なかよし2005年夏ラブリー感想

例年の夏増刊のようにエロに走らず、丁寧に熱く青春を描いた作品が多かったのはとてもよかったです。
極端な輝きはないけど噛むとうまみが出るような粒ぞろいの真珠、といった感じでしょうか。

ココア!(柏木志保)♂のコのヒミツ(川村美香)ドッキン!合宿中(神崎裕)私立モテスギ学園(恵月ひまわり)初キスちょーだい!(おおうちえいこ)先生、こっち見て!(春瀬サク)キラキラ!(水沢友希)ジンクスChu意報!?(姫宮ユイゴ)ひどい男(水上航)キッチンのお姫さま番外編(安藤なつみ/小林深雪)かみちゃまかりん番外編(コゲどんぼ)私立ヤバスギ学園(恵月ひまわり)ひまわり郵便(山名沢湖)プルーンケーキ(水無月真)最強のF(明日賀じゅん)白い雲夏の空(ゆみみ)ラブじゅうにさい。(咲良あさみ)金魚姫(永遠幸)wish(征海未亜)Cheer up恋モード(まづる凛)

ココア!
人気モデルの柚木地緒にひきずりこまれてモデルをやっているつばめちゃん、今回は南の島で海外ロケ!でも地緒を意識し過ぎ、恋する女の子の雰囲気が出せずに撮影は難航。さらに地緒と噂になっている人気アーティストのリーシャに「柚木くんも妹ができたみたいで」と言われ、落ち込んでいる彼女をデザイナー兼カメラマンというかプロデューサー(二十五歳、当然美形)の上杉さんが口説くけど…
いいなあ、こういう自覚的に踏み台になってやるお兄さん!すごく好きです。
しかしちょっと話の展開が早いような。このシリーズはもっと続くのでしょうか?
カラーページから、すごく表情が豊かになっています。急速に成長していますね。
特に「人生なにが起こるか」とリラックスしているところなんかすごくいい。
結構彼女、人気あるんですね。だったらもう隠すことないような気もしますが。特に学校側には。
ぼーちゃんは相変わらずですね。彼の活躍ももっと見たいです。
三人ですごく楽しんでいるのは、その意外さが伝わってきます。「ほんやくマシーン」は笑えました。
地緒くんがクォーターというのを隠しているのは差別を恐れてでしょうか?
知りたくなる、という心の動きもいいですね。
触れてしまうとやはり意識してしまう、そこで…こらこら地緒、この反応の意味ぐらいわかれって。さてはおぬし、それほど女性経験ないな?上杉さんにも底見抜かれてますよ。
ここで上杉さんが、ごく自然に話にはいってくるのもうまい。
「これくらいは予定のうち」というのは…率直というか冷酷というか。
リーシャのひっかきまわしはびっくりしました。「妹」発言のときの彼女の表情はちょっと邪悪ですが…どうでしょうね。
「芸能人は日本じゅう〜」って、日本以外でもレポーターは追います。今のつばめちゃんもマークされていると思ったほうがいいでしょうね。
ふっと二人のことを思ってしまって憂鬱になるつばめちゃんの描写、そして走り込みを欠かしていない地緒くんの姿、うまい対照です。
それで日焼けは…それを昨日のうちに注意しておかなかったスタッフのミスでは。彼女をプロとして扱うこと自体が。
本当はリーシャが、という噂で追いつめるのもうまい。
そこで上杉さんの登場、これはもう僕にとっては最高においしい展開でした。
「きれいだね」と鳥肌が立ちそうな言葉、そして徹底的にほめて自信を持たせる…これは子供にはできない芸当です。
「自分の気持ちにやっと気づいたみたいだね」はもう、やはりこういうことだったのかとすごく嬉しかったです。
ここからの豊かな感情表現も、地緒くんの暖かな愛情も…すごく素敵です。
いきなりキスにはびっくりしました。で…これはその先に行ったと考えるほうが自然なのですが…
上杉さんの撮影はすごくよかったのですが、「ごめんなつばめ」というのが気になります。

♂のコのヒミツ
男の子に紹介してもらうチャンス、でもどう話していいかわからないから男の子について知っておきたい、だから千夏ちゃんに、双子の弟と入れ替わって男の子の生態を探ってと!本当にやってしまったら、いきなり合コンに行く羽目に。
盲点と言っていい視点です。さすが。
男子にとって女子は、まるで別の国のようなものでした。逆もまた真なのでしょう。あ、そう…これ、男女逆の話も成立しそうですね。
冒頭の女子たちの焦りがうまく描かれているのもリアルでいいです。
下剤というのはひどいというかなんというか。
すごく勇気を出しているのもよく伝わってきます。みんなに加わるとき、しっぽ振ってたりするのが芸が細かいですね。
合コンのイメージは、僕も経験がないのであまり変わりません。
「おじけづいたんじゃなかろーね」というのは実際男子が示す反応です。もっと大人になったらこのノリで風俗に突入したりするのでしょうか。
女の子も個性がはっきりしていて素敵です。
陽くんの優しさも、ここから恋心+下手に意識すると変装している以上ホモっぽくなる、とおいしいことになりそうで、期待しました。もう一つ、女の子に惚れられても期待できる展開です。
カラオケはいきなり強烈なのがきましたね。でも女の子引いてますよ?まあ受けているから結果オーライですが…僕はカラオケ入ったらまず「愛と死の輪舞」「心の翼」を連発しますから、もっと引かれますけど。昔はカラオケに宝塚の曲はありませんでしたが、最近はかなりあるようになったから機械を止める必要はなさそうですが。
タイプをリサーチするのはいいですね。男子に話を会わせるのもうまい。
それだけで終わらず、次の印象が出てくるのもいいですね。
「女子全員からホッペにキス」というのも、眉をひそめたくなりますが盛り上げるにはいいです。
ひろくんの真剣さは見ていて可愛い、脇役も大切にしているのがいいですね。
和志くんの「いつもの歌」でばれそうになるのも、もしかしたら陽くん気づいているのかな、と思わせ、あとデュエットもうまく盛り上げています。
女の子に誘われて困るのも期待通り。人をトイレに誘うのは、実は女子の習性です…男子が男子を誘うのは誤解される可能性があります。
「おまえの姉キだから」にはきゃーっとなりました。
帰ってみたらこの大惨事、笑えたというか…カラオケの店側が大変ですね…ばれるくだりもあっさりしていてよかったです。
恋より、男の子の生態描写に力を入れたのは成功だと思います。
みんなうまくいったところは蛇足かもしれませんが…
すごくストレートでいい作品でした。今度は男女逆、和志くんが千夏ちゃんと入れ替わって女子の生態を探る話をぜひ。といっても本当にそれをやったらエロが強い作品になりそうですが…ならば新しくできるChu-Girlで。

ドッキン!合宿中
あこがれのチアリーディング部、グラウンドの華!恋と練習の合宿、のはずが、みそっかすの山田ヒナコちゃん。辛い日々の中、出会った名門サッカー部の彼…
神崎先生らしい、すごく明るい熱さがあって楽しめました。運動部の人間全員にとって共感できる話でしょう。
冒頭からつかみがうまいです。
一人に荷物を持たせて走るのはちょっときつい…弱者を集中攻撃するのが伝統なのでしょうか。益もありますが、残忍酷薄です。
いちご味一つが、それこそ切腹ものになるというのもこういう世界の避けられない心理ですね…同じく運動部にいる彼がそれを理解できないはずはないのですが。
彼女から見ると、彼が住む世界が違うように見えるのもわかります。
夢があるからがんばる彼、それに彼女も初心を思い出したでしょうか?
しかし、この宣告の残酷さには心を閉ざすしかないです。
全てに背を向けてしまう気持ちもよくわかります。
でも、雑用も全部がんばってたことは彼が見ていてくれた、これはすごく救いになるでしょうね。
こうして励ましあい、筋トレをしているのが、突然ですがごく自然にキスになるのはうまい。ちょっとびっくりしましたが。
試合でヒナコちゃんが飛び出して必死で応援を始めたのはかっこいいです。
最後は、どうせならもっと大きな舞台での再会でもよかったかもしれません。

私立モテスギ学園
中田くんにもてたい…なんてどうでもいい、クイズゲームのもてるこつチェック。
この主人公コンビ、なんのために出てきたのでしょう。
ゲームのタイトルと主人公たちの、潔いまでの割り切りぶりは笑えます。
あ、あまり間に受けないように。相手によります、とにかく相手の立場に立って考えればいいのです。恋も人間関係なのですから。だから僕は諦めてますv

初キスちょーだい!
キスを意識するお年ごろだけど、まだおこちゃまおつきあいのいちごちゃんと立歩くん。彼と自分と彼の幼なじみ、あやちゃんの三人で始めるバイトがチャンス!そんなとき立歩くんが、友達との会話でキスの経験がある、と…
いろいろうまい。とにかく組み立てがうまい。絵も更に成長しています。
キスの話で、うかれていたのが一気に苦悩になるのがわかりやすいです。僕はこの会話で、多分見栄だろうなとは読めていましたが、だからこそおもしろかったです。
よく男は女の初めての男になりたいし、女は男の最後の女になりたいといいますが、彼女の場合は…独占欲が強いのでしょうね。
キスを狙ってのグロスが見事に外れるのも見ていて楽しいです。
お色気でいこうとしたらパッドの入れ忘れで自爆、これも楽しい。
あやちゃんが幼なじみだとわかっていて仲がいい、これまでこうして意識したことがなかった、というのも…やはりおこちゃまおつきあいだったのでしょう。
この押し倒す体勢でキスせず…まあ仕事中ですからしないのは当然ですが…それで泣かせてしまって…
ちょっとバイトに対する態度がいいかげんなのは少し気になりますが、まあそんなものかもしれません。
ここまで壊れてしまう不安定さはちょっとため息が出ますが、理解はできます。
わかってないって…どちらも相手のことをあまり考えていない、立歩くんはなにそんな怒っているのかわけがわからない、ぐらいは伝えるべきですし、いちごちゃんは自分だけで落ち込み螺旋に入りすぎです。よくこれで壊れなかったものです。
見栄を認めたのはすごく情けなかったでしょうね。
というか二人とも、仕事は…?レジレジ。あやちゃんが苦笑しながら仕事はやっているのでしょうか?あやちゃんの気持ちがなにもでなかったのは惜しい、単に傍観者として見て楽しんでいるのか、それとも…

先生、こっち見て!
教育実習生の要先生に片思い中の夏菜ちゃん。期末テストで見事百点、幼なじみの陽也くんと三人で出かける約束を取りつけるが、同じく教育実習生で美人の雨宮先生もきてしまった。
さわやかな空気があってすごくいいです。絵の感じもここで安定したかな、と思えば…デビュー作は忘れたほうがいいでしょう。高上先生もそうですが、あまりデビュー作の雰囲気にこだわりすぎると今の作品を楽しむことができなくなります。
先生側の気持ちもよくわかります。素直に気持ちを出している子供たちが可愛くて仕方がない、というのがすごく共感できる…というか僕が少女マンガを読んでいるのはその気持ちが大半です。
いきなり腕を引っ張られて…多分ないなりに肘が胸に当たってる…赤くなってる陽也くんについては、もう先生と同感。
百点でも二百点でも…ならフェルマーの最終定理とかケプラー予想とか四色問題とかゴールドバッハ予想とか三大作図問題とか平行線公理とか、一見簡単な超難問を入れておけば安全なのですが。僕ならそうして、こっぴどく怒られるでしょう。というか教育実習性に期末試験問題なんかいじれないか…
雨宮先生もいいキャラです。この構成は実にうまい。二人がカップルではないのもいいですね。
必死でしがみついて「あたしも「夏菜」って呼んでください!」と、いきなりすごい強烈でした。
よく見ると要先生、「…夏」と口に出ている…流されっぱなしなのもいいですね。
夏菜を連呼する陽也くんに、雨宮先生が可愛いと思うのもわかりますしいいです。
おにぎりをちゃんと食べてくれる要先生、どういうつもりか…あまり落ちこませちゃ可哀相だからでしょうね。ここでの陽也くんの表情、雨宮先生の感慨がまたいい。
小川での二人は、下手をしたら本当にくっつくのではとも思わせました。
自分の情熱をわかってくれて、ストレートにそれを出してくれる夏菜ちゃん、嬉しいと言うか恥ずかしいと言うかたまらない、そんな要先生の気持ちも…大人の側の揺れる想いもうまく描いているのが面白いです。
もしここで誰もこなかったら、もしかしたら要先生も流されていたかも、とさえ思います。
雨宮先生が怒るのも笑えました。保護者ですし、ここでは二人とも。
子供同士のケンカも見ていてすごく楽しい、本人はすごく真剣に傷つけあっているのですが。考えてみると「相手にするわけない」で、赤くなったら「ヘンタイじゃ」というのは…矛盾と言うかどうすりゃいいんだという気に…
怒りでいっぱいになっているのを雨宮先生に見てもらう、というのも面白い組みです。ここでの雨宮先生の暖かい言葉も素敵でした。
そして、告白につながる優しいリズムのある流れが実に素晴らしいです。
告白を受けての大人二人の想いと言うか会話がすごく共感できます。危なかったですね。
そして子供側の想いも…どちらもしっかり描いているのが素晴らしいです。
実に面白い視点の傑作です。これからどんな作品が出てくるか、楽しみです。

キラキラ!
陸上部でカナヅチの陸くんが、水泳部の夏穂ちゃんに「泳げるようにしてくれ」と。動機は女子バスケ部のミキティこと久堂美樹先輩にカッコつけたいから、とくだらない。夏穂ちゃんは彼に二つ秘密がある、一つは彼が好きだということ、もう一つはあと十日で転校すること。夜のプールで特訓が始まったが…
絵の感じがずいぶん変わりました。前の端正な絵のほうが安定感はありましたが、感情表現が豊かになっています。
この話自体、なんだかちくっと傷をひっかかれます。中学の頃、好きだった子が転校することを僕には隠していたことを思い出してしまいます。
一番の友達、という信頼の言葉が、逆に「二つのヒミツ」を強調するのがうまい。
夜学校のプール、これ自体転校がなくてもいいシチュエーションだと思います。
ごく自然に時間が進むのが、かえって残酷ですね。こういうときの時間は…う〜っ…
見本で泳ぐシーンは迫力あります。
あ、そう…こうして溺れる危険があるから、こういう保護者なしの水泳は禁止されているのであり、絶対やってはいけないんです。念のため。もしここで陸くんも溺れたら二人とも溺死していたことはわかりますよね?
このキス寸前の状況もびっくりしました。水の演出が妙にいいです。
星を見上げるのもいいですね。小学校の頃、天文好きの何人かで夜の学校に集まったことを思い出します。
でも、時間は残酷なまでに流れることが、「時間が止まればいいのに」の一言が、はっとするほど鋭くつきつけてきます。
二十五メートル泳げてしまった、成功が逆にもう…ここで告白する気持ちがぐっとわかります。
告白を冗談でごまかして、これは…かっこよすぎますよ。
転校のことを知った、同時にミキティ先輩に星のことを言われ、親しげな態度…
また夜泳ぎに来てしまう、その気持ちもわかります。そして来てくれた陸くん、もう抑えてきたものがばっとふきだすような嬉しさでした。
いきなり軽くバードキス、というのもすごいですね。それで改めて告白してより深いキス…ちょっとこっちが赤くなります。
幸せな海がまたほっとしました。
というか、合宿はいいのかな…まあ愛のためならいいか…
やはり実力はずば抜けていますね。これからも出てきて欲しいものです。

ジンクスChu意報!?
ジンクスって信じる?キューピッグ(「コアラのマーチ」で噂される変り種のようなもの?)に当たって、いきなり大好きな空彦くんに告白された憧子ちゃん。初デートはジンクスに気をつけ、特にチュープリ(プリクラでのキス)は別れるというジンクスが気になって…
絵の安定度が高いです。体と服が実に表現力豊かで、ほとんどずっと二人とも赤くなっているのがまた初々しくていいですね。
冒頭の告白シーンも言葉や組み立てが実にすばらしい。ジンクスを気にするのもよくわかります。というか「オレと両想いって」でいきなりおなかいっぱいになりますよ。
無地のキャミソールは、単に大胆だから有効なのでは?日焼け心配ですが。上に重ねて着るのは仕方ないですね。
ジンクスに振り回され、嘘までついてしまう彼女に、ついつい不安が募ってきます。どこで爆発するのかな、と…こんな感じで、ファーストデートで失敗してしまうことも多いのでしょうね。
「バイトできる歳になったら」はかっこいい一言でした。それで上を脱ぐシーン、男の子にとっては心臓爆発しそうでしょうね…そこもよく描かれています。
そして、ジンクスのためにキスするのはさすがにびっくり。
プリクラで、チュープリを拒否してお互い離れてしまって、ここの不安感もよく描かれています。鏡迷路なんかだったらもっとよく思いが…いや、ジンクスのために行き損ねた花火で悲しむ描写のほうがうまく伝わってきます。
「調子にのっちゃって キラわれたかと思って」と、彼の側の不安もしっかり描いているのは手を抜いていませんね。
ジンクスなんかより強い絆が、これからも育っていくといいですね。

ひどい男
いとこの代理でハウスキーパーのバイトに来た坂本さん、でもその屋敷の主はたらしと悪名高いおぼっちゃまのクラスメート。
やっぱり水上先生の読み切りはいいです。
黒を基調にしたカラー扉もすばらしいです。
男のやや乱暴な冷たさ、そして迫るときの色気は導入で、坂本さんの印象=彼の読者に与えたい第一印象をうまく表現しています。
色気ゼロというのは苦笑。怒るのもわかりますが、ちょっと乱暴な…本来こういうアンティークの掃除は専門技術が必要です。銀や真鍮、亀や象牙、剥製や毛皮のような生物由来、それぞれしてはならないこと、すべきことが違いますから。
相当な損害が出ているのでは、と不安になります。
「なんなりとお申しつけください」といわれると、逆に何もいえなくなる蒼くん、結構照れ屋というか素直に「お疲れさま」といえないのがちょっと可愛い。
父親からの電話で、蒼くんの性格が親といられない寂しさが原因か、とかなり見えてきます。よく読むとこれまでの部分にもいろいろあります。
これで優位に立った、という表情、それに本当にセレブ生活を体験させることしかできない蒼くん…まだ本当に触れ合ってはいない…
「もとがいいんだから」に「ほめ上手」とあるのが面白いです。
口は悪いですが、髪を整えてやるなど手は優しい…こういう優しさは教育とも関係あるのでしょうか?留学経験があるとか。こうしてちゃんと女扱いされると、それになれていない女の子は弱い…単純ですが。
いきなりのキスはびっくりしました。
こんな生活をしていたら…太るでしょう。活力がないのがこうして童心に帰って遊ぶと心が開かれてくる、ここも自然をうまく使ってうまく描いています。
「かわいそうな子だったんだ」「やめろ」と、同情は拒否している…坂本さんも入り方が乱暴ですね。
だんだんわかってきた、まだその段階のところで取り巻き女がやってきて、強引に外から卵を割られるように想いが吹き出てしまう、その描写もいいですね。
「とりかえしがつかない」というのはうまい。これで惚れた弱みを認めておいて、「どうしてだと思う?」は確かにずるいです。

キッチンのお姫さま番外編
どちらも大変ですね…このフジタさんの姿は笑えました…ら夢でしたか。無意識でそんな店に行ってみたいのでは?
「生ゴミの日」もなんか嬉しいネタです。
すごく清涼感と暖かさがある小品でした。

かみちゃまかりん番外編
ええと…疲れました。女装オチはすぐ読めましたね。でも想像以上にどたばたが豪快で楽しかったです。
特にテニス少女コスプレは強烈でした。思い切って次回作は古典的少女マンガにしたらどうでしょう。

私立ヤバスギ学園
…これもあまり感想を書く気にはなりません。
人気があるのはわかるのですが、思い切り壊れたギャグは切れ味いいですし。
突然の大人の恋の予感、そして裏切りと…ほとんどスパイ映画のノリなのですが、守っているのが学園の腐った構造だというのが脱力です。
まあ竜子ちゃんの大人の魅力は堪能しましたが。
あ、貝殻ビキニはああいうスタイルの女性でない(あえて実名は挙げません)と似合わないですし、第一下や後ろから見れば丸見えなのでは…

ひまわり郵便
幼なじみの真祈乃が遠くに引っ越した。ひまわりの種を残して…手紙は来たけど、なんだか返事をしていない。そんなとき、手紙にあった先輩についての話が妙に気になり…
なんだか漢詩のような、韻を思わせる詩情がある作品です。
ふわっとした二人のキャラがすごく好感がもてますし。
こういう手紙でもいいのですね。先輩の勘違いネタはよかったです。
そこからこうして行動になるのがすごいですね。
いきなり花渡して「好きです」はお見事!
翌日こういうお返事がきたのも素敵です。
最後の、「だれにもださない淳一くんにもださないないしょの手紙」というのもすごくいい感じがします。

プルーンケーキ
とつぜん告白された。まったく知らない人に、いや、昨日ぶつかって、そのとき恋人の石のかたわれが彼のバッグに入ってしまった。まさかそのせい?だとしたら…しかも彼には噂の幼なじみが!どうすれば傷つけずに別れられるかなあ。
すごく単純な誤解ですが、それが結構重いことになってしまっています。うまい。
その石を「一人で二つ」…「うわあい。」というのが一番合っています。外にどういっていいやら。
こうして抱きとめてもらったのも、結構おいしいシチュエーションです。
手に「お待ちになって。」というのもあいかわらずうまい。
いきなり「おれのかのじょー!」は子供っぽいというか強引というか、でもほほえましいです。
いえなくなって、といってもここで「多分それ、恋じゃなくて石の魔力!」といったら…正気を疑われますが、その時点で誤解は解けてましたね…そっちでも十分ハッピーエンドか…
「傷つけずにフるにはどうしたらいいのかしら」は苦笑。
きらわれようとして空回りするのは意外な視点です。
どうすれば人に嫌われるか…簡単です、僕の真似をすればいいんです。
それも通用せず、それを単なるじたばただと誤解されるのも…彼、結構能動的なお人好しかも知れませんね。人の動機をいいほうに解釈する、という。
「一気に進みたいってゆーならさ」はあうあう。
あ、ここの親子連れの描写は見事。こういう細かいところが水無月先生のすごさです。
悪くない、と思うようになってきたら…あえてここまで笹口さんを出さなかったのがうまいです。彼の好き嫌いをこうして教えるのは、彼女にとってはそれ以上内ほど辛いことでしょうね…でも(読み返してみれば)彼の気持ちは前から知っていたから、整理はついているのでしょうが。
ここで、あえてプルーンを入れてくる…確かに善意は善意なのですが…これをあえて口にいれてしまうのがすごい。もしあのころ、好きな子に納豆を食べろといわれていたら、僕だったらどうしたでしょう…
この食べるシーンの描写は適度な激しさ、抜けがあってすごくいいです。
それで「プルーンはきらいだけど」もふわっと甘くて、さりげなく「たし…も…」と来ているのがまたいいです。
こっちが間接キスで倒れてしまうのも可愛い。
でも、もう爆弾は起爆している…そう、もう「わたしっプルーンはダメって彼女に」こう言ってしまったことも、笹口さんが僕が思っているような人なら後悔したでしょうが。
ここの抑えた怒りの表現はずっと、腸が砂になって崩れるような痛みが走りました。好きな子に悪いことをして欲しくない、という想いは覚えがあります…僕はそう言葉にできず、眼やうなり声で脅すだけでしたが。
怒らせたより傷つけたことのほうが辛い…もう石は信じていないけど、「でもいまいちばんきいてほしい」と、恋心を自覚しているのがうまい。
「いただいてまいります」「つまらないものですが」というような言葉も面白いです。
そして、彼女は全部正直に告白しているのですが…彼には何のことかわからず、「とりあえずきいとこう…」なのが妙にリアルです。そうですよね。
ぎゅっと抱きしめるシーンは彼の喜び、愛情の大きさや二人のからだの華奢さがはっきりわかって最高。
で…そういうことでしたか。
いきなりのキスで倒れるのも、こうなってみると笹口さんに嫉妬するのもすごくいい。とにかく笑顔があふれそうになる素敵な作品でした。
というかはやく本誌連載始めてください。

最強のF
成績順クラスで、最低何でもコースF組の挑発にのってしまい、パイ投げが共闘を巻き込んで特進コースのAからFに落ちてしまったあざみちゃん。絶望する暇もないほどみんなめちゃくちゃで、鳥人間コンテストにみんなで出るとまで。とてもついていけない、でもどうしても捨てられないスケッチブックを見られそうになって、つい心の壁が壊れそうになる…
う〜ん、非常に大きな、そして難しいテーマに挑んでいます。とにかく今の、現実が見えるがゆえに押しつぶされている子供たちに火をつけるのが狙いでしょうが…
すごく壮大、その意気やよし。こういう作品もないと!
現実の厳しさを徹底的に描いているのもいいです。
まずこの成績順クラス…現実にはどれだけあるのでしょう。昔の名作「おもちゃ箱革命(八木ちあき)」がその色々な面を描いていましたが。
公文式の進度別なら優れた子も普通の子も劣った子も自分のペースで学べるからいいのですが、この形では単に差別ですよね。学年、学級という壁は簡単には崩せないからこうなるのでしょうが。
でも実際、人には優劣があることがはっきりしてくるのが今の時代です。不平等が多くの本のタイトルとなり、「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」がなんとなく否定され、はっきりと勝ち組と負け組に分かれてしまう…そんな時代の圧迫感は、今の子供たちにとっては圧倒的なものだと思います。
その、勝ち組にいたはずのあざみちゃんが一瞬でそこから転落してしまう…大人だったら東大から一流企業に入ったエリートがいきなりリストラ、という感じでしょうか。
いきなり座っている椅子で逆立ちというのも激しいです。強烈な洗礼。
鳥人間コンテスト自体はいい挑戦かも。でも、不思議なのが…なぜ、どうせ挑戦するならちゃんと勉強して、ちゃんと飛ぶのを作らないのか、です。
ただ、一見関係がない鳥人間と、彼女の影が、ダ・ヴィンチを通じて結びつくという構成は見事。
あざみちゃんの暗い表情の理由を、絵を見ようとするのを笑顔で「みないでよ」から激しい拒否までエスカレートしていく、ここの描写は胸が痛くなります。
でも、それは単にふざけていたんじゃなくて真剣に見ていてくれた…そういうこともあるのかもしれませんね。僕も自分の何かにちょっかいを出され、同じような反応をしていたことを思い出します。
飛ぶ可能性はない、とわかっているならなぜ、飛ぶように設計を変更しないのか…ここがこの一見素晴らしい話の、眼に見えにくい影の入り口だと思います。
こうして夢を追う生き方は確かに素晴らしい、でも…そう、あざみちゃんが絵に向かうのを止めた親、「まともに画家になれるのは何人いると思ってるの」という言葉も真実である…夢を追うのは、きわめて分の悪いギャンブルです。今は確かに一流大学から一流企業も安定ではなくなっていますが、ギャンブルとして冷徹に評価すれば後者のほうがはるかに、生涯賃金の期待値は大きいのです…
彼らが夢を追っているのは、その現実に背を向けている、というのもまた真実では?もちろんどちらが死ぬとき後悔しないで済むか考えれば、夢を追うほうがいいのですが。第一彼らには、成績のいいあざみちゃんとは違って、夢を追うのを諦めたからって一流企業の正社員や上級公務員になれる希望があるわけではないのですから…どうせ絶望なら夢に賭けるほうが幸せかもしれません。
「あきらめなきゃいつかはぜったい!」というのは、本当に昔の自分を見ているようで面を向けられないです。タイムマシンがあってもあのときの自分を止められるはずがないように、彼らを止める言葉はないですよ。ただ、忠告があるとすれば…がんばっても、あきらめなくても結局だめである確率は非常に高い。でも、それでも生きていけます。夢が破れ、しかも安定したコースから外れていてもまだ生命があります。だから…後悔しないよう全力でやれ、でも諦めることを怖がるな、諦めたからって絶望するな。
ちょっとぐらいなら、とまだ片足は安全なところに残していますね。でもそれが怒りからその片足も、F組に踏み込んでしまう…
「強度もないし」というのは、確かにひどいようですが現実でもあります。あざみちゃんも多分見えている…ならなんとか強度をもたせる方法を考えるべきですが。
このタンカは実にすっとします。
それで…ぎゅっと抱きしめるラブシーンもある意味ついでに思えるパワーがある、でも現実は現実なのがまたすごい。しかも、そこから…絶望で終わらせず、こうくるとは!
考えてみると、多分ライト兄弟も…同じように馬鹿にされたはずです。なのになぜ、今の人は誰もが夢を忘れてしまったのか…行けるのがわかっている月にも行かない、軌道エレベーターなど考えもしない…もちろんライト兄弟は緻密に強度を計算して飛ばしたのはF組の皆と違う点ですが。
ただコロンブスは、計算は一応しましたが、その資料が間違っていましたからもしアメリカ大陸がなかったら絶対全滅だったのですがね…。
読者はどんなメッセージをこの作品から受け取ったのか…いや、読者の死の床での後悔の総和が少しでもこの作品で減ってくれればいいです。
代わりにGDPは少し減るかも…いや千に一人の成功者が出ればそれだけでプラマイゼロかもしれませんし。でもプラマイゼロだとしても、ジニ係数(不平等の指標)は上がってしまいますね、一人が成功して残り9999人は生涯低賃金なのですから。内田論争をしているブログのみなさんは、この作品をどう読むものか…

白い雲 夏の空
成績が悪く、やる気もない若菜ちゃんは、クラスで一番の愛ちゃんは可愛いし前向きでうらやましい。同じく点数が悪い小国くんも、同じなのかな。
また実に深みというか、すごく共感できそうな作品です。
いきなり「勉強は先生のためじゃなくて自分のために」と、おこられるのは、これってすごくありがたいことでは?叱られているうちはまだ見捨てられていないということなのですから。
愛ちゃんは素直にほめてもらいたがるところなんか、すごく可愛いキャラです。
頭のいい中学についていけずに…確かにそれ、すごく多いでしょうね。みんなできるのがあたりまえの環境ですから。
「やりたいことがないわけじゃないよ やりたくないことがたくさんあるだけだよ」というのはすごくリアルで重い言葉です。みんなそうですよね。それは単に、まだ努力もしていない、何も知らないから”自分”ができていないだけなのか、それとも過剰な勉強で本来の自分を押しつぶされただけなのか…「車輪の下」を読んでみるといいかも。
同じ匂いがする小国くんに、つい話しかけてしまった、ここの戸惑うような感じはいいですね。
このちょっとぼけた会話のリズムもいいです。「ちゃんとしゃべってくれるタイプの男子」というのも、女子は男子をそんな風に見てたんだ、と新鮮です。
歩くのが好き…あ、好きなことが一つ見つかりましたね。
こんな愚痴も、口に出すのはこれが初めてだったようですね…この、ただなでてくれる対応は最高!
空を見るのも好き、なんですね。
「あたしのこともかまってね」は確かにカワイイ。
愛ちゃんと比較して、どんどん暗いほうに行く…それを受け入れられる大きさはすごい。なんというか、親以上に全部受け入れているというか。それで涙が出てくるのも当然です。
そして、母親が高校の話ばかり、小学校のときは中学の、多分高校になっても大学の話ばかり…では大学生になったら?企業や上級公務員試験の話ばかり?じゃあ一流企業や上級公務員になったら?結婚のことばかり…じゃあ金持ちエリートと結婚したら?それが幸せだから、と親は子供の幸せを考えているつもりですが…
テスト前になると掃除やマンガが、それも共感する人多いでしょうね。
一つ一つのことに全力…さすがにここまで前向きだと、ここではちょっとリアリティがないと反感さえもちたくなります。読者もそうなら、余計に若菜ちゃんの気持ちがわかって、一緒に自己嫌悪したりするのでしょうね。
これで「まけてる」と感じてしまい、それで自分は前向きになるのではない…嫉妬が芽生えてしまい、微妙なずれが起きてしまう…
ひどいことをしているのに謝られてしまい、さらに言葉を浴びせてしまうところはもう辛くて辛くて。
最低の人間になってしまう、でも止められない…「愛といるとイライラする」という言葉には悲鳴を上げたくなりました。
まだ自分を責められる分、最低に一歩踏み止まっているのですが…そこで小国くんの助けがあったのは、ある意味奇跡でした。
「若菜といるほうが好きだよ」という言葉はもう信じられないくらい。
そしてこのメール…どうしてここまで、と見ていて辛くなります。
小国くんの暖かい愛情に支えられて、そして愛ちゃんに素直に謝って…
そして翌日の、自転車はもう直したのに一緒にいる、というかもう昨日告白してるって。
自然な会話があたりまえのように告白になっていくのなんてすごく素敵です。
なんともいえない作品ですよ。

ラブじゅうにさい。
ケンカ最強で男の子のような夏希ちゃん。仲間の永太くんと仲はいいけど、でも女の子として好きになって欲しいとも思う。
生理ネタをしっかりやってくれたのは嬉しいです。やっと「なかよし」でも解禁でしょうか?もちろん重いテーマですので、解禁だとしても軽くはやらないでください!
バックドロップは冗談抜きに死ぬのでやめましょう。伊達に四十八の殺人技のひとつじゃないです。でもこの子の男の子っぽい魅力はすごくよく伝わります。
女の子としての服で手を拭かないなどマナーもできないし、ポケットの中身も少年過ぎるぐらい少年…僕も練り消しカスは作っていました。
百合恵ちゃんもはっきりしたキャラで、すごくわかりやすいです。
やっていることは男の子なのに、本当は女の子として見て欲しい…矛盾してはいますが人間もともと矛盾しています。
百合恵ちゃんのおしゃれで、今更ながら気がついたのですが、「女の子らしく」魅力的になるにはどうしても金が必要なのでは?服、アクセサリーや化粧品など。
金持ちでなくても心がけとセンス次第である程度行けるかもしれませんが、金がある子には勝てないのが現実では。
男子が男らしくあるためには、古典的な男らしさには金は必要ではありません。運動能力は本質的には努力だけで身につきますし、男子は高価なアクセサリーをあまり必要とはしません…確かに金はあるほうがいいですが、男らしさとはあまり関係がないのでは?まあもっと年齢層が上がると、バイクや車、電子楽器など非常に高価なものが男らしさを高めるのに有効になりますが。
乙女化は面白そうですね。どんな風に化けるか楽しみでした。
いきなり生理の話になるのはびっくりしました。相変わらず馬鹿をやっていても、体は勝手に変化してしまう…しかも個人差つきで。
これだけ決めて「ヘン」はひどいな…で、ここで生理とは。否応無しに女の子だと思い知らされ、しかも女の子にもなれなかった…男の子でも女の子でも何でもない…うわ。
気まずくて「かわってくれないかなあ」と言ったらこれは…このオーバーアクションは楽しいです。この子供のけんかも。
昔の思い出から迎えに行くのはすごく素敵です。
ここで、夏希ちゃんが「いっしょにいれる時間がどんどんへってく」と、未来への不安を感じているのがすごくいいシーンです。
そして…それで、ここでケリつけたほうがいいというのは意外な展開でした。
必死で告白して、飛び込む激しさ…はっとするような鋭いシーン、でよけるかおまえは!
「わざと負けてやったこと知らねーだろ」は…ま、当然と言えば当然です。
いきなり「本気出したらオレのが絶対強いぜ」の、この男のカッコよさはぞくっとします。もちろん勘違いしてただ暴力的になる男も多いですが、彼は違いますし。
この抱きしめるシーンの、ちょっとぼけた呼吸もまたいいです。
すごく優しくて、みんな素敵で…なんともいえないです。

金魚姫
ずっと一緒だったるりちゃん、茜くん、青磁くんの三人組。でもこれが中学最後の夏休み、高校はバラバラ。ずっと変わらずにいたいけど…
またすごく切ない作品です。
泳ぐシーンの激しさはさすがです。
一年も金魚を生きさせるなんてすごい。結構難しいです。
まだ恋なんて考えたことがない、でも…
小さな違和感が積み重なって、一気に県外、そして告白につながる、でもまだ本当にドラマは始まっていない、このずれがたまりませんね。
水族館デートが生物の勉強、なるほどものはいいようです。ならディズニーランドも社会の勉強になりますね。
二人であることが喪失感になる、それと金魚を離さなければならなくなるのと重ねるのはすごい。
「なにもかわんないよね」というのはあまりの甘さにくらっとします。「一ぴきはなれて正解だったな」という言葉がすごく重いです。
それが告白になろうとして、あ…三人乗りはもうできなくなっている、というのもまた切ないです。時間を止めようとしても、肉体は容赦なく成長している…
「やっぱり三人はムリだよ」というのがすごく悲しいですね。ため息。
金魚を金魚帯に結びつけるのもうまい。
お姫さまだっこで「このままつれてけない」というのが彼の本音だった…そこで茜への思いに気がついてしまうのはもうショックでした。
なにもかも変わってしまう、でも…うわ、今ちょうど流していた「高橋城宝塚歌劇作品集」の「めぐりあい」(作詩:正塚晴彦/作曲:高橋城/バウ・ミュージカル「パペット」)の歌詞、曲とこの作品の読後感が見事に調和してしまいました!
奇跡です。
これから「新しいめぐりあいは ことわりもなしに訪れ(上歌詞)」ることもあるのでしょう。
「朝はいつも旅立ちだと 恐れることはないと(上歌詞)」

wish〜たったひとつの願いごと〜
今回は完全に傍観者として…いや、本質的に“彼女”は傍観者ですね。
冒頭はいったいどんな願い事をして、どんなことになったのかわからないのが怖い。見てみたいです。
それで幸せになるかどうかはあなたしだい、なるほど…「ロードス島戦記」の世界観で、暗黒神はそれ自体が邪悪というより単に「おまえが欲することをせよ」が教義であるだけ、それは別に邪悪ではないけれど、非常に成熟した人間でない限り恐ろしい害がある…というようなことですね。
今回の導入はいつもとまったく違いますが、はじめはどう天使の携帯電話がからむのか気になっていました。
自分の携帯電話に自分の携帯番号から、それは怖いですね。
確かに携帯電話を落としたときには、とりあえずかけてみるのが一番正しい対応でしょう。
オレオレ詐欺でひっかかりそうになる父親は笑えました。
ストラップも何もかも同じ、ここまで気が合う…でもそういう気が合う二人が結婚したら、それはそれで問題がありそうですが(気が早い)。
このうまくいけば出会える、というゲームはすごく素敵です。スリルは恋のいいスパイスですし。
ぜんぜん店員を見ていないけどなんとなく買い物ができている、というのも面白いです。
こうして、電話で会話しながらという離れたデートもすごく楽しそうです。まあ、もちろんどんな人かわからないという不安も皆無ではないですが…「なんかすげーあんたに会いたい」なんていわれると。
こんな犬の落書きが、確かに絶望的です。
非常にマイナーな機種というのも…家に帰ればいいのですが。
ここで天使のメアドが出てくるのはうまい…こういう“試し”は神話伝説によくあるモチーフであり、それだけに効果的です。
そしてこれで会えるなんて、もう運命通り越してますね。
着信履歴も消去する、お互い学校も住所も聞かない…当分はこういう、運命だけの結びつきを楽しむつもりでしょうか。
最後に明かされた真実が、これまでの話を通じてどれだけ読者が理解してくれるか…でも、「天使にするか悪魔にするか すべてはあなたしだい」といっても、人間は弱いものなのですから願いをかなえるということ自体が悪かも…あ、だから魔法は無条件に禁止されるんですか…

Cheer up☆恋モード
もうすぐ、卒業式のダンスパーティ。そこで踊った二人は永遠に結ばれるという。どきどきの音子ちゃんだけど、自分は空手女だしレバー好きだしとても日高くんとは踊れそうにない。でもそんなある日、彼が会話の中で出した好きな子のイニシャルN.N.は、名簿では自分しかいないよう。本当に…!?
正直に言えば、扉の第一印象は、うげっ中原杏(「ちゃお」の看板作家)コピ…です。よく見るとそれほどは似ていませんが、ちゃおの作家陣の印象が強いです。
でも、読んでいるうちに徐々に、一種の既視感を感じるようになってきました。そして心に浮かんでいるイメージが、一人の作家の名前になったときは驚きました…森下津嵩先生。特に気の抜けたキャラの絵の感じが不思議と似ています。いろいろなところから影響を受けてるな、と少しあきれましたが、妙な懐かしさをもって読みました。
全体は…ちょっとキーワードをダンパ、名前、空手、レバー、リストバンドと詰めすぎ、どれも中途半端になっていますが勢いがあってよかったです。
冒頭はちょっとごちゃごちゃしていましたが、いいたいことはわかります。かわいい印象もありますし。
友達のキャラもいいですね、夢見がちで激しい優菜ちゃんと冷静な司子ちゃんと。
いきなりとんでもない情報にびっくり。なるほど、そういうことでしたか…でも、この学校の人じゃないという可能性もありますね。
頭がパンクしているのも見ているだけならかわいいです。結構背景などもしっかりしていますね。
いきなりがんばる=手作りクッキー…楽しんでいる友達の気持ち、わかります。いい酒の肴というやつですね。
こうしてがんばっている自分を客観的に「そんなわたしはキモすぎる」と見ているのも面白いです。でも「好きな人のためになにかをするのって」という見方は素敵ですね。
で、罰ゲームってあんた…しかもバカになってるし…リストバンドの焦げに気づくのはうまい。
それでレバーって、友達も止めなかったのでしょうか。すごすぎる。
口が止まらないで「チビのまま」は…もうあきれてものも言えないというのが正直なところです。
野原さんとは結構仲がいいんですね。冗談半分で迫り続けている、という関係でしょうが。
この御用達ブランドでどきどきして、そこを「おまえに似合うワケないだろ」で血が凍った、そこから手を握って連れ去って合う服を当ててくれる…ここはやられました。でも男ならここで買ってやれよ、あ、男が服を贈るのは脱がせたいからと思われるか。
「何か買ったの?」「何でもないよっ」と、細かいところもちゃんと詰めているのがまたうまい。
「恋人どうしでお買い物?」はびくっとしましたよ。彼の表情を見れば、もう期待できるじゃなくて間違いないですが…また手つなぐし。それで心がすごく高まって、そこで…ダンパは断られるし、しかも野原さんもN.N.だった…突き落とされて、その勘違いがはずかしいとなって、それが暴言に…ここの心の動きもすごく強く伝わってきました。
それでこうして落ち込んでいるんじゃ世話ないですね。
「それはきっかけにすぎなくて 好きだからがんばれた」という心、そして意外な言葉…そういうことか、と納得して、あらためて彼の側から読み返してみました。本当に好きで好きで仕方がない…それはそれで頭ぐらぐらしました。
差し出している彼の手も震えている、二人とも同じ…これもいいですね。
そしてラストで笑顔で抱き合って、それにこんなオチが入るのがお見事。勢いで抱き合ってしまったけれど気まずくて、それからどうしていいかわからなくて…というかダンパは?ずっとこうしていていもいいですが。まあゆっくりキスして離れたら…いや、もうギャラリーが集まってたりして。
次回作は、もっといろいろな作家の影響をうまく消化して見えないようにし、はっきり個性を出してほしいです。楽しみにしています。

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