なかよし秋ラブリー2004年感想

何年…十年以上この日を待ちました。増刊年三回という、永遠とも思えたあまりに少なすぎる枠が壊れた記念すべき瞬間!
これがなかよし再生の始まりでありますように…まだまだ大量新人の圧迫もあって枠数を作家数で割ればあまり好転していない…すべてが解決したわけではないのですが。

中身も最高です!セックス解禁なんかより、こっち方面のほうがはるかに読者は多くのことを学べますし、作家も力量が出で成長できるはずです。
いくつかの作品のテーマは大胆すぎて息を呑みました。心臓が止まりそうでした。
なかよしの作家陣には、僕が想像もしていなかったほどすごいパワーがあったことを痛感しました。
このパワーがそのまま本誌にも流れて、人気もあって質も素晴らしい名作を次々に生み出してくれることを祈ります。
肝心なのは、それが読者にどれくらい受けるかですが…ここは人間そのものを信じなければ、マンガどころか生きていく価値もありません。

とにかく、これは損はしないので買うべし!

ぷ〜ちょ ナナパチ 勉強 wish ナミダレシピ 約束 ヒカリ 隕石 ティアラ ファイル フレンド バンビ クロタマ ヨシオ こもも パジャマ ごま ニセモノ ケータイ

ごっくん!ぷ〜ちょ番外編
なずなちゃん視点はあまり意味がなかったような。
また、小学生の場合には「香坂は天宮のストーカーだぞ」とか触れまわされて大騒ぎにならないほうがおかしいのでは。
ずっと変わらず見つめる気持ちは、まあよくわかります。僕もそうでした。
このおせっかいは…よかったのやら悪かったのやら。「しあわせそーに見えないもん!!」という言葉がとてもよかったです。
この段階では失恋で、だからこそ…こうして泣くシーンがすごく胸にしみます。

ナナパチ!
やおいが多いのが難ですが、やはり「まもロリ」の番外編は秀逸です。
色々な地域があるんですね、魔法界も。国も多いのですか。
「それやったらそのままでいたらえーやん」この言葉は非常に奥が深い言葉です。
誰にとっても、肯定されることは非常に大切です。少なくとも自分で自分を否定するのは、健康な状態ではありません。
しかし、今のままの自分をただ肯定するだけは、そこからの進歩、向上がなくなります。
自分でありながら向上も続け、時の流れによっては変わり続けることも大切でしょう。
社会への順応は…必要とも思われますが、彼のようにそれが性的多様性に関わる場合はある程度寛容にしなければならないでしょう。
男の子なのに着替えシーンで暴れられたら=意識されたら、逆に八雲も意識してしまうかもしれません。
一コマしか出番がない012がなんか可哀想。
そして、いきなり出てきた超美少女にドッキリ!かなり媚びたキャラですが、目の大きさと分けた三つ編みがポイント高いです。
言葉も甘えた感じとかわいらしさがあっていいですし、いきなり告白?と期待させるのもGood.
七瀬の乱入は予想通りで素敵!岡本慶子先生が、女装男は女だったら過剰でできないぐらい媚びまくれ、と言われたそうですが、至言です。
八雲の怒りはかなり強烈ですが、結局ナナちゃんを突き放せないのが…
さて、琴音ちゃんはナナちゃんの正体に気づいているのでしょうか。本当に奈々ちゃんが女の子だったら、これってほとんど意地悪役です。
回想シーンは感動でした。
七瀬が背中を押して、ふと流した涙がとてもキレイです。
八雲は硬派なのか鈍感なのかホモなのか…はてさて。二人ともいい笑顔ですが、なんかこれでいいのかという感じです。
で、琴音ちゃんが帰ってから試験準備そっちのけでやおい本を描きはじめたら大爆笑なのですが…

勉強の時間
すごくいいです!勉強を否定的に扱う風潮が多い中、これは貴重です。
作風がとてもはっきりしているのもいいです。
冒頭から激しいシーンですね。泣いている「なかま」など、細部を見ても面白いですし。
「口では“ダメだダメだ”いってても〜」は笑えました。本音ですね。
脳ミソわけてほしー、を「グロいね それって てか大手術になるね」も笑えます!ここでもうすごく楽しい気分になっています。
「しゃべったこととか一度もないなー」から「どんな人なんだろー」、それがすぐ「ちょっとチャレンジしてくる!」とつながる速さがすごい。そして実際に行動できるのがまたすごい!
ファーストコンタクトのずれっぷりがまた実に面白いです。ここまで住む世界が違ってどうするのかな、という以前に両方の呆然とした感じが伝わってきて…。
「キレてもいいですか!?」というのもわかります。
そして、その怒りで勉強してしまうというのはすごい発想のような…それですごく威張っているのがちょっと笑えますが、まあ頑張ったことは頑張ったのですから…
バカじゃなくてアホに昇格する、というのがまた面白い。柾くんの笑顔に喜んでいたりするのが可愛いです。
会話が続かないというのはわかりますが、そういえばそういう頭がいい人はどういう話題を…この間MITでリーマン予想の〜?違う気がします。
頭のいい人と一番通じる話題は受験関係でしょうが、それが楽しいわけでもないでしょう。
簡単にほめてもらおうとする朋歌ちゃんの単純さが、なんだか甘えん坊の犬みたいですごく可愛い。
放課後、話が続かなくて…「かまってほしいな」と頭をくっつけるの、結構しびれました。“不思議ちゃん”という言葉も面白いです。
この元素記号の覚え歌は面白いですね。一番早いのは、それぞれの元素名の由来を覚えることなのですが。
休校は嬉しいのは確かですが、多分それはめったにないからで…いつも休みだとそれはそれで辛いものがあるでしょう。
勉強を頑張る、といきなりなるのも唐突で、本当にびっくり箱みたいです。
「勉強やればやるほど“自分がどれだけわかってなかったか”ってコトがわかってくる」この一言だけでこの作品は傑作です!それこそが始めの一歩ですよ。自分がどこをわかっていないか分かれば、後はそれを下から順に…特に数学のような積み重ね科目は小学生まで戻る必要もあるでしょう…一つ一つつぶして、確実に上っていけばいいのです。今勉強ができない子も、そうすれば必ずすぐに追いつけます。
とにかく自分がどれだけわかっていないか、よく理解しないと!そして…過去形になっているということは相当わかってきているということでもありますね。
みてやろうか、で喜んでいたらスパルタで、つらいけど「やめない」ここはすごくカッコいいです。
友だちが「うらぎりものー」と彼女が勉強しているのを嫌がるのが興味深いです。バカ仲間なのが居心地がいい?
頑張ったから怖い、というのもわかります。だから頑張らない人も多くいます。
そしてただ近づきたい、「“テキトウな人”って思われたくない」、そしておなじ高校というのが見える…とビジョンが変わっていくところもいいです。
で、頭いいパワーと頭をくっつけるのは…はっきり言ってこれ、キスよりすごいかも。
それで意識してしまうのも見ていて可愛いですし、そこから一気に「あたってくだける!!」となるのは素敵です。
柾くんも結構落ち込んでいたり…彼の気持ちの変化をたどるのも楽しい。
それでいきなり80点とか90点とかはすごい。本当は頭よかったのかも。
自然でどこか激しい告白も、いいペースで胸が温かくなります。
すごくほっとできる作品でした。これからもこのいい雰囲気を楽しみにしていましょう。

wish
デビュー以来、僕はこれを待っていたのです!
征海未亜という作家には深い霧に包まれた森の、鏡のように静かで底知れぬ沼のようなものがある、それを見たいとずっと思ってきました。それがやっと…感無量です。
冒頭から人形のような暗く冷たい雰囲気、そして「ダークファンタジー」という言葉からは結末がどうなのか予想しにくい…三人ともすごく可愛い子ですし。
序盤があまりにも普通の、ごくスタンダードな少女マンガなのが後とのギャップがすごいです。三人それぞれのキャラもしっかりしています…普通の女の子である、普通の女の子もこの状況になれば…。この誓い、今見るとぞっとしますけど、本当にいかに多くの女の子たちがこういう誓いをしていることやら。
麻衣ちゃんがパスケースを持ってボーっとする、というのもいい伏線です。
リカコちゃんがひくっと怖がっている、その表情がまたなんかいいです。
怪談の盛り上げも実にうまく、それから鏡が出現して…ここはわくわくしましたが、今は胸が締めつけられるようです。
怖がっている二人を無視するように、強引に儀式を進めるリカコちゃん…ここは見ていて二人の怖さがのりうつるようです。今から思うと、思いを断ち切るためだったのでしょうか。
かなえられる瞬間の迫力とあっけなさに、一種の安心感を覚えました。だまされました…
そして彼氏ができてしまったあいちゃんが、二人とのつきあいが悪くなる…結構これって重大な問題ですよね。
そういえば、読み返してみて思うと…山口くんは本来魔法抜きで…やはりリカコ?
プチみゅうみゅうは笑えましたが、そこから生まれる亀裂…あいちゃんのこの態度は、もし天使の願いなしに山口くんとつきあったとしても、この激しい独占欲はあるのでしょうか?それとも代償としての呪いで本音が出てしまうのか…
そして、山口くんの告白に至る胸を締めつけ、腕の力がなくなるような圧迫感の盛り上げは見事!
しかし、これは…山口くんは本来、この天使のねがいごとがなかったらリカコちゃんとくっついていたのでしょうか?それとも…この告白自体がねがいごとの代償としての呪い?それは永遠に藪の中ですね。
でも、それを知ってしまったあいちゃんの激しい言葉…そして初めて出した本音、その本音が和解のきっかけになるか破局になるかは何が違うのでしょう。
なぜ、こうして一番醜い感情が噴出してしまったのか…この壊れ方は本当に恐ろしいです。
そして、屋上での電話の音…受諾、形のない魔物は形のあるものより恐ろしいです。
あいちゃんも後悔している…
追い詰められる麻衣、リカコの恐怖は実にうまく表現されています。崩れるコンクリート、その中とっさに麻衣ちゃんを突き放すリカコ…これは誰も責められません。極限状況で強い人間でいられる人かどうかは、普段の言動とは違います…その場にならないと、自分自身にも分からないものです。
これできれいに終わる、と思ったら…このどんでん返しが見事!さらに、最終的な結果を示さず、想像に任せる投げっぱなし…とても質のいい恐怖感です。
三人それぞれの心理描写、積み重ねていく恐怖、どんでん返し…どれも最高です。山口くんはどういう人なのか、結局単なるヒーロータイプで終始した印象ですが…
あの天使は悪魔なのか…人を悪い方向に誘導しているのか、機械的に願いをかなえているだけなのかも興味深いです。一度世界から不幸をなくせといってみたい…人類滅ぼされるかも…
しかし考えてみると、友達というのは怖いです。
この作品はシリーズになるのでしょうか?そうなっても十分面白いですよ。
やっと征海未亜という作家に、本当に会うことができた気がします。

ナミダレシピ
また素晴らしい…こういう男女の友情は理想です。この二人はくっつくことなく、大人になってからいい思い出になるのが一番でしょう…一生の親友でもいいかもしれませんが。
泣くからいじめられる…確かにそれも多くのケースで有効かもしれません。
泣き虫男というのも面白いです。僕もそういえばそうでした…ごんぎつねは僕も泣きましたね。
「わたし?だったらおことわりだから」という会話を意識せずにできるというのは中学生では稀有なぐらいすごい。うらやましいです。
その後輩の子のかわいらしさは本当にすごい。
くるくるかわる町田くんの表情を見て喜んでいるのは恋愛感情でしょうか?
で…ただポロポロと泣くだけ、というのは不思議でした。それって…望みはないのでしょうか?町田くんは諦めてしまったようですが、ここは幼い心理がどう動いたのか…。
いつも泣いている人は、本当に悲しいと泣けないということはあります。昔の僕がそうでした。なぜ山田さんも泣き出したのかも…とても深い感情移入があったようですが。
三人それぞれの涙がすごく不思議な空間を作っているようです。

帰りみちの約束
すげえ…ただただ嘆息。軽めで楽しい作風と思ったら、ここまで繊細な心理描写と精密な話の組み立てができるとは…まだ見損なっていました。
カラーも安定しており、これまで完成した作家だと思っていましたが成長もしているのがわかってすごいな、と…『SLAM DUNK』の流川の成長を見ているようです。
しかしこのカラーでの教室風景のリアルなこと…昔の空気を思い出して、懐かしくて胸が痛くなります。
冒頭から、妙にしっとりした繊細なタッチであれ?と違和感を感じました。
いきなり両親の離婚という重い言葉…だから恋に興味がない、というのは説得力あります。
通るとき彼が向けた視線、今読み返すと見事なミスリードです。それがいきなり明るくなって…そう、明るくみんなに溶け込むのを無言の一コマで表現しているのがすごい。
このあたりは全体に画面がとてもすっきりしていて、不思議な空気も感じます。
そして、妙になれなれしい接近…ここでいぶかしむ余裕はありませんでした。全く真相は読めませんでした。
土手に上がった瞬間がまた見事…こういう光が見える気は本当にします。無駄がなく細かく丁寧な背景描写に息を呑みました。
ここの思い出が父親とのつながりだけなのが、なんだかずきっと重いですが…初めて読んだときにはその意味も時限爆弾のように隠されていました。
郵便というキーアイテムの使い方もすごいです。
かなり強引に友達になってくる彼…裏無しにこういう形で男の子に、自然に間合いに入られたらどんな感じなのでしょう。
そして、お母さんの造形は今までにないものですね…こういう大人っぽい美女はこれまで見ていません。そして、ここのお母さんの表情も見事な伏線!完全にだまされました。
男の子のことを思うのがすべてお父さんのことを思うのにつながるのも、不思議と共感できてしみこんでくる心理です。
切手もすごくうまいキーアイテム、そして「手紙なんか書かないしっ」という言葉、読み返さないとその重要さに気付かないです!
「ちょっと急ぐ…から」というさりげない拒否、そしてそれを気に病んで重いが少しずつ動く…こういう心情の組み立てがすごくうまい…しかも慎一くんの心理も、読み返してみると見事に描かれています。
手紙を書くシーンがまた、その思いがよく伝わって見事…そして…だまされました。
「どうして男子って仕事のときふざけるの」という単純な疑問がすごく心に残ります。これまで関心を持たないようにしてきた、男子という異物にわく自然な興味でしょうか。
しかもここで、さりげなく二人の接近が描かれている…それが「帰りコンビニでアイス買ってこ!」という言葉にも結びついているのがうまい。すごく自然な笑顔が素敵です。
この雨がまた素晴らしい!嬉しそうな笑顔、素直に頼っているところ、雨の目に見えるような…土に雨粒が当たって跳ね返っているのさえわかります!
そして、二人の関係が突然変わるところも見事!空気の変化や二人の感情がすごく強く伝わってきて、何かこみあげそうになります。
そして、食事が「…おいし」と、家庭の暖かさにほっとするシーンもさりげなくすごく深いですね…
それが突然再婚話になり、ショックを受けていながらいい子の対応なのが余計怖いです。
「お父さんがわたしのお父さんじゃなくなることってあるの?」って、少なくとも遺伝子は…誰かお父さんはお父さんだ、と言ってあげられないのでしょうか。
少なくともこの家では、父親は存在自体完全にタブーなのが伝わってきます。
だれか、と求めて…その結果が…これはあまりのショックに言葉を失いました。
完全にだまされました。被害者意識が爆発するのもよくわかります!
言えなくなってきた慎一くんの気持ちもよくわかります。見事に組み立てられていて、いや生きていて。
そして…告白という破局に至ってしまったことが、このときは悲しくてなりません。
ここからの悲しみの描写がまたすごい。すごく静かな分、深い痛みが…「お父さんの住所を知らない」がまた、慎一くんが義兄弟だったことより…柔らかいですが深いショックとして突き刺さりました。
考えてみれば現実には、本当に父親にあんな手紙を出せるはずがない…というか一切連絡しない、させないというのに不自然さを感じるのは僕だけでしょうか?日本では面会権も一切なし、一生引き離すケースが多いようですが…絶対間違ってます。
幸せな昔の回想と、「どうして友だちがただの友だちじゃなくなるの」という…恋を知って体も心も大人への一歩を踏み出す悲しみ、そして何より「どうしてわたしはみんなにやさしくないの」という言葉の、静かなショック…
彼女は少なくとも、母親には過剰なまでに優しいと僕は言ってやりたいです。お父さんに会いたい、離婚して欲しくなかったと一言も言わず笑顔でおめでとう、だなんて…
「やぶるの?」の一言からの静から動のリズムもすごい!そして思いが爆発して…ここは本当に泣きそうになりました。
真一くんの言葉もすごく胸が痛くなります。イメージを土手と結びつける優しい空気も…
この告白の暖かさも、じーんとします。そして輝く川の光景…息もできません。
あまりにすごい作品に、言葉がありません。これほど精緻な心の描写と話の組み立て…なんて作家でしょう。

ヒカリになりたい
本当に素晴らしかったです!すごく感動しましたし、子供がいたら是非読ませたい作品です。
絵はすごくかわいらしく、安定感がありました。ブラームスの優しい雰囲気はよく出ていましたし、小道具や背景も必要な細部をおろそかにせずしっかり描いていてよかったです。
サキちゃんの年齢が低めなのも、低学年の子からよく感情移入できると思います。『二重奏』もそうですが、小学生を読者層においているのでしょうか?
冒頭の犬が嫌いになる回想を見ると、これは…サキちゃんも悪いですし、ジョン太を見せた子も失敗しています。サキちゃんが怖がっていることは犬に伝わっていますし、意味なく叩いているようです…ジョン太を飼っている子も犬を安心させていません。
僕も昔、今はなき犬を散歩するときに興味を見せた子供に触らせることがありました。もちろん両親は、万一があるからとそれは禁じていました。ただ僕の犬は決して人を噛まないようしつけられており、後半生では非常におとなしかったですし、何より触れる側の子供にも怖がらない方向から嫌ではないところを触るように指導し、同時に万一暴れても噛まれるのは僕の手であるよう犬のあごに手を触れ、安心させながらでした。
犬にとっての人間は、子供にとっての大人、大人にとっての巨人同様大きくそれだけに恐ろしい存在です。小さい子供の気持ちを覚えているなら、大人がいきなり乱暴に頭をなでたりするのに恐怖感を感じたこともあるでしょう。もしそこで牙があったらとっさにかみつかないでしょうか?
その犬に慣れていない人が触っていいのは頭と背中ぐらい、それもいきなり頭に上から手をやると叩くように見えて怖がらせるので、動きをゆっくりにして首筋あたりからそっと手を移動させるのが正解です。特に耳や尻尾は嫌がるところなので、触らないように。
僕はこの回想では、むしろジョン太くんのほうが安楽死にならないか心配です…
サキちゃんの弟も色々な形でうまく活躍しています。より小さい子供から理解させることもできるでしょうし、話の上でも非常にうまい家族構成です!
いきなり出てきた犬、そしてわかる人には盲導犬とわかるハーネス…この出会いは実にうまい。下から見上げる目線は転んでいる弟たちの目線でしょうか…そういえば、子供にとって大きな犬は見上げんばかりに大きく感じます。
北崎さんが大人の女性であるのもちょうどいいです…男性だったら老人でない限り仲良くなりにくいでしょうし、子供だとここまで暖かくサキちゃんと接することは難しい、老人だとそれはそれで難点も多いでしょう。
北崎さんの目が見えないことは絵の瞳から伝わりますが、極端に描いていないのも好感がもてます。お父さんの拒否を利用して啓蒙するのもうまいです。
そして、僕自身も盲導犬についてより興味が出てきました。自分がいかに知らないかがわかりましたし…読者の皆も、ここから盲導犬やバリアフリーについて学び始めてくれるといいのですが。
でもやはり犬が怖いサキちゃん、そしてついちょっかいを出してしまう弟、それを叱るお父さん…この構成が実にうまい!盲導犬の訓練がいかにすごいか、このシーン一つですごくよく伝わります。
犬が苦手と言えないサキちゃんの心理も、心を子供に戻してみればよく理解できます。僕みたいに“嫌われない”を捨ててかかっていない普通の子にとっては重大問題でしょう。
回覧板を回すとき、門の土台などの大きさと対照的なサキちゃんの小ささ、そして不安が直接伝わってきます。ここもなにげなくうまい!
闇の中から語る言葉、「ブラがほんとうにわたしに光をくれたんだよ」というシーンの暖かいインパクトがまた素晴らしいです。
北崎さんの親しげな語り口も、北崎さんとサキちゃんの年齢性別設定が絶妙だからこそできたことだと思います。
目を閉じて家の中を歩くシーンがまた見事の一語!読者もきっと、一度やってみようと思うでしょう。ちょうどドラゴンクエスト1の一定範囲しか照らせない洞窟のようにうまく表現された闇、わずかな段差がいかに怖いかなどすごくよく違う目線でものを見ることが伝わってきます。
僕も、その気持ちを理解したいという思いやいつ僕自身視覚を失うかわからないという不安、できれば五感をバランスよく鍛えたいという欲などから、遊び半分で目を閉じて行動することがありますからこの不安は実によく分かります。
子供にはみんな、学校から家も含めてみんな一日ずつ目隠しや車椅子、(老化体験)重い荷物を背負う、利き手や片足を封じるなどハンディキャップ状態で生活する体験が必要だと思います。近年はそういう試みもあるそうですが。
この作品はそういう意味で子供の成長を理想的に描いていますし、これを読んでそういうことを考えない子供はいないと思いたいです。いや、大人も含めてこの作品はすべての人に読んでもらいたいぐらいです!
まず目が見えないということ、盲導犬という存在を知り、「盲導犬ってなんなんだろう」と疑問を持ってから、ハーネスなど技術的なことに触れるのもうまい。
それ自体すごく興味深いです。そして、心のふれあいの話もすごく素敵な話です。それにじわっと泣くサキちゃんの感受性も、とても好感が持てるキャラクターです。考えてみると北崎さんの息子さんのことを話から省くのは大胆な省略ですが、話の無駄を省く意味では適切でしょう。
犬が苦手なことを理解し、暖かく導いてくれる北崎さんの優しさ…これも年齢設定がうまいからこそ、ですね。北崎さん自身が素敵な人でもあるのも伝わってきます。「おたがいの気持ちぶつけて理解したから」という言葉は、盲導犬だけでなく人間同士としてもとても深い言葉ですね。僕も、軋轢を何手も先に避ける事ばかり考えるのではなく、もっとそうすべきかもしれません。
ブラームスと心で語り合うシーンはすごくジーンとしました。
バスでのシーンも感動でした!運転手の言葉に胸が痛くなるのが直接伝わってきます。
そして猛犬に襲われるシーンで、犬が攻撃したのはサキちゃんじゃなくブラームスでしたか。でも始めはサキちゃんが襲われたのかと思ったぐらい、サキちゃんの恐怖感が強く伝わってきました。
犬の引き綱を取ったサキちゃんの勇気は素晴らしくかっこよかったです!
しかし、盲導犬の訓練というのは…泣きそうになりました。牙を持ち、戦う本能がある犬に…その自衛の本能さえ捨てさせる訓練なんて!人間に戦うことを叩き込むことはむしろ容易ですが、無抵抗で暴力に身を任せる訓練がどれほど難しいことかを考えれば…少し違いますが、士官は敵と遭遇して撃ち合いになっても、最後の最後まで身を伏せずに立っていなければいけなかったそうですが、それ以上でしょうね…怖くさえなります。
傷ついたブラと語り合うサキちゃんもすごく素敵です。ただがんばって、ではなく、「だからブラ がんばって」なのがいいですよ…局外者が無責任にいう“頑張れ”は追い詰めることもあるでしょうが、本当に頑張ったサキちゃんがいうのですから本当に力があります。しかも、そのサキちゃんが頑張ったのも、ブラームスや北崎さんに力をもらって…力のキャッチボールという関わり、絆、ありかたの素晴らしさ!
そして、そのブラームスが一歩を踏み出すときの緊張感と感動が本当にすごい!
最終的に、ブラームスが…事故死するなどのほうがドラマとしてはわかりやすくお涙頂戴になると思いますが、そうせず現実通りボランティアにゆだねる制度をしっかり描いているのもよかったと思います。
ハーネスを外すシーンは長いことお疲れさま、と胸がいっぱいになりました。サキちゃんの視点から北崎さんの淋しさを表現しているのもうまい。サキちゃんの決意も素敵です。
本当に素晴らしい傑作でした。ここから少しでも読者が盲導犬に興味を持ち、家族や友だちも共に学び、さまざまな障害の存在を知って、無視でも差別でもなく本当に受け入れることを学べばそれほど素晴らしいことはないでしょう。他にも『盲導犬クイールの一生』など良質の作品は数多くありますし、サイトも多くあります。
それ以上にこの作品は、前向きに生きることの素晴らしさも語っています!最高でした。

パパとわたしと隕石と
そういえば、デビュー作も軽い話でしたが父娘の葛藤でしたね。それがここまで成長するとは…非常に大胆で、そしておそらくは想像以上に多くの読者にとって人事ではないテーマ。
しかも恐ろしいほどの深さと鋭さです。
読み返すのにかなりエネルギーがいる作品です。感想自体が遅れたのは一人暮らしのため引っ越したこともありますが、この作品の感想を書きはじめるのにかなりのエネルギーが必要だったこともあります。
シャープではっきりした絵も、前作同様伝える力が強いです。
冒頭の明るさと、空の輝きは…宇宙人ものかな、などとも思わせます。いいミスリードです。
温田くんの明るい雰囲気と輝きの種明かし、ここもうまい。ページをめくるとラブラブ、というのも、今読み返してみるとむしろ辛いぐらいです。
一緒にいられない…そんなささいなことが中心の学校生活から…家に帰った瞬間、背筋が寒くなるような本能的な恐怖が襲い掛かってきます。そこらのホラーより怖い。
その壊れそうな緊張感が画面の隅々から伝わってきます。
「酒」という言葉で初めて状況がつかめたのですが…リストラがきっかけ、というのがすごい。今幸せに暮らしている読者の誰もが、来年にはこうなっていてもおかしくないのです…もちろん今同様の境涯でこれを読んでいる読者も少なくないでしょう。
昔の回想と現在と…その対比も辛いです。
これを彼に知られたくない、というのも非常に強い悩みですね…そう絞った構成、「隕石落として」と破滅願望を形にするのも実にうまい。
普段は普通に見える…それも中毒の恐ろしい面です。普通にしていても、やはり壊れてしまえばいいほど辛い…
空を見ている姿勢から彼女の悩みを察している温田君も、本当はすごく辛いのでしょう…何がそんなに辛いのか、本当は伝えて欲しいのでしょう。
その辛さと二人のラブラブの対比も、繰り返しがとても効果的です。
一緒に帰る、というそれだけのことにここまでの…吐き気がするような緊張感があるのは本当にすごい。
暴力シーンの胸の悪くなるような感じ、そして絶望感も強烈でした。これをどう解決するのか、見ていられないような思いさえあります。
もう限界、それが本当によく分かります。それは限界になりますよ…
その時の父の狂いかけた目もすごかったです。もう殺すか殺されるかしかないか、とさえ思いました。
その体育祭で、温田くんに会おうとするのがむしろ不思議です。もう二度と会えない、と思うのが自然かも、と思いましたが、ちゃんと別れを告げたかったからですか…もしかしたら、こうして別れを告げたら自殺することも考えていたのかも。
この乱入はものすごくショックでした。こんなことになったら、実際にはこの土地から追われるかも。
温田くんが後悔した、という言葉にはすごく感動しました!胸がいっぱいになります。これが最高の男ですね。
それに勇気付けられての未来ちゃんの言葉は涙が出そうでした…やっと言えた本音、そして隕石…本当は隕石は神経の反応速度より早いので、こういう対応は無理なのですが…なるほど、としか言いようがないです。
生きててよかった、とあらためて実感して…それが伝わって、やっと立ち直りへの一歩…この話では母親はひたすら防波堤になるばかりで存在感が少なかったのですが、これからは母親もいろいろ頑張るでしょう。
あまりにも重い傑作でした。ここまでの力をつけていて…もっと本誌でも活躍して欲しいです。

ティアラの風
また素晴らしい!こうご馳走責めだとたまらないです。
電車で一時間、自転車全速で一時間…って毎日二時間サイクリングって、ものすごい運動量ですね。
この広大な大地は、むしろ笑うほかありませんでした。
よくこういう環境は自然で心身にいい、といいますが、現実にそこで生まれ育つ子供にとっては最悪なのでしょう…子供は大人の理想のように、ゲームより読書や勉強を、おしゃれや街遊びより野原を選ぶことはないのが現実でしょう。
馬に飛びつくのは危険と思われますが、それだけ慣れていたのでしょうか。
そして…いきなり世話をしろ、から…家族も少しは彼女の気持ち、都合を考えてもいいと思うのですが。彼女にとっては街でおしゃれをしたりすることも大切なのに。
その苦労はコミカルに描かれているので、あまり重く感じないのが正直助かります。
ティアラと麻央ちゃんの仲のよさは見ていてほっこりします。
新条さんの言葉と、その目の悪意は僕には正直理解できません。人を貶める楽しさは、あるとは知っていますが。恨みでもあったのでしょうか。
みんなみたいにしなきゃ…というプレッシャーの重さも、想像以上です。
彼女が家の犠牲になっている、という感覚を、みんなにあわせるプレッシャーや昔いじめられた心の傷、そしておしゃれそのものへの愛着…誰か理解することができなかったのでしょうか?それがやるせないです。
それを無視して彼女を悪者のように思うことはできませんよ…いくら…こういうことになったからって!そして現実には、誰もが嫌なことでもしなければならないからって。
この安楽死という現実も非常に重いです。かつて競馬で、脚を折った馬をその場で薬殺し、それが放映されて話題になったこともありますが…耐えられないのも分かります。
この必死の看病と、それに応えるティアラの思いはすごく感動的でした。小さい頃の思い出を絡めるのも効果的です。
嫌がっていた仕事も誇りを持ってできるようになった成長も、見ていてとても嬉しいです。
これまで執着していたおしゃれなどの楽しみを喜んで諦めることができたのも…大人になったから、ということなのでしょうか。それもありなのかもしれません。

ラブリー・ラブ・ファイル
本来これは「恋愛向上委員会ジューシーフルーツ」の領分ですが…どうなるのでしょう?
病気の辛さを伝えるのは実にうまい…「なれた」という無感動から、一気に涙に変わるのが衝撃的です。
それと、アタックの明るさが対照的なのが面白いです。
この学級委員選挙が、互いの好意を示すことになるのがまた面白いです。
それが離れていく時間の描写がとてもうまい。
写真の隣にカッターナイフの抜き身があったことが、ぞくっとしました。そしてこの決意も…ほっとします。
うまくいってほしいのですが…もし失恋しても尚生きる力を得ることができれば、それ以上素敵なことはないでしょう。恋は人を殺すこともありますが、生かすこともできるんですね。
「あたってくだけりゃまちがいない!!くだけちゃっても前むきにいこうよ!」という言葉がすごく素敵です。
結構この構成も面白そうですね。これからどうなるか、楽しみです。

ディア・フレンド
ため息。そして、本編の感動と裏腹に…この作品の悪役たちの卑小な心も印象に残っています。それが本編の二人の美しさをうまく引き立てているのでしょうか。
亜由子ちゃんの引き気味な性格と、正直なるかちゃんの性格の対照…そしてそれを見ている大地くんの目が少し気になりました。パターンとして亜由子ちゃんとるかちゃんの対立も考えました。
「大きくなったらだんだんくらべられるようになってきて」という言葉がすごく重い…そして、なぜこの人たちは、彼女たち自身から見れば取るに足りない亜由子ちゃんをそう憎むのか…嫉妬、ですか。
「なんか得すると思ってんの」という言葉の醜さがまた…
生きていくレールが違う人たちが友だちでいられるか、というのがまた重い言葉です。実際にはレールが違うと、友達でい続けるのは本当に大変でしょう。
そういう思いを全て笑顔でごまかしている亜由子ちゃんの態度…そういう性格なんでしょうが。
大地くんの存在で二人の関係が微妙に変わっていく、ここは実にスリリングです。
家族の問題は…「隕石」の傷が開いてしまって、そういう意味でも大変でした。
それなりに幸せな女の子二人の夜…これがまた、それからどうなるのか不安を誘います。
その不安感はるかちゃんも感じているようです。そして、それをちゃんと言葉で表現できるのが…それさえ僕には人間としての差を感じてしまいます。
花畑のイメージも素晴らしいです!まさにこれが乙女の世界ですね。
そして、裏切られたと思って…そんな些細な誤解…そしてどうなるかと思ったら、この事故は衝撃でした!
ここでさえ亜由子ちゃんを憎んでしまう小人たちの心根の醜さがむしろやるせないです。妄執といっていい憎悪だったのでしょうか。でも、特に同様に運動部でスターの子に憧れているような読者はかなり共感できるのでは…
それで追い詰められて…死ぬことさえできない、というのは実にリアルな描写です。僕も、夢の中ですが多分太平洋戦争で、塹壕で追い詰められて死ななきゃな、と短刀を抜き、首筋にあてがったところで…引けずに目覚めたことがあります。
ここで破ろうとした手紙の中身はまさに衝撃でした。
この文面の暖かさ、そして悲しさ…これまでは彼女が、何も言わないところはむしろ欠点かと思いましたがそれは美点でもありますね。
彼氏ができたら亜由子ちゃんも自分から離れるかもしれない、るかちゃんもそんな不安を持っていたのですか…
コスモス畑での激しい悲しみの描写は胸をつくものがありました。そして、この勇気も。
これで家族が、そして大地くんとの仲がどうなったのかを描かないのもいいですね。ここを見ると、大地くんとはつきあうことなく自然消滅したようですが。
それを本の形にするというラストはたまらない美しさです。
言いたいことは今言わないと、次はないかもしれない…このメッセージがすごく重いです。

迷子のBanbi
すごい!やはりものすごい力のある作家でした。あらためて再確認。
自分が本当は養子なのでは、というのは子供にとってある意味根源的な恐怖感です。それを高ストレートに描かれると、読むのが辛いほどですよ。
恋人になる寸前のいいムード、というのもいいポジションですね。
メールでこういうことを伝えることができる、というのも便利ですね。こういう視点で携帯電話を考えたことはありませんでした。
この母親の厳しさはすごく胸が痛みます…もしかしてそういう、子供を轢き潰してしまうタイプの親の問題なのかな、とさえ思いました。出てきた瞬間から、ものすごくインパクトがあって巨大で邪悪に見えます…子供にとっての厳しい親のプレッシャーをうまく表現しているからでしょう。
「できのわるい子はうちにはいらないの」という言葉はひどすぎます。無条件の受容も家庭としては必要なのに…
その海外旅行のための戸籍、さらに隣のぼけたおじいちゃんを使うのが見事!これは普通思いつきません。
家が自分の家ではないという感覚から…この感覚は普通の家庭の子でも、誰でも覚えがあると思います。実は大人になる過程の一つなのですが…彼女の場合、それが現実なのが辛いでしょう。
「ここなら思いきり泣けるかも」という感覚も、すごく共感できます。兄の受験のため、父がファミコンを壊したときに僕は幼稚園の跡に行きましたから。くそ、思い出してしまった…
彼が胸を貸してくれたのは本当にありがたいことでしたね。
事実を冷静に受け止め、全てを受け入れてくれる彼の大きさと…一言一言の的確さはじーんとします。
「オレにはつくしんちみたく怒ってくれる親なんかいねーから」という言葉は、もう涙ゲージ99%!
それがこんな事故になって、うわっ!壊れていくジョイントのスリル、そしてこの言葉…ちょっと彼氏立場なしですが、簡単には勝てないでしょう。
それでやっと実感を持てて…ここのふわっとした空気の描写がまた泣けます。
尋希くん、「つきあわせてもらってます」はちょっと先走りですが…それがまたいい苦笑を誘って、食後のコーヒーのように後味をよくしてくれます。
ただただため息、これほどの力の持ち主がずっとショートだったなんて…なんてもったいない!

クロとタマ
またすごく重いテーマです。この話は珠ちゃんの立場で描かれており、そちらから読んでしまうことが多いでしょう…でも、もう一つの方向もあることは忘れないでください。
捨てられた犬猫の処理は残酷ですが、日本人が無責任(どうしても飼えない時、自分で安楽死させずに捨てることも含め!)に飼っては捨て、全ての捨て犬、捨て猫に飼い主を見つけることは不可能である以上必要だということを理解してください。
全ての便所は誰かが掃除しなければならないのと同様、全ての肉は誰かが家畜を殺して血と臓物、汚物にまみれて解体処理しなければならないのと同様、誰かが汚い仕事をしなければならないということを忘れないでください。
そう考えると僕が中学一年のとき、ひどく汚れたトイレの掃除で、僕がやるべきだったのに吐いてしまってできず、他の子にやってもらったことも思い出します。僕はそれだけ、やってくれた同級生より劣っていたのです。
僕は汚い仕事をしてくださる人に感謝し、尊敬します。
ふんわりした猫との遊びタイムが、いきなりバイクの爆音で一変する…永遠先生だ、と懐かしくさえ思えました。考えてみると本当に久しぶりです。
かっこよく登場した割には女の子に蹴られたり、間抜けな感じとかっこよさの対照が面白いですね。
ちなみにこの件では彼女に損害賠償責任は全くありません、もちろん。
いきなり木に登り始めるバカっぷりが面白いです。ここでは…あんな重いテーマが待っているとは予想もできませんでした。
猫の習性についての詳しさも、単に猫好きだからとばかり思っていましたが…獣医だから、という言葉の裏が読み返してみるとよくわかって、すごく辛いです。
色々と細かい仕事がある、というのがとても面白いです。
猫屋敷というのも…まああるところにはあるのですね。
女の子の必死の表情から「このウソツキめ」と来るのが面白いです。
そして、読み返してみると「このままじゃ…」という言葉の重さと、それを表現する…SIG-P220シリーズのような鋭い印象がやはり強烈です!なまってないですね。
九楼くんの猫についての無理解と、珠ちゃんの理解の深さの対照がまた面白いです。
でも九楼くんには、それがわかる感受性はあるんですね。
そして…保健所という言葉に、初読時からびくっとしました。珠ちゃんのこの激しい怒りは分かります。
強烈に共感できますし、ついでにもう一つ…動物実験という可能性もあるんだって!それこそそれを思うだけで、世界を滅ぼしたくなります。
でも…もう一つの面も理解すべきです。一つ一つの生命を絶対的に愛する優しさと、生命を数字として考えて社会を理解する冷徹さという矛盾を受け入れられなければ…どちらかに目を閉ざすか狂うしかありません。
この父親の「無責任にノラ猫をふやしちゃダメなんだ」という言葉も、真実だということを忘れないでください。彼女もいつか、それを理解する心の大きさを持てたらいいのですが。
保健所職員や死刑執行人を責めるのではなく、死刑がいやなら死刑制度に反対し、安楽死が嫌なら犬猫を捨てないよう…どうしようもない場合は自分で安楽死するように社会を変える努力をすべきです。
父親に対する複雑な思い…ずっと目をそらしていたのは仕方ないですが、これからはいやおうなしに向かい合わなければならないでしょう。
トラちゃんを助けるためのスリリングなシーンは…必要なのはわかります。ストーリー上だけでなく、心を再構成するために。
「モウイヤ ヒトリニシナイデ」という猫の心の叫びが実に心を打ちます。 
そしてこの、三匹の猫のクライマックスにもじーんとしました。ただし、それも大海の一滴、偽善でしかないのですが…でもマザー・テレサは大海の一滴に過ぎないと批判されつつも、その一人一人を愛し続けました。それはそれで真実なのでしょう。関わってしまった以上、もう殺せなかったのでしょうか。
こうして動物なんでも屋という形で…もちろんそれも、彼女の父が助けた三匹同様大海の一滴なのですが、それはそれで…。
本当は、現実に動物の安楽死も必要なのだと認めてはいけないのかもしれません。狂うか潰れるまで一匹一匹を助け続けるべきなのかもしれません。
読者一人一人が後は考えるべきでしょう。
恐ろしく重量のある傑作でした。シリーズの可能性もありますが…どうなのでしょう。しかしやはり素晴らしい実力!これからも活躍して欲しいです。

ヨシオちゃん日記
すっかり定着しましたね。
パンダが目を開けるとすごく…間抜けというか怖いというかおっさんというか、ユーモラスになるのが面白い!
クマはハチミツが好物ですが、実際には刺されて平気なのでしょうか…ちょっと心配です。
レッサーパンダの勝手さも面白いです。
オチも心温まるものがあります。

世界一☆オヒメサマ
うわ!シンデレラが実現したらどうなるか…これはうまい発想の転換です。
絵もすごく華やかさを保ったまま落ち着いています。
扉絵の大胆さが気になりますが…本編とはあまり関係なかったようですね。
このアイスが幸せ、という幸せが一番本当の幸せでしょうね。
このパフェ、確かに高いです!相当金持ちじゃないと引きますって。
いきなり小鳥がぶつかって、そして…いきなり座っている椅子がジェットコースターになったように吹っ飛ばされました。
貴人は風呂などは人にやってもらう、という身体感覚レベルの違いがうまく違和感を与えています。
その違和感のせいで、シンデレラという実感がなかなかないのも面白いところです。
まさにそれが、普通の女の子の反応でしょう。
小泉首相の戯画は爆笑しました!いいのでしょうか…というかラブリー発売日直前に辞職などしていたらどうするつもりだったのでしょう。
あまりすごい事態で、「好きな人がいるのでこんな強引な結婚はお断りします」といえないのはよくわかります。
巨大な注射器や氷の部屋、それから「しんでおわびを」とくる大げささが分かりやすくてすごく面白い!
このパフェだけは食べられない、というのが…ここで王子も気がついているのでしょうか?
王子が本当にいい人だというのも、この話をうまく引き立てています。
「わたしが自分の考えや意見を発表すれば」は、この前天皇陛下が国旗国歌について言ったことから起きた騒動を思い出します。それもまた王制の宿命…それは実権を持たない立憲君主国でも実際に独裁的権力を持っていても変わらないでしょう。
「すなおにお話しできる友だちはいないの?」という言葉の真正直さがまたいいです。そして…そこを描く花の華麗さもすごい。
梨乃ちゃんの心が、ここまでやられて動かなかったのは奇跡のようなものですね…
何もできなかった彼氏の決意もかっこいいです!
アンジェさんの言葉から、「ここではだれもがかごの中の鳥ね」という言葉…これ以上に雄弁な王制反対論はありえないでしょう。まあ王制を廃止したところで、最上層は結局かごの鳥になるのですが。
舞踏会での彼の登場は感動でした!王子様ではない…ある意味カッコわるい印象だからこそ。
王子の優しさもまた素晴らしい…
かごから飛び立つ鳥のイメージとキス、胸がいっぱいになります。
そして、パフェを食べるときのキスには体に電流走りました!心配なのは有名人になってしまった彼女が日常に戻れるかですが。
実に面白い、持ち味をよく出した作品でした。これからもいっそうの成長を楽しみにしています。

こももレスキュー
なんとなく肌が合う感じです。
なんだかあったかいタッチでどたばたテンポのいい病院描写、そして「ダンナさんもすっごいハンサムで」とくる大失敗の絶妙なリズムで爆笑、冒頭四ページで一気に引き込まれました。
で、反省しているこももちゃんがすごく可愛いです。
千秋ちゃんの話はある意味あまりに普通で、それでこうして入院しているギャップ…そのギャップを感じさせないのがうまい!この話の設定が実にうまいからでしょう。
恋してご飯ものどを通らない、夜も眠れないなどの症状を医学用語で言うのがまた笑えます!ツッコミを入れたいのは山々ですが、面白いのでいいでしょう。
この薬はあまりにも…まああればいいと思うこともありますが。
こももちゃんの行動と、ドジっぷりがまたお約束というか可愛いというか。注射器のノーコンは笑い転げています。
そして…「いたいのいたいの…とんでけっv」の気持ちのよさと、シリアスに追求した真相の間抜けさには力が抜けて机に突っ伏しました。
「将来はメジャーに」と、やはり日本の野球少年にとって夢は巨人ではなくメジャーになっていることを再確認して…まあ当たり前のことです。
それがどれだけ、巨人の二十倍ぐらい険しい道だともわかっているでしょうし。
二人の心が通じ合ったのはほっとしました…そして、「大好き!!」と抱きつくのは、なんだか汁いっぱいで熱い水餃子や点心の小さな肉まんを食べたように口をやけどしそうになりました。
どういう経緯で…かは気になりますが、すごく好みの作風なのでOK!これからが楽しみです。

パジャマでドキ×2!
タッチはすっきりしていますが、悪名高い少女コミック出身というネット情報と変な期待を持たせるタイトルにハラハラしました。
冒頭のラブラブと、なかなか進展しないもどかしさ…片思い時代の不安が両思いになったからってすぐ消えるものではない、というのはある意味まともなテーマです。
キスは、それはまあしたいに決まっています。
で…親がいないのにカギを落としたとき、なぜ両親に連絡することを考えなかったのでしょうか?
ちなみに僕の場合こうなっても問題はありません、キーホルダーとは別にズボンのポケットの中の小物入れに予備があります。
第一、現金は渡されていなかったのでしょうか?
真幸くんも…まず親に相談しろって。「ここに泊まりにきたんだろ?」と、なぜそうなる…この誤解から始まって、お互い引っ込みがつかなくなる…
それで…友だちとの電話で、キスを通り越して最後まで行く、というかほぼ間違いなくやられるといわないこの友だちって何を考えているのやら。
あ、この家に帰れない状態を思うと、僕は冷蔵庫の中身や洗濯物、ガスなど色々心配になります。
見張られてシャワーって、ほとんどのぞかれているのと変わらないような…ガラス越しの影ならいつでも見放題…
「朝まで寝かせてくれないし」という台詞は吹っ飛びます。
で、この体勢でキス以上は考えない、と?
「なに考えてんのかしら真幸くん…男じゃないわ」というの、同感。
まあ大事にしていてカッコつけているのでしょうが。
一日中クローゼットは消耗しますよね…エコノミークラス症候群が心配なぐらいです。
それで彼の気持ちを疑うのは、なぜ彼は紳氏をしているだけだとわからないかな、ともどかしいほどです。
母親が来てしまうのは…笑い顔のまま凍りつきました。
確かにこれは、彼女の親になんていえばいいのでしょう。とっさに見せた彼の迫力は相当なものです。
この状況で初めて心が通い合うくだりにはほっとしました。緊張して手が出せない、というのは正直なものです。
ここでのキス未遂は…むしろ微笑ましいです。
これからの嫁姑バトルが楽しみです。
今後また出てくるのでしょうか…どんな形か、楽しみですね。

ごまニャン
ええと…なんといえばよいやら。
本当の中身を猫の視点で見られてしまった先輩には同情します。

ニセモノ気分
小さなかくしごとの主観的な大きさをうまくとらえた、非常に印象に残る作品です。
不安定な絵も心象表現力はすごく高いですね。
高校生のふり…なるほど、気持ちは分かる気がします。
本人に見つかってしまったショックもうまく伝わってきました。
つい思いが膨らんでの告白もうまい!で、いきなりOKのセンパイって結構軽い?
「中学生とわかっても」という小さな悩みがすごく切ない…大人から見ればささいなことが、本当に大きいんだとなんとなく実感できます。
ぜんぜん違う感覚…確かに僕も中学の頃は…あ、高校生と接すること自体が全くなかったので、なんともいえません。僕自身が中学のときと高校の頃どう違ったかは…う〜ん。
寄り道…どこを期待したのでしょう。まあゲームセンターも、僕が中学生の頃は十分ドキドキの空間でした。
ごく普通に一緒にいて、一緒のことで笑える…その楽しさもよく伝わってきます。
その嬉しさが余計に辛さを増す、ここの心理描写もうまい。それで限界になって…こういう心の動きは実に面白いです。
いかにこれまで隠してつきあってきたか…センパイの側の心理描写もあるのがいいです。
ちゃんと待っていてくれるセンパイにはやはり感動します。だから…お姉ちゃん、とそこまで嘘をついて…まあいう勇気がないのはよく分かります。
しかしこのシーン、センパイの立場から見ると…読み返してみると本当に別れを告げられたのか、とすごくショックですよ。
真相が分かってみると、センパイ…百も承知で、掌でもてあそんでましたね!もう…
ま、そういうわけで嘘はつかないほうがいいです。僕は嘘をつかないようにするほうですが、それでもついてしまったいくつかの嘘のせいで、いまだに思い出しては寝覚めのわるい思いをします。一生嫌な思いをするよりその場で済ませたほうがいいに決まっていますし、大抵こうしてばれてるんですから!
すごく不思議な風味の作品でした。これがどう洗練されていくか、楽しみです。

愛をケータイしてますか?
なんともいえず好みの作風です。
純粋正統派のストーリーで携帯電話を活用するとこうなるんだな、という感じもします。
やはり携帯電話は、昔の僕にとってのファミコンみたいなものなのでしょうか?
喜びの描写とかは見ていてすごく元気が伝わってくるようで、好感が持てます。
いきなりのドジは…って、だったら…カメラつき携帯電話って、望遠レンズなどで拡張できないのでしょうか?
全部お見通しの河知くん、もう…はっきりと後の展開は読めるのですが、だからこそ最高に楽しい気分です!
しかも、「ホントに好きっていえんのかよ」などのきつい、あまりにも残酷に真実をうがつ言葉に隠された切ない男心が最高!
「ケータイもってなかったら…ひっぱたいてやったのに!!」という言葉の真剣みがまた印象的です。
ここからさりげなくメールアドレスを交換するのが実に…というかよくまああの一瞬でアドレスを覚えたものです。多分自分に送信したのでしょうが…それにしても速い。
このさりげない協力は見ていてキャーッとなります。すごく嬉しい展開です。
で、写真を撮ろうとするときなどいつもそばにいるんだから…くすぐったくてたまりません。
音を消す設定を教えてあげればいいのに、彼も照れ屋というかバカというか…最高。
こうして笑顔になったりして、メールがたまっていき…少しずつ心が動いていくのが見ていて転がりそうです。
決意してグラウンドに行って…これでめげなければ本物なのでしょうが…
ボールを、もちろんフェンスがあるから安全を確信してぶつけて彼女をかばう河知くんにドキン、と心が動くのはあまりにさりげなくて…すごい。
ここで、こんなきつい言葉をぶつける…「髪型毎日変えてきても」という言葉に、そこまで見ていたんだとむしろ衝撃でした。それに気がつかない彼女って…まあ視野が狭くなっていてでしょうが…
「楽しいにきまってんだろ」という言葉から、河知くんの痛みが強烈に伝わってきて胸がはりさけそうです。彼の思いが本当によく分かります!
「今まであたしの背中をおしてくれたのは」と、気付いていない深さでの心の変化を丁寧に描いているのがまた…避ける態度は、意識していてに他ならないのに。
さりげなく「河知のバカ」という言葉が出てきたり、こうして思いが熟成されていく過程が素晴らしい!
そして先輩の彼女の存在…先輩を悪人にするパターンより、自然で好感が持てます…ここからの彼の心の動きがまた最高!
彼の写真を「消去しますか?」で…ここで一気に気持ちが突沸するのは見事な描写です!
そして彼の心のこもったメール、ああ…ほとんど告白ですよ…なんて深い愛情。
ここからの二人、後ろを向いてピッと送信、これがまた素晴らしい後味です!まったくもう、女の子には勝てません。
あまりにも僕好みの作品でしたが、これからどう成長していくか…すごく楽しみです。

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