なかよし2008年夏ラブリー感想

今回の、いつもとは大幅にメンバーを変えたデビュー後第一作ラッシュは、まだ「なかよし」にはこんなフレッシュなメンバーがいるんだな、とむしろ嬉しい驚きになりました。
まるで別の姉妹誌のようです。
増刊が増えているからこその余裕もあると思いますし、また「地獄少女セレクションこわい話」も新人育成に使えていることもあるでしょう。
この畑の拡大がいい実りになってくれることを心から願っています。
本当になんて素晴らしいのでしょう、「なかよし」の作家陣は!

萌えキュン!(桃雪琴梨)セレブな奴隷(青月まどか)オオカミ少女の恋(栗沢じゅん)ふあふあコットン(ハタノヒヨコ)小川とゆかいな斉藤たち(茶匡)ときめき探検隊!(三浦瑞希)若おかみは小学生!(おおうちえいこ/令丈ヒロ子)ぷちっと!てのりくま(ゆみみ)おとなにナッツー(フクシマハルカ)空に君に(福月悠人)ヒロインになりたいっ!(長澤恵)君はワンドル!(猫部ねこ)ツインズ・ミッション☆(みやび鈴)放課後はロッキン(渡辺留衣)メガネ王子(水上航)かみちゃまかりん(ごげどんぼ*)カレ、時々おにいちゃん。(茂呂おりえ)親切な小人(秋元葉子)スマイルマン(佐藤由梨)眠れぬ姫に君(伊藤みんご)恋イロニvキス(たなあみまい)

萌えキュン!
ますます絶好調ですね。こういう突き抜けたアホっぷりも桃雪先生の大きい魅力ですし、のびのびと好きなことを描いているのがわかります。
高嶺呉服店を見た瞬間に頭のどこかが吹っ飛びました。ちなみに江戸時代に商人がこんな城を思わせる建物を建てたりしたら財産没収の上磔獄門、一族全員島流しものです。
幼馴染なのに彼の家の中に入るのが始めて、というのはなんというかすさまじいです。
振袖姿は…もう暴れたいですね。で、父親の理性は大丈夫なのでしょうか(危険すぎ)。
なぜボディーガードの試験が社会科見学…授業にならないですよ。
忍者ものを作者がすごく楽しんでいるのがわかります。よほど好きだったんですね。
入浴の手伝い…まあ文化によっては上流階級は着替えも何も全部やってもらう、というのもあるようですね。王族だろうと全寮制学校で規律正しい生活をする文化もありますが。
いきなり担ぎ上げて脱走、風呂で脱がせるというのも…試験の意味が問題になるというのも何気なく面白いです。
安杉呉服店というのも爆笑でした!なんてわかりやすい。
自分の存在価値をなくして苦しむのも丁寧に描けていますね。
そして…安杉のあまりのアホらしさ、なんというかここまで突き抜ければ…僕の中の小さい子供の部分は大喜びではしゃぎまわっていますよ。
コスプレ趣味って…というか呉服店の一人娘がなぜ忍びやらSPやらの修行を…
というかスパイたちを雇う金があるならまだ全然余裕では?
「ほかに邪念がある」はその通りなのですが…ここで泉の強さが出るのがお約束とはいえ実に面白いです。
迫力もありますし、抱きしめるシーンの愛情も…はだけかけた着物の色気もさすがです。本当に表現力はすごい作家ですよ。
ボディーガードとしえは事実上意味はない、でもほかにそばにいる方法がない…このジレンマは当分続きそうです。
これを本誌連載にするとしたら、「なかよし」は対象年齢を大きく引き下げるということになります…でもその価値はありそうな気もしますね。

セレブな奴隷
冒頭から作品世界に引き込む芸がお見事。いたずら狙い…ははは。
いきなりの子供の言動がすごいです。自分の中のファンタジーのほうが現実より上で、それ以外が全部ない、徹底した自己中心、というのがすごく子供らしいです。
三人のしもべというのもバランスよくてよかったですね。
母親が絵本作家という背景もうまくできています。
子供が泣いたら悪魔三人組も弱い、そしていつもとは立場が逆転する、というのが実に面白いです。
これでいつもの自分たちのわがままを少しは反省するでしょうか?
イギリスのパブリックスクールや英連邦関係諸国のそのコピーでは誰もが下級生時代は上級生に仕える立場を経験するようですが…彼らもそれは経験しているのでしょうか。
三人ともまるで使えない、というのを見るとそれはやっていないようですね。
姉の説得…というか姉も姉で、「自分の想像した世界に住んでいる」ことには違いないんですけどね。いや、僕もそれは変わりないですし、そうでない人は多分いません。
そして一気に逆転…三人が動き出すと、ここからの痛快さは目を見張るものがあります。
なんというかものすごいスケールですね。
華ちゃんもすごい演技ですね。この姿は本当にお姫様みたいです。
本当にお母さんまで呼んでくるとは…自家用ジェットで母親を連れてくる、スタッフと役者そろえて遊園地貸し切る…よくそれをわずかな時間でできたものです。どんな金があっても何日もかかるのでは…
この子たち、将来真相を知ったらどう思うのでしょう。この母親も、この恩をどう返すのでしょうか…
ラストの「お姫さまになる?」からの復讐も実に楽しい!きがえやベッドやお風呂まで…ふふふ。
また本誌にも登場、連載もあるでしょうか?「奴隷」というフレーズは気に入りませんが、今回とても楽しめたので期待しましょう。
もちろん新しい作品で本誌連載してくれたほうが嬉しいですが。

オオカミ少女の恋
 小六の萌黄ちゃんは高一のお隣さん、浩介くんが大好き。でも年の差が大きいし、最近彼の同級生女子がライバルに?
 何度も嘘をついて少しでも彼のそばにいようとしてしまうけど…

実に元気が伝わってきます。
「ゆうべは超やさしくいろいろおしえてくれたのに…」は聞かれてたら通報ものですよね。
彼が近所の子供として扱っているのもよくわかります。
手をつなぐのをあくまで拒む浩介くんの態度が楽しいです…実際、この時点での彼の立場になるとすごく困るでしょうね。
まだ公開していない映画を見た、というところから嘘が始まり、それがだんだんエスカレートする構成はとてもうまい。
といってもいきなり、親が出かけるから泊まるとかとんでもない嘘になっていますが。こんな嘘を小学生の頃の僕がつくことは全く考えられません。
「チャーちゃんにしかウソつかないもん」がまた器用です。
もくもくと、というのが煙のもくもくになっているのはうまいです。笑ってしまいました。
たまご焼きのみ、というのもすごいお弁当です。かなり栄養過剰では?まずいといいながら食べてくれるし、注文出してまた作ってくれれば食べると暗示しているのがまた嬉しくなります。
おなかが痛いと…とにかくウソをつくしかなくなっている、別の選択肢を見ることができないのが…痛々しいし悲しいです。どうすれば彼女にウソをついてはいけないと納得させることができるのでしょう…叩いても叱っても、それも彼女にとっては報酬になってしまう…ある意味動物みたいですがその通り、人間なんて動物ですよ。
一番きつい罰は無視でしょうが…
去っていく彼を追う視点の切り替えの鋭さは息を呑むほどでした。
この涙だけは本当ですよね…
クラスメイトにからかわれて怒るのは、彼も萌黄ちゃんに恋心が芽生えているからでしょうか…
そして彼からのメール、42度は…
「一つぐらい…ウソをホントに」というのはちょっと反則ですよ!
彼の告白の素直でないところも実に楽しいです。やはり男の子って女の子には勝てないですね。

ふあふあコットン
本誌進出はとても嬉しいです!
動物とオバケってどんな関係でしょう。オバケや幽霊の概念があるのも人間だけでしょうか?
オバケの仲間のふりをしていたら、という発想も結構ありますね。
擬人化動物がさらにオバケコスプレをする、というのも楽しいですね。
「コットンたちクーのこと一生忘れないわ」には苦笑。
偽首の一つからオバケが出てきて…すごく可愛いオバケですね。
いろいろな森の住人に尋ねるところも楽しいです。
本体がサメみたいなのもなぜなのやら…
オバケが幸せの毛玉をくれる、というのもなんだか素敵です。
オチのオバケも確かに…これはオバケにしか見えませんか。

小川とゆかいな斉藤たち
世界が広がったようですね。
こういう里帰りも楽しいですが、茶匡先生の別の読み切りであっても面白かったでしょう。
この重箱弁当は贅沢というか、材料費だけでも相当なものでは?
明らかに自分より弱い女子供を脅すなんて男じゃないです。
三人の喜びようが実に単純で、見ていて楽しいです。
弁当だと出したのがジャージというのはすごく間抜けですが笑えます。
成田さんに聞こうとするのはいくらなんでも…人の悪意に気づかないにもほどがあります。
臭いので洗う、というのも…その匂いに成田さんが反応する顔もすごいです。
にたにた笑っているのを背後から取り囲む三人衆のプレッシャーも素敵ですね。
自分の責任でも斉藤たちと一緒に行って、なぜ悪いのでしょう。次に三人に何かあったら自分も無条件で助ける…いや、友達なんだから貸し借りも何もないのでは?
またいきなりぶつかって、弁当を自分のものだと…というか本当にか弱い女子供を脅すのは男じゃないです。
なぜ卓球、とか100万円とか…重箱を諦めて逃げるほうがいいでしょう。なんだか邪悪という気がします。
ひたすら偶然で逆転するのは見ていて楽しいですが…斉藤三人の珍しい慎重さが興味深いです。いつもだったらもっと考えなしですが、さすがに武器持ちの高校生相手じゃ…はは。
ネットを引っ張る卑怯さはさすがにバカバカしくなりましたが、だからアホ高なのかも。
ぶちきれての高速みだれ打ち…そして爆弾…
鼻の穴にボールを詰めているのが見ていて楽しいです。
弁当はもう食べてしまったとかいきなり「嫁になっちゃえ」とか…疲れますが面白い人ではありますね。
卓球台サンドイッチは結構痛いです。
本誌でも涼瀬さんはメンバーに入るのでしょうか?来月号を楽しみにしていましょう。

ときめき探検隊!
 第一高校を目指して猛勉強している唯奈ちゃんたち優等生グループと、隣の成績も悪い吉則くんには接点がないはずだった。
 ある日祖父の家に行った唯奈ちゃんが、その庭を掘っている吉則くんを見つけた…彼が宝の古文書を発見し、それに夢中になっているとか。
 彼にはわからない古文書を唯奈ちゃんが解読したのをきっかけに宝探しをいっしょにやるようになったけれど、それで徹夜して居眠りしたりして、優等生グループの友だちにも心配される…

すごくいいメッセージをまっすぐ、てらいなしに伝えてくれていて素晴らしかったです。
とても丁寧にメッセージを組み立てているのがわかります。
唯奈ちゃんの、感触と油のような輝きが伝わってくるような重みのある黒髪とスタイルのよさ、正統派美女ぶりもいかにも優等生という感じで素敵でした。
毎日学校行って塾行って…そんな風にすごしている子も多いでしょうね。
いきなり椅子ごとひっくり返されるという過激なシーンもすごく印象が強いです。でもこれ冗談抜きに命の危険がありますけど。
難しそうな本に興味を覚えるというのも、彼に興味を持つきっかけとしてうまくできています。
おじいちゃんのところに行ってそこで地面を掘っている彼に会う、というのも実にうまくできています。
これはかなり難しいです。というか四神十二支を覚えてるってとんでもないです。それ試験に出ましたっけ…でも、頭のよさがこういう形で出てくるというのがすごくうまい。知識、地道な反復練習や暗記を真面目にこなす忍耐力がないと探求の道に入ることができない、というメッセージがはっきり伝わってきます。
「なぞが解けたのが思いのほかうれしくて」と、学問そのもの…テストとは違う、正解がないところを模索する楽しみにめざめる、ここも…どこもすごくわかりやすいです。
眠れなくなってネットで調べて徹夜したり、知の楽しみに目覚める瞬間は僕も知っていますし、読者皆に伝えたいというのがすごく伝わってきます。
「いずれはもっとでっけー宝」はいいのですが古代ピラミッドとか竹内文書とか…それはさすがに苦笑しますが、僕も小さい頃そういう謎が大好きでしたからすごくわかります。
ここでの、優等生グループ仲間が善意…「唯奈のために」という言葉には、僕は本能的に警戒してしまうのですが…少なくとも主観的には善意なのが伝わってきて、それもいいです。間違ったことはいっていないし…ここはただ、唯奈ちゃんが自分の気持ちをうまく言葉にできないのが問題なのですから。
逆に吉則くんの、「高原にとってのしあわせは」という言葉!
何も強制しない…彼女の自主性、彼女の魂が何を求めているかをとことん大切にしている…そこは優等生仲間とは違い、何が唯奈ちゃんにとって一番いいかを決めつけていない…これがまたすばらしい!全然バカじゃないですよ、大人でもそれが言える人なんてそうはいません。
「点をとるための勉強」と、「あたるかわからなくても調べてかんがえてみる」探求の世界、その対照がすごくはっきり伝わってきて、たまらなく嬉しい気分になります。ひとりでも多くの読者が、今やっている勉強の先に…どんなジャンルでも、そんな素晴らしい世界があるかもしれないと希望を持って欲しい、たくさん学んで輝いて欲しいです。
前者の知識が後者に生きている、どちらも大切というのもまた素晴らしいです。僕自身は後者しか見えなくて前者を見失ってしまいましたから…
決意して走り出したときの心の動きもすごくよくわかります。
落ちたときに彼が抱きとめてくれるシーンも素敵でしたし、それから彼女の知識、調べたことが生きて…宝が見つかるシーンもまた素晴らしいです。
ここで変に大げさにしなかったのも、しっかり宝が見つかったのもすごく素敵でした。
泣き出してしまうのもわかりますよ…
そして遺失物法とか、その現実がまた素晴らしいオチです。
やっと言葉にできた気持ちを優等生仲間に伝えるシーンも素敵でした。吉則くんの言葉をろくに聞いていないのがまたうまいギャグになって重さを軽減しています。
うらやましい、という…善意の影に気づける優等生仲間も本当にいい人、賢い人ですね。
考古学者という新しい目標がすごく輝いて見えます。
恋愛要素はちょっとついでみたいですが、ここで唯奈ちゃんが真っ赤になっているのもすごく可愛いです。
とにかくあまりにメッセージがまっすぐで素敵で、ものすごく読んでいて嬉しくなりました。読者にそれが伝わっていることを心から祈ります。
これからもプラスのメッセージがいっぱい詰まった作品を期待しています!

若おかみは小学生!
ずいぶんと久しぶりなので、この紹介は嬉しいです。
みんなでドラマを見ているのは苦笑しました。
戦隊ヒーローもののどこが悪いですか?ドラマ性が高いのも多いですよ。
いきなりドレスを着せられるのは強烈でした。
「おばあちゃんのお助けマンなんだ」に少し痛みを感じているのは…なんというか極淡い恋心が感じられてすごくいいです。
ぶつかったのがドラマの子役なのはみえみえでしたが、逆に自然でよかったです。
未成年だけで泊まれるでしょうか?保証人は?あ、宿帳に18と…見た感じが大人っぽいですし、こういうのは旅館側にとっては実に難しいケースですね。
ここでは大人の正しい対応もちゃんと子供に見せるべきと僕は思うのですが、このほうが子供にはわかりやすいでしょう。
「あたしにまかせて」って任せるのが、今回は間違いだったのでは?
「どこまでついてくる気?」は苦笑しました。しっかりのぞき?
というかこの確認自体、彼女のやり方は…ちゃんと確認しようとするより悪いのでは?
転んで確認するというのは結果オーライですが…あ、ここでちゃんとおばあちゃんが対応しようとはしているんですね。
おばあちゃんに任せていればよかったのに…そして身の上話から、これどこまで本当なんでしょうね。演技派ですし。
形見の紅水晶…これにもどんな話が隠れているのやら。
そしてここからのなるかちゃんのわがままは見ていてちょっと気持ちよくなります。いつもそんな感じなのでしょうね…
逆に幽霊のことで弱みを握られて…紅水晶まで、ここはさすがに怒りを感じます。人を支配し踏みにじることが当たり前の世界にいるんだろうな、と思うことはできますが…やはり不快感のほうが大きいです。
確かに強力な助っ人ですね、これは…一目見て「これはあなたの手におえないわね」と察するのは見事な賢明さです。
確かに彼女の見た目と、実際の頭のよさとのギャップはすごいです。
「人の友だちけなさないで!」という言葉はカッコいいです。「この子こそ頭がよろしくない」も…
この華やかさがすごく素敵で、「ネイルおそろいにしようってば!!」というのも可愛い!
なんというか等身大の女の子三人組という感じです。
そして写メールを撮られ、さらに紅水晶も…どういうことになるのでしょう。なるかちゃんからさらに悪意の誰かに取られたらもう取り返しがつかないのですが…
結構スリリングです。

プチっと!てのりくま
運動会とは懐かしいです。
努力が一瞬でパーになるのは…まあ秋山くんの言葉の通りです。僕は何かあったら大抵もっと悲惨なことを考えるようにしています。
お互い「あっちがあやまらないなら」で意地になってとりかえしがつかなくなることもありますね。秋山くんの言葉は間違った言葉ではない、ただ彼女の感情をちゃんと受け止めていないだけなので謝るのは難しいのですが…
自分が道徳的・論理的に間違っていなくいても謝らなければならない、というのは実際難しいですよ。
「コレをこわせ!」というのはなんというかうまいです。

大人にナッツー
いきなり英語で話すのはびっくりしました。キスも驚かない…海外経験あるのでしょうか?
「このまえあたしのこと好きって」という嫉妬がまた可愛い!
モデルでSPもついているというのはいろいろスケールが大きいですね。
この水着姿は…なんというかすごい個人差ですね。
「ビキニ着られるようになってから」は苦笑しました。
それで大人に変身して…というかこのナッツ、中間がないのが残念ですね。胸だけ少し大きくするとか。
ここからの恥ずかしい展開は見ていて実に楽しいです!
水着が破れるのも楽しいです。
水中でケンカするのも何かと楽しいです。ばたばた身振りで…最高。
棗くんがなぜ怒っているのかわからない…といっても棗くんも無謀なことをしますね。女の子をこういう形で利用するのは危険ですよ。
「じゃあ結婚しよう」という話まで飛ぶのが子供らしくていいですね。
メイド姿は…作者が楽しんでますね。うまくやったものです。
女が男をお姫さま抱っこして逃げるのもいい絵面です。
「さっきの告白がもう一回」と、もう優位に戻った…と思ったら「好きな人としかしないんだよね」と言ってのキス、これはやられました!やはり女の子にはかないません。

空に君に
 巴音ちゃんは陸上部だけど早い遅い以前にスタートが苦手で、ほとんど人としゃべることもできない。
 そんな彼女が見ているのはエースの一戸瑠璃くん…誘われたとき、必死でがんばっている一戸くんの姿を見てどうしようもなくひかれた。
 彼が嫌っている、「瑠璃」という名前をほめたことがきっかけで終わってからも一緒に練習をするようになり、仲良くなっていくけれどそのオーバーワークで、大会を前に彼は怪我を…
やはりすごく素敵です。
肌の質感が結構ありますね。
しゃべんないからなんで陸上部、というのはちょっと論理的ではない気がします。放送部とかだったらしゃべれなければ無理ですが、個人プレーの陸上部なら…速ければいいのです。でも気分として、「ここにいて欲しくない」という気持ちをそんな言葉にしているだけなのでしょう。
回想はすごく彼の強さが伝わってきます。
ぶつかるシーン前後の、小さめの頭身がすごく可愛いですね。
瑠璃という名前のことで彼が怒って、そして「瑠璃色――すき」という言葉から…ここはなんとも言えずいい味を出しています。
いきなり彼がこうしてかまってきてくれて、そのなんともいえない嬉しさと気恥ずかしさもよく画面から伝わってきます。
「なにやってもダメだから」モードも気持ちはわかります。彼みたいにまっすぐな人はそれに怒りを感じることも多いのですが、彼は怒らず忍耐強くつきあってくれる…この優しさと強さがすごく素敵です。弱さをわかる強さなんでしょうね…
肩に手をかけられて落ち着く、というのもいいですね。体から心をコントロールしていくのが、すごく…心が通い合っているという気がします。
だから前にスタートする瞬間の気持ちよさがすごく強く伝わって、衝撃的なぐらいです。
二人がすごく親しくなっているというのも、さりげないシーンの集まりで伝わってきます。
秋の空が瑠璃色…というのも心地いいです。
あまり色を感じないタッチなのが、いきなり色がついたようです。
大会に出てみようか、と嬉しい知らせと彼の怪我の知らせ…逃げたのをぱっと捕まえてくれる、そして寝たふりしてまた捕まえてくれるのがすごく素敵です。
決して逃げない彼の強さ、巴音ちゃんの臆病さを決して責めない…自分はまっすぐ前進する強さが巴音ちゃんに伝わっていく…
そしてせめてできることをとテーピングを学んで、そして「ゴールで待ってて」…
ここは画面構成も素晴らしいです。
そして告白もすごくさわやかで、空の瑠璃色がしっかり伝わってきます。
抱き合うシーンも…なんというか堰を切ったように彼の思いの強さが伝わってきます。
逆に彼がゴールで待っていてくれるというのも…
あとこの作品って読み返すと、彼の思いの強さ、暖かさがものすごく伝わってきます。断片的にしか描かれていない、二人でかわらでの練習のシーンからすごく思いが伝わってくるんですよ。
なんともいえない魅力に満ちていて、伝える力が素晴らしくて…すごく次回作が楽しみです。どんな作品になるでしょう。

ヒロインになりたいっ!
 柔道道場の娘でとても強い桃花ちゃんは、幼馴染で小さい頃から大の戦隊ものファンの赤石連次くんのヒロインになりたいと思っている…でも彼はヒロインじゃなく敵役か仲間としか思っていない。
 ある日、彼がヒロイン役にそっくりな女の子を助けてヒロイン扱いする。
 落ち込んで逃げたのを道場の青山くんが「ぼくのヒロインなんです」と追ってくるけど、そこで連次たちが不良につかまって…

いや〜、このばかばかしいのに変に暑い作風にますます磨きがかかってきました。
絵の硬さもうまく作風になっていますね。…残念ながら柔道のシーンはあまりに動きがなさすぎますが…
「電撃戦隊シビレンジャー」の名前やコスチュームもしっかりできています。結構戦隊もの好きですね。僕も小さい頃は見ていましたが、今はあまり覚えていません。
いきなり豪快にドアが飛んできたのはびっくりしました。
この年になってシビレンジャー、とも思いますが中学当時の僕はもっと幼かったので人のことは言えません。
「主題歌を歌うな!!」は…なんだか見ていて昔の自分のようでいたたまれないです。
誰一人この年になって、というツッコミがないのが不思議です。
青山くんの終始変わらない悲惨さがまた面白いですね。
「連次にとってのヒロインになりたい」という終始変わらない切なさがしっかりあるのがいいですね。
ヒーローと一緒に戦う女の子…戦隊もののパターンでは最後にくっつく率はどれぐらいでしょうか?
妙にコスチュームやきめポーズがしっかりしているのがまた面白いです。
ヒロインのピンチ、と飛び出していけるのはいろいろな意味でうらやましいです。
シビレンジャーの五人とは別にヒロインがいる…どういうストーリーでしょう。
いきなり投げるって…あの〜、コンクリートで投げるのは刀で切りつけたり拳銃で撃ったりするのと同じですよ。
百花ちゃんが落ち込んでいたりすると、隣にシビレピンクが同じポーズでいるのがまたなんと言うか面白いです。
青山くんのクサイ台詞がまたすごくいいです。彼の隣にもシビレクールがいるのもわかってますね。
中原みなみ…色はついていない、五人に入る気はないようですね。
そして自分は弱いとか女の子らしさをアピールしながら…次々と投げていくのが、この動きのなさはわざとでしょうか?
師範まで投げられているのは笑えました。
青山くんが結構動いてくれたのがなんだか嬉しいです。ブルーはここまで熱いでしょうか?
「ぼくのヒロインなんです」はたいていの女の子は落ちますね…
「きょうこそオセロ大会つきあってもらうぜ」というセコさがまた面白いです。
「ふつうポーズ決めてるときは待つだろ」「ふつうはポーズきめないだろ」は爆笑!というかこんな形で押さえても、前の男の頭に膝蹴りして体を前に倒せばいいのですが。
「177に電話を」というのも見事なまでに間を抜けさせてくれます。
「あたしはやっぱりヒロインにはなれないや」はすごく強い印象があります。
ヒーローキックが本当に効いてしまうのも意外とカッコよかったです。
そしていきなりのお姫さま抱っこ…これはなんだか熱くなりました。
「きょうはこれぐらいで」ってつきあいのいい不良ですね。
で、大好きと投げてしまうオチも何かと楽しいです。
ずいぶん作風が固まってきたようで、それがどんどん発展するか思い切ってぶち壊すか、どちらにしてもすごく楽しみです。

君はワンドル!
とうとう最終回ですか…お疲れ様でした。
間違えているというか成功しているということは正しいのでは?
ナンバー1お笑い犬ならそれはそれで。
着ぐるみはすごいですが…みうきちゃんも結構優秀なんですね。
いきなりチュビルバーグ監督、っていいですねこの開き直ったパロディ!
ハリボテと…もう怖いものなしですね。
帰ってこないという予感も寂しそうですが…こういうさりげない伝え方の上手さはさすがです。
犬が英語をしゃべるというのは…犬同士は育てられた人の言語が違っても問題ないのでしょうか?それとも国ごとに、犬にも文化のようなものはあるのでしょうか?
ハンバーガーを犬に食わせるのはきついでしょう。
マカデミー賞というのもペースが速いですね。
主演男優賞を放り出してというのもすごいスケールです。
暖かいラストにオチもすごくきれいで…単行本が楽しみです。次回作はどんな作品でしょう。

ツインズ・ミッション☆
 探偵事務所の娘で双子の姉妹、妹のすずなは成績優秀で人望もある、でも姉のなずなは格闘技の名手でケンカ三昧。
 ある日ある富豪に子供の護衛を頼まれ、二人でやることになるが…

冒頭の双子の強調の仕方がすごいです。
どちらかを指定するのってやるほうも面倒でしょうね。
すごく対照的ですね…というか逆に逆恨みが妹のほうを襲ってしまうことはないのでしょうか?
二階からぽんと飛び降りるのはすごく気持ちよかったです。しかしそれに平気でついていくとは…すずなちゃんの度胸と運動能力もすごいですね。
「すずなみたいになりたいよ」と、最初からテーマがしっかり出ているのもわかりやすいです。ここのすずなちゃんの表情もすごく魅力的ですよ。
いきなりのアクションシーンも実にカッコいい!すごく力強いです。
パソコンで瞬時に盗難車を突き止め通報するというネット能力もすごいです。
「ホームズにあこがれるバカな40歳」というのがまたすごく面白い!こんなバカな生き方できたら最高に幸せでしょう。…ポアロやマーロウじゃなくてよかった…
「おまえはだいじなことが」と、差別して傷つける恐れより真実を優先するのも探偵らしいというかすごい父親ですね。普通双子の親は差別してしまうのを恐れていろいろ出せなかったりするものですが。
すずなちゃんの「なずなちゃんならきっと」というほわっとした笑顔もすごく魅力的です。全体の、髪や衣服の柔らかさも伝わってくるようです。
「すずなみたいに」を繰り返し、失敗ばかりなのがいろいろ…
そしてボールをとりに行った一瞬の隙に、これは確かに弁解の余地はないですね。
もちろん真相は、僕は初読時はわかりませんでした。
発信機をつけているとは…見事な。
あの失敗は弁解の余地がないので、いじける気持ちもすごくわかります。
そして犬の反応から真相に気づくのは実に…ここからの解決編の爽快感は素晴らしいです。
このナイフはランボー3の縮小版でしょうか。実に見事なデザインです。長さもちょうどよく無駄に鋸刃をつけていないのもわかっていますし、グリップは質感を見た感じでは一体のFRP隙間なし、指をどこに乗せるかもよく計算されている…実用性もランボー3そのもの以上、欠点を全部除いたようなすばらしい作品です。冗談抜きに売られていたら欲しいですよ。
グリップもしっかりしていますし、それを払いのける動きも見事!
双子を活かして入れ替わっていた、という真相も見事でした。ココの不適な二人の表情もすごく魅力的です。
なずなちゃんの「かってにしっとして」と自分を見ることができる力もすごいですし…互いに自分にしかできないことをやる、それが…だいじなこと、でしたか。
メッセージもすごく素敵です。誰もが自分が持っていないものを嘆き嫉妬するのではなく、自分が持っているものを活かせばいい、全能でなくてもいい、人間はそれぞれいろいろな役割を果たして助け合えばいい…
すごく素敵な作品でした。二人の魅力もすごいですし、ぜひ続編を読んでみたいです。ルリタニアテーマのような思いっきり華やかなものでも、余韻のある人情ものも…
他の作品でも今回出た魅力がもっと活きてきたら、と思うとすごく楽しみです。

放課後はロッキン!
 中学のときのバンドで裏切られ、ギターは好きだけどそれが心の傷になっている真希ちゃんが、クラスメートの悠が置いていたギターをいじったのをきっかけに彼のバンド、ムジカに誘われた。断ったけどそのはずみでギターが壊れ、半ば脅されるように引き入れられた。
 バンド自体は楽しいけれど、やはり前の傷が深く…そんなとき、ムジカの前のギタリストが現れて…

傷の深さがすごく丁寧に描かれていて、情熱がよく伝わってきます。
あっさりしたやや辛口の味わいもいいですね。
十年後の自分が何をしているか…これって誰にとってもすごく大切ですよね。
ポッキーで×サインを出すのはうまい。
読み返してみると、ギターがおきっぱなしなのは「ひとりでギターひいてるほうが」という言葉を聞いてわざとかも、と思ってにやっとしてしまいます。
そしていきなり手を握るのも…読み返すと意味はわかりますけど、初読時にはびっくりしました。
ギターを壊して弱み、というのも、他にもいろいろ伏線がしっかり整備されていて読み返すと上手い。
この双子の仲間もすごくいいキャラです。
練習シーンからは楽しい音がすごくさわやかに立ち上ってきて、読むのがすごく楽しいです。
うらぎられたらいや、というのもため息が出ます。
でもすごく真剣に練習しているのも…それでいて仲間を信じていないのも、一人で練習しているのを見つけられて「練習つきあってくれる?」という流れからすごくよく見えてきます。
少しずつ心が通い合っていくところが、一つ一つの言葉がしっかり練られていてとても心地よく伝わります。
だから前のムジカのギターの登場にインパクトがあり、また裏切られたという痛みもすごく強くなるんですよね…ここでは彼女が、他のムジカのみんなの話を聞いていないのですが。
「傷つきたくないって思っちゃいけないの?」という言葉もすごくわかります。
悲しく一人で弾くシーンも、すごく痛みが伝わってきます。
バンドの演奏シーンにつながる流れもまたすごく熱くて、パワーありますよ。
このパワーが次回作ではどう出てくるか、今から楽しみです。

メガネ王子
今回はもう…やりたいことをとことんやった、という感じですね。
メガネ執事喫茶…いっそ大量の酒を一気に飲むか、動けなくなるまで縄跳びやるかしたいです。
勝手に部屋に忍び込んで衣装を変える…すごい器用さと行動力。
みんなにもメガネ萌えがわかってしまう、というミスは苦笑するしかありません。
こっちはメイドカフェですか…今、本当にあちこちの文化祭でこんな光景が?…考えたくありません、あまり。
友哉くんの女装は…体の違和感が見事に出ています。
模擬店コンテストのために超がんばる、とそのまま突っ走ればよかったのですが。
ござる弁が受けてしまっているというのがまた面白いです。
狙いは副賞の打ち上げ代…未成年飲酒禁止は忘れずに。
やはり気になって偵察してしまって、このバカは見ていてすごく力が抜けて楽しめます。
「友哉…いますぐ着がえなさい」のなんともいえない迫力はすごいです。
ついたてが倒れて、別の面でも喜ばせてしまったのは力が抜けるを通り越して…
幸ちゃんがもうすっかり…カップルのことを忘れて、目先のことしか考えていないのはなんともいえない気持ちになります。
たこ焼きを二人で食べるのはすごく素敵なシーンでしたが。
ただ先輩に近づきたい…それだけの思い…それを思うとすごく切なくなります。昔の自分もそうでしたし…
結局ミスも逃してしまって…何がしたかったのやら、とさえ思いますが、中学生の頃の僕ならわかると泣きじゃくったでしょう。
「これオレのなんで」は強烈でしたね。
そしていきなりの膝枕サービス!なんというか…
結局まぜろ、と飛び込む女子クラスメートのほうがわかっているような気がします。

かみちゃまかりんchu
あらすじはいまだに流用なんですね。それとも鈴音ちゃんも出てくる予定があるのでしょうか?
冒頭では、ちゃんと彼氏の義務は果たしているように見えます。
神くんがクラスメートというのはわかってましたが過激ですよね…。
そしていきなり抱きついてくる、これはもう…女子全員敵に回してますね。さらにずっとおんぶというのは…
で、「オレは花鈴の…」で同窓生といってしまったのは、豪快にハイキックからアイアンドライバーを決めてしまいたくなりました。最低。
「同窓生はだまってろよ」といわれたらそりゃどうしようもないですね。
そして…当然スクープ…ははは。学校で問題にはならないのでしょうか?
ミッチーの言うとおり、悪いのは和音です。
このデモ隊は爆笑しました。こんなエネルギーがあるなら軌道エレベーター・宇宙太陽光発電推進やベーシックインカムのデモに繰り出して欲しいですよ。
和音くんの女装は…まあそれくらい仕方ないと。
「つぎは…同窓生なんていわないからな…」はどこまで信用できるやら。
一緒に寝てもいいじゃないですか。
わざわざ道着姿で彼氏の、と言いに来るとは…まあせめて男は見せましたね。
花鈴ちゃんが二人まとめて蹴り倒すのは…まったくかたなしです。
女神と呼ぶ理由…何か知っているのか…彼も知ることになるんでしょうか?
そして、花鈴ちゃんが女子を敵に回していることには違いない…このオチは苦笑させます。
これからもシリーズは続くのでしょうか?新しい戦いも?

カレ、時々おにいちゃん。
 父を病気で失い、母と暮らしている恵美ちゃんはバスで見るだけの男の子に、意外なところで会ってしまった…新しいパパ候補の息子だった。
 だから、彼のことを好きだなどといったらママはきっと結婚をやめてしまう、そうしたらママが幸せになれない…
 でも翌日から、彼がかなり積極的にモーションをかけてきて、罪悪に惑いながらも流されていく…

雰囲気がすごく素敵でした。
バスなどで見るだけの、名前も知らない人…難しいですよね。
母子家庭の明るい感じもよく描けていますね。
男からのメールを見たらまあ先は読めました。でも落ち着いた感じがすごくいいですね。
「むしろ大賛成だよ」という言葉のさりげなさがすごく優しい感じがします。ちょうどできている、おいしそうな煮物みたいに。
ちゃんとした格好で出かけるというのは子供にとってすごく緊張することです。その感じがよく伝わってきますね。
向こうから「バスの子だ」というのが、彼も同じようにバスで見るだけの子と思っていたことがまっすぐ伝わってきます。失礼な言動ではありますが。
隆司おぼろげというのがひどいですね。
兄妹になったら…というかこの場合法的・道徳的にはどうなのでしょう。少女漫画ではこのケースは重要パターンなので、当然のように認められると思っていましたが…
でも「亮くんのこと好きなんだって言ったら」と考えて自分の思いを抑える決心をする…本来それが当然の、自然な心の流れですよね。
いきなりの「ずっと気になってたから」という告白、デートの誘いも、本当は夢に見ていた以上の話だったのに…その嬉しさも伝わってきます。
彼女のつつましい性格と、それをしっかりリードする亮くんの組み合わせもすごくいいカップルですし。
「そんな顔で「どこへでも」とかいうとへんなトコつれてっちゃうよ?」という台詞がすごく力があります。そして「さらっちゃお」という言葉も!
とにかく少しでもそばにいたい、という彼の強い思い、そして抑えたい彼女の気持ち、どちらもすごくわかります。
プロポーズされたのを笑顔で…もうこれは嘘の笑顔なんですがね…読み返してみるとどちらも嘘をついているのが切ないです。
「これであたしたち兄妹だね」という言葉…その深さに驚きます。それにどれほど多くの言葉がこもっているか、あまりに切ないです。
バスで隣同士、寝てしまったのを…さりげなく自然にキス…ここも切なくて素敵でした。罪悪感の甘ささえ伝わってきます。
そしてもしこのまま、本当に結婚が進んでしまったら…どうしていたのでしょう。
母が飲みながら「ママことわっちゃった」というのは驚きました。もしかしたら恵美ちゃんの気持ちを察して、もあったのかもしれない…そう思うと切なくもなります。
「パパのこと忘れられない」も本音でしょうが…
そして、母に…全部打ち明けたのでしょうか?そして母は何と答えたのか…そこをあえて描かないというのも素晴らしいです。
待っていてくれる亮くんと、迷わず飛び込んでいく恵美ちゃん…二人の情熱と心の豊かさがすごく伝わってきて、たまりませんでした。
作風がすごくしっかりできてきていますね。冬の号ではどんな作品か、今から楽しみです。

親切な小人
靴屋の小人の話を見て、宿題やって欲しいと思うアサミちゃんに、本当に小人が来てやってくれた。
別クラスの橋本さんのところにも来ているらしい、なんて便利なんだろう…と思うけど、少しずつ友達といるところにも小人たちが出てくるようになり、怖いと感じることが…

デビュー作やその次の終わり方から、どんな終わり方をするか見えない…すごくスリルのある駆け引きを楽しめる作家になってくれています。
絵の可愛らしさと不気味さのバランスもますますよくなっていますし、すごく成長が大きいですね。
冒頭は小さい子の素直な願望がすごくよくわかります。
「ごほうびくれっておかしとられちゃったよ」と、カナちゃんがいい対照になっているのもわかりやすいです。
すぐ面倒くさくなって投げ出してしまうのもわかります。僕も本質的にはそういう人ですから…でも僕が勤勉に思いついたことを想像で満足せずに実行してしまう性格だったら、それはそれで大変だったでしょうけど…とんでもない機械や武器ばかり作っていたはず…
夢と思った小人が陰影でごまかされているうちは可愛い、それがだんだん不気味に見えてくるというのが実に上手いです。
そう…小人、妖精というのは…日本ではドイルやディズニーなど、近代人のイメージで極端に子供向けにされ、毒を抜かれたものばかり見ています。でも本来の妖精物語は…そう、妖精と言うより妖怪としたほうがいいんですよ。
ただ悪ばかりではないし善ばかりでもない、中立ともいえない…自然と同様に人間語の善悪とは無関係な、妖精であるとしか言いようがない存在です。
秘密を共有する友達ができた…ここの彼女のぺらぺらしゃべる性格も面白いですね。
報酬なしでいい、というのは二人とも知らないとはいえ…僕はよく知っているんです、皿に新鮮なミルクを一杯入れて出しておけ、と。この二人にもそういってやりたいですけどね。
あれもこれもなんでも頼める、という便利さにおぼれるところも、アイテムの可愛らしさと共にすごくよく描けています。その気持ちよさはわかりますよ。
友達と一緒にいるときに、さりげなく小人の邪悪な妖魔としての面が出てくるのがうまい…だんだんと不気味のほうが強まってくるのが。
鍵をかけてもやってきて、彼女の本能の部分は小人の邪悪な面に気づいて怖くなってくる、ここもよく伝わってきます。
ああ、ちなみに来て欲しくなければ鉄・十字架…蹄鉄や開いた鋏をかけておけばいいのです。教会から聖水をもらって清めるのもいいです。多分日本神道の魔除けもある程度通じるでしょう。
ここで、せめてと自分でクッキーを作って…これが明暗を分けるのも、自分でちゃんとやるというメッセージをしっかり強調してくれていいです。
小人の顔が始めてアップで出て、その不気味さに驚いた読者もいると思います。僕には目とか口とかも含めは納得できますし、いろいろなファンタジーの挿絵を踏まえてうまく描けていると思います。
そしてクッキーを褒美だと持っていってくれて助かった…それで読書感想文を描き上げていい話だな、で終わると思ったら橋本さんが…見事などんでん返しです。
あ、オリジナルの「靴屋の小人」で服や靴を作ってあげたら小人がこなくなったことには別の解釈を読んだこともあります。裸=無垢である小人が服=文明を身につけたことで魔力を失う、というエデンの園の話ともつながる解釈で、かなり広い神話民話に当てはまります。でも靴屋夫婦の勤勉さと感謝の心があったからこそハッピーエンドになったことも確かでしょう。
というか医者とか親とかはどうしたのでしょう。というか歩けるのでしょうか、失明しておらず?呼吸とかは…まあツッコむこともないですね。
のっぺらぼう姿の不気味さも見事なものです。
メッセージがしっかりしており、二重三重のどんでん返しもうまくて実にいい作品でした。妖精に関する知識もしっかりあるのが伝わってきたのも嬉しいです。
これからもこの調子でどんどんやってほしいです。期待しています!

スマイルマン
 笑うことが苦手なエリカちゃん。小さい頃に幼稚園の劇で笑おうとしたら気持ち悪いと男の子に言われてもっとひどくなった。
 成長してもそのままだったが、なかじまが「スマイルマン」というスマイルマークを描いてくれて励ましたり、友達といっしょに笑顔の特訓に協力してくれたりするので一生懸命がんばるけど、なかじまがあの男の子だったということを知って…
すごく難しい作品だったと思いますが、みごとにやってくれました。
つんとした冷たい無表情と、顔の線や服の質感の不思議な柔らかさがうまく調和して不思議な魅力を作ってくれます。
それがだんだんと、ごくわずかずつ変わっていくところがものすごい!すごく苦労したと思います。
なかじまくんの明るい口説きに「むかしのことなんて」って、この時点でこいつが犯人だというのはわかりましたけどね。
椅子で殴り倒すというのも…本当にやると人殺せる凶器です。
無表情にもいろいろ段階があるのが作者の苦心を忍ばせます。「どうもありがとう」の時のより厳しい表情、スマイルマンを見たときのほころびそうな表情…
心の中はこうだとは…別に無表情でも手紙で伝えればいいのでは?
友達二人もすごく明るくていい子ですね。
おもしろいものをみて笑おう作戦…協力してくれた男子も大変ですね。
屋上で練習しようとして、笑おうとして「気持ちわるいよ」という言葉が縛ってしまう…でも、人は自分を縛る鎖にしがみつくことのほうが多いです。
いきなり抱きしめるのはびっくりしました!
笑う顔の絵を描くと自分も笑顔になる、というのは体験談でもあるのでしょうか?実際にありそうなことです。
それを練習していて、まだ無表情ではありますがすごく笑顔に近づいているのがつくづくすごいです。
ここで真相を知ってしまって…泣くことはできるんですね…
黒板にばかでかく書いているとかノートに一つ一つ…結構怒る方向は表情あるじゃないですか。
「ワタシハなかじまくんでは」というのがまたバカでいいですね。
ずっと練習していた…という思いの深さにやっと出てくる笑顔、それがすごく素敵でした。
本当に大胆な題材が描ける人です。これからも迷わずどんどん行ってください!信じています。

眠れぬ姫に君
 まつりちゃんは失恋がきっかけで不眠四日目。無口なだけ、何考えてるかよくわかんない、いっしょにいるとつかれるとえらい言われようだった…とにかく何もいえない性格なので。
 いきなり階段から落ちてきた隣のクラスの遅刻魔、山吹くんにぶつかられ、そのお詫びに何としても眠らせてみせる、と彼はいろいろしてくれる…そして失恋のことがばれて励まされ、山吹くんはまつりちゃんの前の彼氏に勝負を挑んで…

未熟さが目立ちますが服の質感など柔らかさもあり、すごくわかりやすくてこれからが楽しみな作風です。もうしばらく、たくさん描いて熟成させたらさぞいい味になるでしょう。
いきなりの失恋、非常にわかりやすいですね…静かだからおしとやかで清楚、とは男の勘違いはすごいものです。まあ女もそんな違わないでしょうけど。所詮恋など、両方が自分の中に人形作ってそれに…
不眠症なら薬で寝るのも選択肢に入れたらどうでしょう?
あいちゃんみたいに強ければいいのでしょうが。
いきなり階段から激突にはびっくりしました。お見事。
土下座するのもわかります…一応男ですね。
「眠らせてみせます」というのもすごい宣言ですね。
いらない、というのもいえないのが苦笑します。ある意味自業自得。
花の香り…というか花に包まれるのはオフィーリアかアストラットのエレインか…
「オレがそい寝します」が爆発しました!眠れるわけないじゃないですか…
逃げたのをあっさり「足速いですねー」と追いついているのが実に面白いリズムです。
つきあってからも…そんなものでしょうね。互いに幻想が強いから…だから初恋は実らない、と。
「できないじゃなくてするんだよ」という言葉はすごく素敵でした。だいじょうぶ、と暗示をかけるのも強いですね。
前の彼氏、悪い人ではないんですよね、全然。心配してくれていますし。ただ思ったとおりガンガン言うだけで。
普通に新しい彼女いますし。
山吹くんがいきなり勝負を挑むのはすごくカッコよかったです!
この服のハンデをものともしない速さはすごいです。
「オレがかっこいいということを!!」には大笑いでした。
そして「オレはいらないかな」となってしまい、そこからが素晴らしかったです!階段で待ち受けていいたいこと全部言って…その迫力が見事でした。
また階段…文字通り、落ちなのもたまらないです。
このまま丸一日寝てしまったのでしょうか?
いや〜すごく楽しめました。絵などはこれからいくらでも伸びるでしょうし、このわかりやすさと会話の楽しさをしっかり伸ばして、いろいろ挑戦して欲しいです。

恋イロニvキス
 愛ちゃんは中等部からおべんとうをたかりに来る、年下の幼馴染、悠斗に恋している。
 彼は愛ちゃんの同級生、加奈さんをはじめ女の子には人気があるらしくなんだか告白できない。
 ある日、彼が遠くのスポーツ名門校に進学すると聞いてショックを受ける。それで彼の分の弁当も作ってきたといえず、余計に食べて気持ち悪くなる…

すごく濃い、強い味のする絵にびっくりしました。
お弁当も美味しそうですね。
男の絵が極端に女と違うのも驚きました。「なかよし」は男女の描き分けがやや弱い子とが多いので…でも逆にすごく画面がリアルでいいですね。
「否定しないんだ」というのがなんか可愛いです。
「いまはまだ」というのはずっとということですよ、経験者としては。
水が散る感じもすごく上手いです。
ファッション誌は…男子から見ればグラビア誌にも見えるでしょうね。まあ政治家から見れば『プレイボーイ(英語版)』はかなり過激な思想雑誌ですが。
ここでの二人の会話、すごく好きです。
高校が別れてしまうというのも…ため息が出ます、現状維持の結果はこうなんですよね…
「あぶねーからはなれて歩くんじゃねーよ」と、僕も一度でいいから言いたかったです。
男がずるい?多分彼も…それ以上に女ってずるいと思っていますよ。
優しく見守っている母親の目も素敵です。傷の痛みと濃いの痛みがつながるのもすごく伝わりますよ。
弁当の件を言い出せなくて一人で食べてしまうのは…
カバンを開けるのはかなり過激ですね。ビニール袋の一つや二つカバンに入っていないのでしょうか?
抱き寄せて「よっかかっとけ」というのはすごい!
「女できたら」という言葉はあまりにも直裁で…
「せーせーするだけだっ」という言葉の表情の切なさはあまりに強烈でした。好きで好きで仕方がない、というのがこれでもかとばかりに積み重ねられていて…
この寝坊、よほど前日眠れなかったのでしょうね…
ゼリーを作ってくれたのはあまりにも優しいです、というかこの母親…
屋上に飛んでいくシーンも、細かな情景を写真のように使うのがまたうまい。
寝ていると思っての「好き」には息を呑みました。
「この傷が」といって傷をなめるのがすごく色気ありましたね。濃厚なキスシーンも強烈でしたが。
この大人っぽい熱さがもっと熟成されたらどうなるのでしょう…とにかくたくさん出番があって、自分らしくない作品にもチャレンジして作風を磨いて熟成して欲しいです。本当はどんなに素敵な味なのか、もっともっと!

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