1999なかよしふゆやすみランド

今年の冬ラン、とにかく「明るく楽しい!」これでいいですよ、クリスマスなんだからパーっとやっていい!なかよしに暗い傾向が強いな、と嘆いていたのですが、これだけ明るいパワーがあったなんて、改めて見直しました。

巻頭の合作特集、内容は五年前の付録の手帳の焼き直しに近いですが、その間にもう読者はかなり入れ替わっているのでしょう。そして、五年前の付録手帳にはさんである紙に書いてあった、この先の「予想(妄想)」と現状のギャップにも驚きました。五年先の五十周年も見に行く、というネタで終わりましたが、五年先にはどうなっているのでしょうか。レギュラー陣のサインつきの一言コメントも嬉しいサービスです。

「Tokyo黒猫娘」絵の成長が素晴らしいです!衣服の生地や体にはっきりした生気が通っています。今までの美しさには、ある意味陶器の人形の美しさがあったのですが、今回の絵ははっきりと血の通った肉でした。品とゾクッとさせる不思議な感じも健在で、それがもっと生き生きとした輝きになっています。アクションも華麗ですし。制服での場面では透き通るような美しさも見られ、多彩な表現にドキドキしています。あ、このかたっぽ牙可愛い!ストーリーも、変にひねらないで切なく、そしてきれいにまとめています。「キスしていい?」この一言ものたうちまわりました。単純なようで、奥が深い一言・・・「余計な事いわずにさっさとやっちゃえ」という、野暮に見られたくない見栄と、「ちゃんと確認しなきゃ」と相手を思いやる気持ちと、単純な羞恥、変に確認して嫌われる恐れ、かといって下手に強引にやっても、もう考えると考えるほど頭がパンクしそうです。こう、言われた瞬間、肌の美しさがなぜか感じられます。「桃太郎侍」のパロディも、笑えました。そして、この涙でにじむのを実際にやる技法・・・これは始めて見ました。すごい効果です!

「ジングルベルベル」可愛く凶悪・・・いいですよ。人間魚拓、なら人拓でもいいような。人間の魚拓というと、なんだかおぼろげな記憶の隅に、すごくくだらないことを覚えているような・・・ま、思い出さないほうがいい事でしょう。トナピーはすごく可愛いです。魚拓シンジケート、ってあったらかなり怖いです。逸行くんも楽しいキャラです。女子から見て、このような熱血タイプは疲れる反面可愛いのでは?最後のスズリちゃんの、呆れたような苦笑しているような、それでいて可愛いと思っているのを自覚していないような、そんな表情が絶妙です。

「イブだってお仕事」この雰囲気は言葉にならないです。簡素なのにとても暖かい、何かを直撃されます。

  1. サンタクロースも時にはサボりたくなるでしょうし、でもサボっていても仕事から離れられない、こんな職場だったら楽しいでしょうね。そしてクリスマスツリーの雪、何て言っていいか分らない幸福感を感じています。
  2. 一日サンタ、さぞ楽しいでしょうね。チェチェンでは対空砲火で危ないかも知れませんが、何かあるのでしょう。ロシアでルーブルは信用されず、円やドルのほうが信用されているというネタもさりげなく面白いです。

「ジューシーフルーツスペシャル、ユカの場合」それぞれの悩み、それぞれのよさ、胸がとても暖かくなってきます。でもミカ、鈍いですね。この修正液問題、僕にとっても深刻です。履歴書一枚書くのに、確か50枚以上、一週間近くかかった事もあるのです。きちんと字を書こうとすると、内容がお留守になるもので。間違ったら書き直し、のプレッシャーがあると、それこそ何回書いても、特に最後のほうで、もうすぐと思った瞬間に必要のない事を記入していたり、できたと思ったら卒業年月が狂っていたり・・・あの時は地獄でした。一見平和な雰囲気の中、気持ちの変化が絶妙です。三人の出会い?もとても印象的でした。

「この手をほしがって」とても柔らかな空気です。ダルマストーブの湯気、保健室の薬の空気、忘れていた匂いがそのまま漂ってきます。この涙、10年近くなかよしを読んできて、多分二番目に美しい涙です。一番目は「デリシャス!」の、三千代ちゃんが流した涙、これはもう不動でしょうが。これから遠距離恋愛で大変でしょうが、お幸せに。

「Dearest Song」輝きに戦慄しました。熱く柔らかく、そして情熱を感じる、それでいて痛いような冷たさをも秘めた空気です。緊張感に背筋がぞくぞくします。それなのに、輝きに心から楽しんでもいる、複雑な興奮です。あ、僕、コカコーラ1.5リットル一気、した事があります。昔、高校受験の頃は始めて現金を持てる生活が嬉しかった(それまで、何か欲しいものは買ってもらうもので、自由に使える現金を持った事はなかったです)せいか、半ばコーラ中毒。毎週のように1.5リットルペットボトルを買って飲んでいました。それで、予備校でですからその場でどう炭酸が歯を溶かすかを実際に計算したりもしていました。このまぶしさは、一人一人が道を、夢を見て輝いているからなのかもしれないです。僕自身はそれを失っているので、このまま一生輝いている人をうらやんで、ただ生きていく、それすら僕の力に余る状態で過ごさねばならないのか、と思うとたまらないです。そして、恋に時間は要らない。代わりの面もあるかもしれないけど、恋には色々なブレンドがある、100%ピュアだけが正しいのではない、そう、この青春の輝きと、明日への希望、この歌詞が胸に染み込んできます。実際に曲をつけたくなるくらいに。

「BE WITH YOU」これで、思い出してのたうち回った人間はどれくらいいるのでしょう。懐かしさに・・・この、ひたすらすれ違いの話、昔の1995なかぞう春休み号「出会いのスケッチ」でも使われました。携帯が通じない事でベッドに叩きつける、その瞬間に吹き出して、体を大きくねじりました。こういった、好きなモチーフがあるのはとてもいいと思います。すれ違いに次ぐすれ違いで、どんどん切なさが高まっていく描写と、それが何とも言えないユーモアになっている、やっぱりいいです。最高のクリスマスですね。

「エスケープ1999」これはスリリングでした。読めなかったです、ここまでやるとは。いきなりの結婚式で何かと思って、そしてあれよあれよという間に。実際、このテンポで来られると考える暇がないです。抱き合って、確かめ合うと思ったらホワイトパレス、という小さい落ちも笑えました。拳銃を突き付けられた時、まあそれだけでモデルガンかどうか見抜くのは無理でしょうね。これは怒るでしょう。でも、下手に反撃して怪我人が出なくてよかったです。そして・・・あけましておめでとうございます。

「きみにいいこと」偽善の重さ、ですか・・・でも、その偽善をとことん追求されると、「よきサマリア人」の行為もお節介になるのではないか、どこまでは許される善で、どこからが偽善なのか、神学の問題になりそうです。僕も何か、親切やいい事をしようとしても余計なお節介にしかならないので、考えてきた事です。この不思議な重い空気、とても印象に残ります。「雨にぬれるのが好き」、僕も結構好きだったりしますが、それもまた相合傘などという事を、家が隣で小中学校の三年間クラスメートで+一年半同じ学校にも関わらず、一度もした事がなかった恨みなのでしょうか。でも、この年齢で、それを察しろというのも無茶な話のような気がします。この一瞬のダンス、なんだか胸に残ります。「おせっかいで自己満足」、そうですけど、それを言ってはどうしようもないです!何をしても、どんなに心をきれいにしようとしても、どんなに祈ってもそれは「天国に行きたいから、閻魔帳の内申点稼ぎをしている」だけなのですから。だから上からの救いで、それによって親切をできるように恵まれている、親切にするように戒められ、親切をすることを許されているというのもわかるのですが・・・。こんなに傷ついた魂に、何も通じない、もう底知れない絶望感を感じます。だからこそ、この結末がとても暖かくて、すごく幸せです。深い疑問を残しながら。

「いばら姫の円舞曲」この恐ろしいほどの美しさ、そして・・・油断していました。あまりにも深い悲しみ、全身の力が抜けるような虚脱感が心をえぐっています。この、はかない華やかさがこの時代だったのでしょうか。なぜか、時代の空気・・・わずかに宝塚歌劇に保存されている何かが匂ってくるようです。この、あまりにも美しい花は震災、恐慌、戦争と次々に襲った嵐に根こそぎにされ、わずかに宝塚歌劇という花を残しただけ・・・実を結ぶ事なく。その点、葉を吹き飛ばされても根や幹は無事だった欧米とは大きく違います。その違いが、なんとも言えず切なく、だからこそこの時代が余計にまぶしいのでしょう。このシリーズの美しさと悲しさ、言葉にならないです。

「カップでメンマ!」一体何が・・・。三分間だけのお願い、って何があるでしょうか。ゲームセンターに連れていって、シューティングゲームで死にそうになったら三分間だけ名人にさせてくれ、とか・・・ボムみたいなものですね。

「天使がふってきた」この、一見オーソドックスな扉から硬直するような始まり方・・・なんだか、腹の底の息を絞り出すような笑いです。なにげに変態なネタの連続、それに唇のアップが凶悪です。「好き」だから「食いたい」って、一瞬のギャグから・・・なんとなく、考えては行けない禁断の世界への扉は、なかよぴ読者には・・・今の読者にはわかり切った事かもしれません。いい顔の輝きも印象的。そして、転んでから立ち上がり、完走したその瞬間の美しさも。なんだか、前半と後半のギャップが強いです。イメージをひっくり返されたような。

「恋してアラビアータ」教会に行ったのでしょうか。新婚さん、一気に現実に行かなくても・・・。

「マジック・ピンク」きゃっわいぃいいいいい!かわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい!いや、もう扉だけでのたうち回るほどの可愛らしさです。この、自分が他人には見えない、という事をこんな形で示さなくても、言えばいいのに。もうこの、すぐに真っ赤になる花音ちゃんも可愛いです!アユアに支配されている時の明るい表情も、ギャップがあっていいです。こうして、言いたい事、言わなければいけない事も言えない気持ちも分ります。言葉って、怖いです。そしてこの告白、だから「でてって」の一言、すごく痛いです。一瞬のアユアの悲しさが、なぜか伝わってくるようで。だからこの、優しい結末がとても嬉しいです。

「トワイライト・コネクション」今回はものすごいスリルと切なさでした。しかし、修験道までここまで取材しているとは。こんな小さい子にこんな過酷な行を・・・。そして、この呪術の恐ろしさの描写もすごいです。日本の神道と呪術の体系が、現代に鮮やかによみがえっています。凛子について、具体的な描写は始めてですが、ここまでの深さだったとは。

「フォーチュン☆ケーキ」きゃっほう!やっぱりこの明るさ、すごく素敵です。それにこの幸せそうな笑顔、これももう胸の底から、+のエネルギーが湧き上ってくるようです。この息もつかせぬ急展開もいいです!このハイなテンポと崩れない、そして明るい美しさ、見ていてすごく元気が出ます。笑顔と描線がすごくドキドキします。アップのシリアスな表情もとても魅力的。そして、ここまで大きく騒いで、結局は、サイコーのクリスマスです!もうケーキの食べ過ぎで胸焼けしそうです。幸せをたっぷり分けてもらったみたいです。でも・・・一人ケーキ、それも丸を十個、ある意味夢ですけど、カロリーを計算したら悪夢でもありますね。

「聖夜の訪問者」切ない想いがこんな形で、天使ではなく悪魔というのが上手いです。本当は自分が彼女になりたい、この薬でなれる、この誘惑は恐ろしいです。潜在意識に押し込めたものを、そのまま抜き出していますから。でも、もっともっと大きな想いが、人間は単純ではないですが、それだけ素敵なのかも。きっとこれは、天使と悪魔の賭けだったのでしょう。宝塚の小池修一郎作品「天使の微笑、悪魔の涙」で、堕天使となったメフィストフェレスがファウスト博士を救えば天使に戻れるのに、破滅させて地獄に落してやる、とファウスト博士を誘惑し、最終的にマルガレーテの愛の奇跡によってファウストも救われ、そしてメフィストフェレスも天使に戻ったように。もしも誘惑に屈したら由希ちゃんの魂をもらう、でも誘惑に屈しなかったら人間としてやり直す、と約束していたのでしょうか。愛に満ちた人間としての生が無事終わり、天使に戻れる事を祈りましょう。

「お父ちゃんといっしょ」あ、熱い!この汗臭い熱さ、まぶしいまでに強烈です。このまま、男性不信にならなければいいのですが。カッコよさにも色々あります。

「ドリーム・ミッション」この美しさと華やかさ、色気はすごいです。この、存在価値を徹底的に追及したストーリーも、痛いほど胸に来るものがありました。でもこの、芸能界の暗部ネタはあまりにもストレートで、正直びっくりました。それに、この怒りと、底知れないところに引きずりこまれるような恐怖も強烈です。人間の構造を理解していて、それで癒すのではなく利用して支配するなど、人間の所業ではないです。ナイフを手にした一瞬、その時の殺気の表現は凄まじいの一言。この、自分を好きになりたくて、でも自信が持てなくて、それは誰も同じ。だから、これほどの共感を感じるのでしょう。このエネルギーと人間理解、期待できそうです。

「スパンコール☆ラバーズ」外見、印象、イメージ、固定観念・・・人間の心の、奇跡的なまでに深く広い様々な能力が恨めしくなります。こんな副産物もあるのですから。はたから見ると、単に見る目がないだけですか。

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