原明日美(はら あすみ)

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作風概説

 最近は正統派に近く、柔らくさらっとして暖かみもある、黄金についた濃いトパーズのような独特の色気のある絵。ただしやや過激で現代的な表現が多い。

 イジメや学校の問題などリアルな問題をストレートに描いて異彩を放っている。
 人物造形、感情表現もとてもうまく、大道具やカメラワークをうまく使ったドラマチックなシーンの演出がとてもいい。キャラクターの成長も大きい。
 ギャグも独特なえぐさがあり、面白い。派手なクライマックスとキスシーンも特徴。

 言葉使い、ファッションなどの感性がやや眉をひそめる意味で現代的で、デビューしてからしばらくはギャグマンガのような過激さで従来描かれなかった「コギャル」といわれる階層を代表していた。
 ただ、作品のモチーフ等から伝えてくるメッセージには普遍性がある。


代表作

99「199V」
 1999年7月人類滅亡というのは解釈者の早とちり(現に4行目、「その前後火星は幸せのうちに統治するであろう」とあることから見ても人類滅亡とは一言も書いてなかったが)だったのだろうが、それより前の話。
 人類滅亡以前にちゃんと恋愛…特にキスやその他を経験しておきたい、と燃えている葉澄。でも惚れた裕貴くんはつれなくて、告白しても友達どまり。従来の少女マンガとは違う現代的な生活世界にいる、それでいて共通項のあるリアルな心理を描いた衝撃的なデビュー作。

99「ゴーゴーA女」
 一人だけ処女が重く(1999年なつやすみランドはこんな話の特集)化石になりたくない千夏。男運を上げるために妖しいものを買いまくって妖しい女となった彼女は友にも捨てられ、オタクに追われてかっこいい男に助けられる。そして休憩、でも彼女はその意味を知らない。
 眉をひそめるような愚かな行動から始まるしギャグも極端だが、妙なリアルさで大人の本当の意味、自分を大切にすることを巧みに語った、憧れと焦りで急ぐ少女への極上の応援歌。

99「天使がふってきた」
 天使に奇跡が起きて先輩と・・・と祈った由紀ちゃんに、本当に天使が降ってきた。でも・・・腰に布を巻いただけの男が落ちてきて、そのまま押し倒してキス!どう見ても変質者だが、彼は天使と言い張っているし、自分以外の人には彼が見えない。行動も何も変態だが、不思議と爽やかな面もある天使の協力で、とりあえず先輩の事は措いて部活の練習に励む事に。でも・・・一見めちゃくちゃなのに、しっかりとストーリー構成は正統派という異色の佳作。

2000「南国 Vクリスマス」
 金持ちの彼氏と南国でイブ、を夢見るあずさと、彼女をからかう宮川寿が売り言葉に買い言葉で賭けを。相手に恋人ができて自分にできなかったら、家族から借りた大事なものをあげる……。
 互いに妨害するうち、あずさはふと、目に入る男を寿と比べる自分に気づいた。完全に正統派といっていい、かなり作風を変えた意欲作。

2001「キレイになりたい!」
 小六の春、いきなり仲がいい上田が「オレ彼女できちった」と爽子ちゃんに。
 がーん、大好きだったのに。でもあきらめきれないから、キレイになって振り向かせてやる!とおしゃれを始めた爽子ちゃん、上田は相変わらず友達感覚でつきあっている。
 そんな、一見いつも通りで内心微妙な時間がついに崩れる時……失恋からなのに、心も外見もどんどんきれいになっていく姿が見て心地いいし、心が弾けてからの展開も見事。ストレートでとてもいい作品。

2002「学園天国」単行本全一巻。
 一色四葉、十四歳が親の見栄でおこずかい値上げにつられて名門泉学園に入ってみると、そこは超のつく校則管理教育校だった。
 転入早々壁を登って飛び越えたら、超美形の腕の中に飛び込んで…彼は生徒会長の泉蒼井。悪そうなお坊ちゃま、小早川樹ともう一人の校則違反者菅野優ちゃんとともに生徒会室に連行され、会長は冷酷にも優ちゃんの髪を切り落とした。許せない四葉はタンカを切って生徒手帳を破り、学校を変える運動を始める。
 孤立無援の状態だったが、最後には体を張った主張が受け入れられて…少女マンガから久しく絶えていた学校生活のリアルな悩みを正面から描き、「ザ・ネクスト2」に優勝した話題作。
 連載では風紀委員長となった彼女の厳しい戦いと、その中での成長を激しく丁寧に描いた。

2002「世界でひとつだけの%」
 大吾くんとつきあってそろそろ半年の華菜ちゃんは、最近彼が冷たいのが不満。
 見つけた白い四つ葉のクローバーから変な妖精が出てきた。願いを叶えてくれる、というので巨乳になったりしたが…ギャルのバカな部分を強調するギャグと正統派のテーマを見事に融合させた。

2005〜6「トモダチ」単行本全三巻。
 小さいころのいじめ地獄から救ってくれた初めての本当の友達、藍…二つのぬいぐるみを形見に一時別れたが、また同じクラスになることができた佐倉やまと。
 でも、彼女が学級に入った瞬間、そこにあったのは冷たい拒絶と冷酷無残ないじめだった。しかもそのいじめの首班は変わり果てた藍…
 女の子のありのままを冷徹に、それでいて圧倒的な熱さの友情を正面から描く衝撃作。

2006〜8「スクール×ファイト」単行本全四巻。
 カツアゲから助けた彼は学園一のセレブ、一之宮涼様だった。というわけでいきなりセレブの組である一組に編入された早坂未来ちゃん。
 彼の「きみみたいなコがそばにいてくれたら毎日が楽しいのかなって」という言葉に頑張ろうと思うけれど、一組の専用通路を使えといわれるのも辛い。
 そして一組の皆が、下の組の生徒を見下しいじめているのを見て切れて…
 格差社会を敏感につかんだタイムリーな作品。

2009「ツバキヨ」
 苦労ばかり、特技はメンチ切り(別にメンチカツではなく視線での攻撃の意)の生徒会長、桜井成二が愚痴っていたら、いきなり少女との出会いが…
 生徒会には今日もいつも苦情の山。その最大の理由が、その出会った相手、触れて相手の心を読む超能力者の椿清衣ちゃん…確かに心は読めるけど、それ以上の「智」が一切ない彼女のために学園はいつも大惨事!

2010〜「中川翔子物語」
 アイドルだった父親となかなか会えなくて寂しかった幼少時代、父の急死、中学からの激しいいじめ…さまざまな苦難を乗り切って今人気絶頂の座にいる中川翔子氏の評伝コミック。


今までの実績、現在の地位

 従来とは全く違った階層の高い感性で注目されていたが、軽い異端性は残しながら正統派作品を描くようになった。
 人気、登場率もかなり高く、2001年「ザ・ネクスト」で見事優勝。
 連載開始がかなり遅れるというアクシデントもあったが、本誌連載もきちんといい作品にした。

 その後も短編を多数発表して単行本「Happy Birthday」「未来は僕等の手の中」も出したし、2005年連載復帰。「トモダチ」が大ヒットし、以後いじめのエキスパートとして安定した地位を確立。


個人的な感じ、思い出

 表現の新しさと大胆さにびっくりし、不安と期待をこめて見つめていた。コギャルをベースにした作品にもさりげなく普遍的なテーマが隠れているのを知り、やはりコギャルも同じ女の子なんだな、と不思議と安心している。

 初期は強すぎる現実感が逆に、一種の不快感を感じさせた。ただ、本当はしっかりと正統派の表現すべきことを理解しているようで、その点誤解していたようだ。
 もしかしたら、純粋すぎて、激しすぎて、その本質が見えていなかったのかもしれない。

 正統派に近い感じになってからは、今まで極端な行動に隠れて見えなかった絵のきれいさや多彩な表現技巧に素直に感心しているし、話にも感動している。
 ギャルも含めたありのままの姿と、態度や服装は崩れていても内面は同じ多感な少女だということは描く価値があるはずだ。

「学園天国」ではいつにないほど、読み返してもキーボードを打つ手が震えるほどの激しい怒りを覚え、そして主人公も皆もきちんと成長させる力に脱帽した。恋の決着が少し不安定だが、それも読者の想像に任せるということで面白い。

 近年の「いじめ」を正面から描き、精神的地獄ともいえる普通の学園生活を冷徹に描きつつ激しい怒りとストレートなメッセージでの解決も描く作品には、読み返してコメントを書くことすら苦痛なほど感情を切り刻まれているようだ。
 このページを見直してみて「Happy Birthday」などがないのは…勇気がなかったからだろう。
 それほどの作品を描ける作家は現在唯一無二。堂々ととことんやって、少女たちに希望を与えて欲しい。