストでなく口頭試問だったら…彼女のことなので何か別のドジが出るでしょう。
腹に気合が足りないから、というのも単純ですが…結構体育会系ですね。腹筋百回はかなりきつい…
優奈ちゃんの声のすごさがすごくしっかり伝わって、ページをめくったら特大のおんたま…すごい。
ソプラノやアルトは人数割、というのも難しいですね。本来は声域で決めればいいはずなのでしょうが、人数のバランスが悪ければどうしようもない、と。
初音ちゃんがあっさりゆずったのも、彼女の本来の声域はどうなのでしょう。
おんたまがおどってるみたい、というのは理想的な状態ですね。
頭が爆発したりするテンポのよさがまたたまりませんね。
「だきつくな」は笑うしかないですね、この天然悪女…。
まずリズムを取って、と最初から完璧にやろうとせず、一歩一歩やっていくのも当然ですね。
嫉妬でずきっとして迷走する…頑張っていてもなかなかうまくいかない、というもどかしさがすごく共感できてしまいます。
だから優奈ちゃんのきつすぎる言葉はすごく傷つきますね。
元々自信がない、自己肯定感がすごく低い子ですし…「迷惑」といわれると弱いのもわかる…
おんたまがほかのおんたまを食べまくっているのもわかりやすい図式です。
本来合唱に向いていない、ソロのほうがいいんでしょう…ソロで歌える場がないのは残念です。きつい言葉の応酬になってしまうのは…ここに大人がいないのが残念ですが、大人にも色々いるのでかえって悪くなる可能性もありますね。
やけ食いというのも…でもこれだけ辛いことばかり多い人生送ってきて、その都度やけ食いしていたらもう太りまくっていたはずでは?
シオン先輩が手を差し伸べてくれるシーンはすごく愛情が伝わってきて素敵でした。
「「いらない」というのは簡単」という言葉がすごくメッセージとしては強烈です。誰もがすごく、いらないというメッセージをいつも受けて傷ついているはずですから…
おんたまから探して川原の草原で見つける、ここもすごく素敵なシーンでした。
一番になれば認めてもらえる、というのも共感できる人は多いと思います。
それぞれ違っていい、みんなで歌おう…これもすごく素敵なメッセージでした。
このおんたまのダンスもすごく素敵ですね。
なんというか両思い感もすごくいい甘さですね、何のジュースの味でしょう…

てのり@あいつ.jp
 中学生になり、男の子と話せなくなったことで悩んでいるヒナコちゃんがある日、木の枝の上で猫に狙われている小さい動物を見つけて猫を追い払った。
 そうしたらそれは縮小された人間の男子だった!環境問題対策としてすべての生物を小さくして子供も働くようにした遠い未来から、タイムマシンの事故でこんな時代に放り出された…
 その赤名律くんとの奇妙な共同生活が始まり、色々振り回されるヒナコちゃんが、隣の幼なじみ仙太郎のことを意識しているのは…?

やはり面白さは抜群ですし、メッセージが丁寧にしっかり伝わってきました。
設定もSFとして面白いですし(科学考証すると問題多いですが)、男の子とうまく接することができないというのも読者の多くにとって共感できる悩みでしょう。
ギャグ顔もすごく切れてますし、豊かな表情も楽しめます。一作ごとの成長が著しいのが嬉しいです。
彼氏ほしいとかジャニーズとか…宝塚って子はいないんですね。いやまあそうなったらある意味女として終りますが。
男子とうまくしゃべれない…同じかそれ以上に、男子は女子とうまくしゃべれないんですよ。
少年漫画はすぐ異世界でバトルを始めてしまいますし、ラブコメもエロ中心になるので、そういう小さな心の違和感が描かれることがないですが。
流されるまま、という反省が冒頭に描かれているのも読み返してみるとうまく積み上げられてますね。
この服がリスなどに見える、というのもうまい。確かにそう見えます。
助けてみたら手乗りサイズの小さい男の子…確かに小さい。
大声にびっくりするところから、すごく感情移入しやすいですね。…十分の一にしたら同じように声が出せるでしょうか、笛を十分の一にしたら波長は…
元号は未来には消えている?でも元号だとわかるというのはすごいです。いや、逆に僕ら普通人が昔の元号がわからないのと同じ…霊亀とか養老とかと同じように?そこまでの未来とは。
環境のためにサイズを1/10にする…すごい発想です。わかりやすいし大胆…。
すべての生物を小さくする、と…映画などではいろいろありますし、ドラえもん・Dr.スランプでおなじみですが、科学的に考察すると実に色々大変なんですよ。
笑っている表情もすごくかわいいです。ギャグ顔がかなりいいですね。
手のひらから飛び降りても…さて、ここで重力制御技術が必要だったか考えてみましょう。別にニュートン力学の計算ができなくても簡単にわかりますよ、ちょっと見方を変えれば。
見た感じだと、「16cmの人間が1mから飛び降りる」は「160cmの人間が10mから飛び降りる」に等しく思え、だから死を意味している…と思ってびっくりしたのでしょうが、実は全然違うんです。
まず飛び降りる高さは1mでしかないです。1mから飛び降りて、地面とぶつかったときの速度はg…地上における重力定数、高さ、空気抵抗だけで決まります。どんな重さだろうと変わりありません。空気抵抗は小さく表面が複雑なほうが強いので、地面と衝突する速度はむしろ遅くなるでしょう。
だから「160cmの人間が1mから飛び降りる」のと変わらない、まず死にません。
さらにサイズが1/10になっていると、骨や筋肉が十倍強くなっていると同じことです。理由は二乗三乗則…立方体を考えてください、一辺が二倍の正方形の面積は二×二=四倍、立方体の体積は二×二×二=八倍。一辺がN倍なら面積はN×N(Nの二乗)倍、体積はN×N×N(Nの三乗)倍になります。またこの「N倍」は小さくなる方向でも有効で、半分は1/2倍となり、その二乗は四分の一、三乗は八分の一です。実際に紙でやってみればはっきりわかります。
だから十分の一になれば足の断面積、すなわち足の骨や腱の断面積は百分の一になり、体積すなわち体重は千分の一になります。それで断面積一単位あたりの体重は十分の一になるんです。だから足の骨が十倍強い素材になったのと同じで、だからただでさえ人間は一メートル落ちても普通平気ですから、十倍強くて更に空気抵抗も強いなら絶対大丈夫、と言い切れます。
百は十の二乗、千は十の三乗、ということは忘れないでください…算数や数学のミスの相当部分はそれを忘れるからですよ。
逆に言えば、だから巨大ロボットアニメはありえないんです。18m=人間の十倍で動き回るには、人間の骨より十倍重さの割に頑丈な素材でなければ足が折れますし、足の裏が泥にめり込むのも人間の十倍です。
この二乗三乗則は、空間が三次元であるということだけから出る、それこそニュートンの三法則・エネルギー保存則・熱力学第二法則・マックスウェル方程式・相対性理論・量子力学よりずっと大切な、あらゆる物理、いや理科の教科書の一ページ目に書いておいてほしい基礎法則です。生物・生化学・有機無機化学・化学工業・金属…いやあらゆる素材工学・建築・造船・機械設計…科学技術のあらゆる分野で、どれほど決定的に重要なことか。
もっと単純に言えば、16cmの猫などは1mぐらいの高さから落ちても平気ですよね。なら同じことです。

まあとにかく、ヒナコちゃんがあわてたりしているのは見ていると楽しいです。
タマゴぼーろ…十分の一だと動物としての消化器官はどうなるのかも考えてしまいます…あ、ネズミ同様一日中体重比かなりの量食べなきゃ死にますね。
学校についてこられると言うのも色々大変ですね。
仙太郎くんを見て一気に話の雰囲気が変わりましたね。
友達の影に隠れるのを見て「わっかりやすいヤツ」と思うのもわかります。
あちこちうろちょろして騒ぎになるのも楽しいです。こういうドタバタが実に楽しい。
仙太郎くんとぶつかったときのおびえた表情、僕が仙太郎くんの立場だったらすごい罪悪感を感じますよ。
ベランダの仕切りは僕も見たことがあります。その穴を通じて行き来できる、というのもすごくいいでしょうね。
中学校の入学式で、そのショックもすごく伝わってきます。本当は壁よりも彼が声が変わって背も高くなって、というのも…男の子から見ても女の子の変化はかなりショッキングですよ。
律くんは同じ部屋に寝かせてもらうのが男子扱いされてない、と悔しがるのが十二歳の男の子らしくて親近感持ちます。
受身なだけじゃない、自分を助けたのは動いたことだ、壁を作るって固まるより動け…このメッセージそのものも、それを伝える力も素晴らしいです。
出て行ってしまい、それからヒナコちゃんが自省するシーンがすごくいろいろ伝わってきます。丁寧に丁寧に伝えてきてくれます。
それで律くんに助けなんて来ないんじゃ、とも思って…壁の板を蹴り抜く、というすごく強い行動から心の変化、成長を強く描いてくれて、胸が痛くなるぐらい伝わります。
ここで仙太郎くんと和解できたのも素敵で…ここから律くんも見つかって、それで終った終った、と思ったところでベランダから落ちそうになって大きくなった律くんが助けてくれてドキドキ、さらにそこを仙太郎君にも見つかって修羅場…これがシリーズでないのが信じられないですよ!シリーズでも次回どうするんですか…
たまりませんね、このじわっと胸を浸すような暖かさとメッセージの確かさ、そして面白さは。
この続編だとしてもまったく別の作品だとしても、とにかく次回作が楽しみでなりません!本誌にも出てくれればいいとすごく祈ってます。

恋する落書き
 別館三階非常階段の壁に恋の願いを書くとかなう、という…でも東大入学・上級外務公務員試験・見合い結婚…と人生設計が完璧にできている全国模試三位の白石未夏ちゃんには関係ない。
 その人生設計のために時間を無駄にしたくない彼女は今日も秒刻みのスケジュールで暮らしてる、でも館山先生が壁の落書きを消せずに暑く吼えているのを見かけ、そこで先生に「オレと白石でここにある全員ぶんの恋かなえてやろーぜ」といわれ…
 未夏ちゃんの頭脳と先生の特権濫用?で多くは成功、それがなんとなく嬉しくなっていくけれど、先生の笑顔を見ると呼吸が苦しくなってきて…
デビュー後第一作、思ったより大きく成長していました。
スパイシーな可愛らしさがさらに魅力的になっていますね。
壁の落書きと言うと旧東京宝塚劇場のあれを思い出します。
確かに恋や愛は人生設計に支障がありますね。特に望まない妊娠になると。
堅実極まりないライフデザインですが…外務省が堅実と言うのも平和な国です。
一分一秒も無駄にしない、というのも充実はしていますね…
ムダにしか思えない、といっても交配相手の選択が動物として、利己的遺伝子の運び手としての人間にとってどれだけ重要か考えればその激しさも納得できると思います。
壁を見て号泣する熱血教師…妙に引き込まれますね。
強引に協力しろといきなり言われて、断ったら身投げって…子供ですかこの先生は…
人生にもっともムダ、でしょうか?人を操る技術を学ぶのは官僚にとってはとても有益では?外交官にとってはニートラップはつきものですから、そのためにも有益でしょう。将来の夢に評論があるならさらに。
全校生徒のプリントを集めて筆跡と照合、というのはさすがにすごく頭いいですね。
全校生徒452人…恐ろしいほどの少子化です。僕の時代は1000人が普通でした。半減なんですね冗談抜きで。
他人のために労力を使う喜びがわからない、と少しずつ彼女の心を描いていくのも丁寧ですね。
携帯電話も駆使して恋の神様…それは支配欲を満たす快感にはならないのでしょうか?
「つきあったりフラれたりムダでしかない」ってある意味大人の見方ですね。ここでの先生の激しさはすごく心を動かす力がありました。
告白を見ているだけで心臓がドキドキして、そして先生とハイタッチすることで更に、となって…ここからこのキューピッドが、いや先生といることが楽しくなる、という心の変化もすごくうまく描けていました。
増えてしまった、というのは予測すべきことでしたね。
ペンをもらうシーンもすごく印象が強いです。
そして先生の笑顔を見ると呼吸が苦しい、とそちらの心の変化もまた…
そしてついに、「館山先生が好きです。」と書いてしまう…
気づいてほしい、と祈っている時の先生の「調べなくていい」という言葉、分別があってここは先生らしい、とキャラクターの複雑さ、深さがうまくかかっています。
壁に水をかけるシーンも感情の激しさがすごく感じられます。
そしてふられた友達と話して告白の決意を「人生最大の寄り道」というのが…人生設計を変形した告白がすごい。
×をつけられたと思ったら修正…うわあああっ!来年四月、卒業したら…
ラストシーンの笑顔もすごいです。でも26歳まであと八年も待たせるんですか?ははは…
とにかくすごく熱くて心理もしっかりしていて、思った以上に魅力的な作家になっていました。
この心理の力も使って、すごい作品を描いてほしいものですね。

ラブレターv
徹夜してラブレター、というのにうわあああと叫びたくなったり、タイムマシン作ってその頃の自分を殺したくなったりする…いえいえ、本来の読者の皆さんは元気に今を生きてください。
教頭先生と北条とか、封筒の大金とか…
ふりかけハゲってすごいいい間違いですね。
絵がものすごいですが、やってることは正統派のいい間違い連発ギャグですね。
あの大金はちゃんとおばあさんに返されたんでしょうか?

蜘蛛女
アンハッピーエンドとわかってしまうとこれまでのスリルはなくなります。でも一作一作の伸びが著しいのでそちらは楽しめます。
人間は群れ動物…それこそ、人が認めなければならない最大の真実です。その人間になぜ個我という矛盾したものがあるのやら。
孤立する蜘蛛と群れる蟻は根本的に違う、決して分かり合えない存在…
群れからはぐれる蟻は間抜けかもしれませんが、群れのためにはプラスですよ。群れからはぐれた先は確かに99.9%蜘蛛の夕食でしょうが、もしかしたら蜘蛛の死体…蟻の巣の夕食かもしれないのです。
人間も、群れからはぐれ、新しいやり方を試したがる個体がたまに出るほど個体差があるから、大噴火などから生き延びて今存続しているんです。完全に同質な個体、誰もが伝統に一切疑問を抱かないという全体主義者の理想どおりだったらもう滅んでいましたよ。
それに、この「はぐれた蟻が蜘蛛に食われた」絵も、もしかしたら…別の目で見れば、蟻が多いために蜘蛛がここにいることを好み、だから蟻を食う種類のネズミがここには近づけない、というようなことがあるかもしれない…だとしたら蟻が蜘蛛を飼っているともいえてしまうでしょう。
ゲームを壊す行為は、この場だけ見れば強盗・器物損壊です。犯罪として扱えればいいんですよ。
ゲームのキャラだったら…そういう考えは、果たしてマイナスだけでしょうか?妄想で満足して現実の暴力を振るわないことも本人の利益ですし、ゲームから(批判論者が言うように)暴力を学んで振るうとしても、それは自分を守る行為である程度公の利益にもなります。
ゲームでなくても、遥か昔から人は神話・民話・童話・武辺話があり、他人をキャラクターとして扱い、暴力などを学んできました。人間性はそうは変わらないのでは?
人を消してしまう…「だれ…?それ…」という表情の怖さはすごいです。人形ばかりのクラス…
出席簿からも名前がない…
ただ楽しみたい、だから邪魔する人を取り除く…というかてっきり加地くんがヒーローだと思ったら。
そして両親も…少しでも邪魔な人間は…
というかチェリーにこの犯人を消してもらうか、ひとりぼっちになったのですから自力で戦うことを考えたら?
まあそれ以前に両親がいなければ経済的にも色々どうしようもないですが。
ゲームでも復活させるのは難しい…ええ、ムーンペタやイシスの教会にいくら貢いだことか。さぞかし立派な教会が建っているでしょうよ。
あんたが消えればいい、ってかなりあっさりした食事ですね。
逆に寿里ちゃんだけが消えている…
というか最初、このプロローグから群れ動物としての人間を批判していると思ってしまいました。僕自身が人間の群れ動物としての面をひどく嫌っているからでしょうか…。
まあ強引にこじつければ、群れから一人いなくてもわからない、群れ動物では個体に価値などない、と考えてしまったのかも。ただ、個体に価値がないというのは孤立型の生物でも変わらない、重要なのは遺伝子と、人間の場合はミームだけですがね…
あまりにも幼い欲望を全部かなえていったらどうなるか、というのはわかりやすい構造です。

姫系ライオン
 女優と空手家の娘、陽菜ちゃんは当時ヒットしていた映画の子役に一目ぼれ。しかし父から才能と正義感とキレやすさも受け継いでしまい、ついたあだ名は南のライオン。
 自分のことを誰も知らないはずの高校に入ったが…あの子役だった先輩も同じ学校なのに、どうしても近づけない。
 でもたまたま、彼が撮ろうとしている映画のヒロインに立候補して…

不思議な甘みがますます魅力的です。
両親から受け継いだものが違いすぎて一瞬ちぐはぐな感じさえ受けました。同じ人にこれほど違うものが入るとは。
僕も自分のことは誰も知らない高校に行った(別に意識していません、母が強く行かせたがった高校にたまたま受かっただけです)のですが、なぜか何人かいろいろ知っていました。
いきなり手に持っているお菓子を当の先輩に食べられてしまう、というのがすごくいいです!なんか叫びたくなります。
会話にあわせてすばやくチャンスをつかみとるのは母親の血でしょうか?
劇団にはいられなかった…ちょっと困った血でしたね。まあ、人間にとって遺伝子は一卵性双生児で半分の相関がある程度、意図的な育て方もほとんど影響しない、基本的には偶然ですが。
この佐藤くんが結構面白いです。ナルシストだったり…脇を大切にしてるっていいですね。
台本にも真剣に取り組んでいる、というのも短いですがしっかり伝わりました。
映画のワンシーンが入っているのもすごく素敵です。
パソコン室で編集していた、と嘘をついて実は待っててくれた、というのがくすぐったいです。
あめのごほうびも嬉しいです!
本当の自分を知らせられないことが葛藤になって…かなりここまでが長かったですが…
「オレが手本見せるから」の臨場感がすごくドキドキします。
からまれて、彼がしっかり守ってくれる…女の子にとっては嬉しいでしょうが…それでライオンの着ぐるみを見て仮面とは…バレバレもいいところなんですが。
お面をつけての迫力のある構えは体だけでよく表現してます。
あっさりと正体もばれてましたね。
最後の「あたしのアクション見たら」というのもまた…全体に漂うくすぐったい空気がとことん楽しめました。
次はどんな作品が出てくるか…どんな空気を楽しめるか、楽しみです。

こいゆい
 姉が美容師の結ちゃんに、拓真くんが声をかけてきた。実は彼のことが好きだったから一緒に帰れるのが嬉しいけど、狙いは姉なんじゃ、というのがちょっと心配。
 実は美容師志望だった拓真くんと姉妹は仲良くなり、結ちゃんを題材に練習したりしている。
 ある日、泣きながら走っていった結ちゃんの姉の姿を見て、拓真くんが走り出していく…本当に姉とくっついてしまう、と思ったら…
絵もくっきりしていて温かい笑顔も好感が持て、すごく読みやすかったです。
いきなり髪を触られるのもドキドキしました。
好きな人と近づくことになったドキドキもよく伝わってきます。最初から姉に対する嫉妬が出てくるのも構造わかりやすいですね。
仲よくないから、という嘘が一瞬でばれるのもかわいいです。というかこの子、最初でも女の子に抱きつかれていて、それが繰り返されるのもなんだか楽しいです。
「合格」ってなにが?
結ちゃんを「ヘアモデル」というのも、このお姉さん一瞬で結ちゃんが彼のこと好きなの見抜きましたね。
嘘ばかり言っているのがなんとも切なくて、見ている分にはくすぐったいです。
「あせんなくてもやりたいことなんかすぐ見つかるよ」という言葉がすごく温かいです。
「じゃあこんどデートして」「おもしろいこというねー」という会話も楽しいです。
髪をいじられるときのドキドキはもっと伝えてくれても…それは一つ間違えるとエロくなるのでこれぐらいでいいかも。
結ちゃんも姉のことを尊敬しているのが伝わるのも素敵でした。
できたときの絵がまたショックなぐらい綺麗です。
たらしじゃなくて相談されてた、というのも、だんだん彼のことを知っていく楽しみがあります。
できたかも、で姉だと思ってしまって、そこで…つないでいた手を離してしまう、という演出がまたいいです。
誤解させるのも、わかっていても楽しめます。
そして拓真くんのおかげで彼と仲直りできた姉は、全部…結ちゃんの嫉妬もわかっていてこういっているんでしょうか。なんだか包まれるような感じもします。
拓真くんの告白も自然で優しい気分になりました。
笑顔もすごく素敵で優しいキスもよかったです。
いい部分がたくさんあって楽しめました。次回作がすごく楽しみです!

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