羽芝一理(はしば いちり)

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作風概説

 表情をあまり感じないおとなしくそっけない印象の絵だが、全身でうまく感情を表現できる。

 技巧のデパートという感じがするほど非常に複雑なカメラワークを駆使し、画面一杯にものすごい情報量が詰め込まれている。多少陰影が強すぎる感じがあるが絵のバランスもよく、細部の書き込みもしっかりしている。鋭い感情表現も印象的。崩すところも大胆にやっている。

 感情移入もしやすく、ストーリーの流れは自然で新しさもあり、さりげない伏線もうまい。男の子の感情を描写するのが特にうまい。


代表作

2001「通りすがりの恋」
 バレンタインデーにチョコなし・・・哀愁を背にした帰り道、女の子が走ってきた!一瞬期待し、知らない子だったのでがっかりしたら彼女とぶつかり、放り出されたチョコをついキャッチしてしまった。
 でも白いリボンの彼女は泣きながら「もう受け取ってもらえなかったから・・・あげます」と走り去った。
 彼女に返そうとしたが、やはり彼女は受け取ろうとしない。そしてある日、その事を馬鹿にするように話しているチョコの宛先の男子に怒りを爆発させてしまった。男の子の繊細な心の動きを丁寧に描いた佳作。

2002「バーミリオンの空」
 いちかちゃんは絵のコンクールが近いので頑張っている。ある日水を捨てに行ったら突然真っ赤な頭の男子が落ちてきて、描きかけの絵も台無しになった。
 むかつくけれどなんだか彼、嘉穂ひろゆきと腐れ縁になってきた。でももてる彼の追っかけがまた描きかけの絵を破いてしまい、彼に当たったら突然「生きがいがないんだろ?・・・だったら死ねよ」といって抱え上げて・・・ダイナミックに空間を使っている。

2002「セカンドタイム」
 真夏の太陽に寝ぼけていると、後ろからゴミが飛んできた。元隣の席だった杵築拓が真里ちゃんにちょっかいをかけてくるのだ。
 好きなんだろう、とからかわれたが、真里ちゃんにはもう好きな人がいる。去年の受験の前に、諦めかけていた彼女をボールで励ましてくれた背番号12の、名前も顔も知らない彼がどうしても忘れられない。
 杵築は恋っていえるのかね、と否定するけど、会いたい気持ちだけは本物。暑さで混乱する頭、膨らむ迷いの中、杵築だったと判明するが彼は幻影を追うなと拒絶する。


今までの実績、現在の地位

 デビューして間がないが、コンスタントに増刊に出てぐんぐん成長している。


個人的な感じ、思い出

 デビュー作はえぬえけいの影響が目立ったが、それ以降どんどん技を増やし、表現力を高めてきた努力には感心している。暗い感じも気になるが、それもまた個性かもしれない。これからどれだけ伸びるのか楽しみ。

 できればこの表現力を活かせるような、大きい題材に取り組んで欲しい。今はまだ技術が先行している感じだから。