えぬえけい

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作風概説

 現代的で凄まじい表現力がありセンスがよく、技巧に長ける。特に告白前後の画面構成は言葉を失うほど上手い。絵も鋭さと柔らかさを兼ね備え、スタンダードで無駄もなく非常に美しい。感情表現力も抜群で男子の笑顔、女子の真剣な表情や呆然とした顔が特に魅力的。情景を通じた無言の表現も凄い。

 少年誌レベルの鋭いアクション&スポーツ描写、トピックスの新しさ、画面の明るさとストレートな美しさ、バランス、線の切れと暖かさ、キャラクターの魅力、心理的な上手さ、感情表現力、ギャグなど全て極上。
 実力では間違いなく「なかよし」いや、「ちゃお」「りぼん」…マンガ界全体でも最高ではないか?話題にする物事の本質を鋭く理解する知性もある。ストーリー構成もうまく、とてつもない状況を作り出したり一見わかりにくい展開を見事に本筋につなげるのが得意。
 とても斬新な、心理トリックや論理パズルまで用いる複雑な仕掛けを重視した展開も注目。

 毎回モブのどこかに「羽根のついたバッグを背負った少女」がいる、アシスタントをしているナフタレン水嶋のマスコットを出すなど遊び心もある。間を巧みに活かし、エロに行くと見せて外すなどのギャグも最高。

 もう言葉ではこの人の力は万分の一も紹介できない。ぜひ「神様がくれた夏」を買って読んでみて欲しい、絶対損はさせない!


代表作

97「いちばんの奇跡」
 相原舞衣ちゃんは品行方正な生徒会長。でも、実は全てが演技で、人目が無ければ告白を断って「あたしは高嶺の花なんだよ」と鼻で笑うような子だった。それを峰田くんに目撃され、脅されるかと思ったら単に素で語り合うだけ。体育祭の日、峰田くんだけは素の自分を受け入れてくれている、と思っていたのに抜け出そうと考えたのを「相原さんがそんなこと」と言われ、何もかもが嫌になり、本当に抜け出して秘密の場所へ。
 でも、その時峰田の怒鳴り声。表と裏どちらも受け入れてくれる彼に勇気づけられ、制服のままでバトンを受け取って!感動的なストーリーと斬新な描写、特に土を蹴る一瞬の、感性が爆発したかのような少年誌をしのぐアクション描写力、圧倒されるほどの絵の上手さに驚嘆した。

98「RsR〜アールズレボリューション〜」単行本全一巻。
 憧れの小田先生に個人指導で浮かれている里緒ちゃんだが、実はそれはギャンブルだった。主席の新島玲を抜くためにカンニングを強要され、絶望する彼女のパソコンに一通の電子メールが届く。”親愛なるR様”へのパーティの招待。
 その暗号を解いた彼女がマンションの一室で会ったのは元演劇部の期待の新人だったが突然退部した美少女赤穂るかと、バスケ部のスーパールーキーだったが故障で退部、不良に堕ちていた武上竜也、そして新島玲本人。集められた4人は皆陰謀で心身に傷を負っており、玲は問題を解決する特殊部隊を結成したい、と。革新的な舞台仕立て、ストーリーの複雑さと高度な仕掛け、恋愛表現の鋭さなど衝撃的な作品。

99〜2001「B-ウオンテッド」単行本全六巻。
 沙生が期待に満ちて入った中学の男子はカスばかり。失意の中、奇術部の超美少年二人組、優しいけど熱い所もある透先輩とちょっと軽い感じだけど明るい薫先輩に出会う!
 でも実は彼らは泥棒で、真舞流の拳士としての彼女の力を利用している。彼らの狙いは大正時代活躍した伝説の怪盗「B」の宝で、その鍵を争う現代の怪盗「B」に対抗して自分たちは「B'」と名乗っている。だが彼らと、自らも真舞流の拳士である「B」には関わりがあるよう。沙生ちゃんは透先輩が好きなはずだけど、薫先輩にも揺れるし接触してきた「B」にもどきどきしたりちょっと複雑。先が全く読めない、恐ろしいまでの展開の速さとスリルとラブ、アクションにトリックで話題の超人気連載。

2002「神様がくれた夏」短編集表題作。
 楽しい夏休み、オシャレな服や可愛いグッズを友達と楽しむ毎日。そんなある日、夏希ちゃんを男が呼びとめた。その男は野球部の顧問で、元リトルリーグの監督。
 野球をやめた彼女を強引に誘い、一勝三千円の報酬で…かつてエースピッチャーだった彼女は連戦連勝を重ねるが、ある日一人の少年を客席に見かけ、リズムを崩す。彼は天才スラッガーの鷹見英一。街に戻ったはずの夏希はある日、なぜかグラウンドに…つかの間のチームメイトだった畑中が、キャッチボールを半ば強要した。
 リトルリーグのチームメイトで仲良しだった英一に告白したとき、「野球やる女は好きになれない」と言われて投げられなくなり、野球もやめていた彼女…野球が好きと思い出し、復帰した試合は英一がいる強豪。英一はずっとベンチで、1−0で勝っていた九回表、肘の痛みに同点ランナー。そこで英一がバッターボックスに…野球の迫力、緻密に描かれたボールによる感情表現、さりげない背景による暑さの表現、様々な場面の美しさ…言葉では到底この衝撃と感動は伝えられない。単行本を読めとしか言えない最高傑作。

2003「ちゃんねるW」全一巻。
 アイドル志願だけどいつも落ちているありすちゃんが、ウサギのぬいぐるみを抱えた少年と激突、時計を拾う。届けに行った先はローカルテレビ制作局で、オカルト番組のキャスターにスカウトされる。
超怖がりのありすちゃんは怖いけど、さっきの不思議な少年、時兎くんもいるしなんとか…でもやっぱり怖い!「なかよし」全面協力(作者+担当すだっちも登場)で超常現象を追求するスリル満点、不思議満載の作品。

2004〜「名探偵夢水清士郎事件ノート」原作:はやみねかおる(講談社 青い鳥文庫)、単行本第一巻発売中。
 隣の古い洋館に引っ越してきた、長身で黒ずくめで表札に名探偵と書いている変な人…
 元論理学教授という話だけれど若く、家具はソファーと本の山だけ、食事も自分で用意するのを忘れ、昔自分が解決した事件も自分の誕生日も忘れている変な人だけど、かわるがわる見に来たあたしたち三つ子の岩崎亜衣、真衣、美衣ちゃんの正体を推理だけで見破る実力は本物?
 でもいまいち信用できないから、とりあえず「教授」と呼ぶことに…定評のある人気シリーズを完全コミック化!


今までの実績、現在の地位

 衝撃的なまでの力でデビュー、あっという間にトップレギュラーとなった即戦力。デビュー作より早い本誌初登場、デビューして間もなく連載開始ととんでもない特別扱いだが、それでも足りぬほどの力を持っている。

現在は頻繁に本誌に前後編などの読み切りを掲載、連載も多いがなかなか定着しきれない感じ。


個人的な感じ、思い出

 少年誌でもレギュラーを張れそうなアクションの描写、信じられないほど鋭い情景とコマ割りからの感情描写、様々な仕掛けでできた奥の深いストーリーなど、いつも驚かされている。
 実力がこれほどあるのに「なかよし」ファン以外の知名度が低く、ヒットは飛ばすけれどアニメ化されるような、涙が抑えきれないようなホームランがないのが不思議でならない。

 このまま「なかよし」を支える作家として、さらに成長してほしい。
 そして早くその圧倒的な実力にふさわしい……アニメ化、いやそんなレベルではなく、その実力でも難しいような大きな主題を見つけ、マンガの古典として後世に残る偉大な傑作を作って欲しい、作れるはずだと期待している。個人的には古典文学など骨太の原作や歴史ものがいいと思う。
「名探偵夢水清士郎」シリーズはとてもいいアイデアだと思う。原作もうまく活かしているし、えぬえワールドならではの力もある。安定してがんばって欲しい。