第二次スーパー宇宙戦艦大戦
-無限要塞と極悪艦隊-

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スーパー宇宙戦艦大戦、完結しやすさ優先の一本道…のわりに進みませんが。

*「スーパー宇宙戦艦大戦MW」の続きでもあります。
*注:〓冥(ヨウ冥)は各自変換お願いします。

《プロローグ》

 無辺を越えた多元宇宙。それぞれに同じ名の地球と、ある時点まではほぼ同じ歴史の宇宙が分岐し……併存している。紙が重なって本をなすように。
 中には地球の名を持たぬ宇宙もあるが、そこにも人類と同じ姿、同じ心の人々が文明を築き、歴史を重ね、宇宙に飛び出している。
 その多元宇宙に、何かが起きた。
 本をアイスピックで貫くように。こぼしたコーヒーが、何ページも染みとおるように。
 いくつもの主力艦が、艦隊が。戦場に急ぐ艦が、故郷に向けて敵から逃れる艦隊が、海賊を追い詰める艦が、何かを求める船が、超光速航行中に異常振動を感じた。
 一つの、宇宙の墓場と呼ばれる宙域。テレザート星、かつて別の戦いでタネローンとも呼ばれた禁断の惑星近くの、危険な宇宙気流の中に、数多くの艦が出現した。
 激しい揺れ。別の艦を探知し、衝突回避。宇宙気流を探知し、姿勢制御。まず、全ての艦が必死だった。

 反逆者の汚名を着て地球から飛び出し、土方艦長の指揮でついに目的地を目前としたヤマト。
 連れ去られたコズマ博士と001を追って飛び立ったイシュメール号改。
 故郷に里帰りした山吹先生を追って、ペンギン村から飛び立ったスランプ号。
 再び集まったフリーデン。
 そのヤマトを海賊として追い、またテレザート星からの通信に混じる〓冥の情報を追ったラジェンドラ。

 オールドタイマー遺跡の力で虚空に消えたヤマモト・ヨーコたち。
 同じ遺跡を別の面から調べていたペリー・ローダン。

 ラコタ星系の破滅に衝撃を受けつつ、遠い故郷を目指し次の目的地に向かっていたアライアンス艦隊。
 追撃から逃れ、ある星を守る任務を胸に旅を続けるスターリーフ号。

 圧倒的な敵との戦いを前に、帝国に救援を求めダハクに乗って旅立ったコリン・マッキンタイア。
 救援を求めて宇宙に旅立った宇宙軍士官学校の教官と生徒。
 その道連れとなったエンタープライズ。

 切り札を求め、内戦から逃れるように旅立ったハガネとヒリュウ改、ラー・カイラム。
 謎の女の依頼で、鋼龍戦隊に奇妙な小包を届けに出発したソードブレイカー。

 それは出会いであり、再会でもあった。

《1 呼び声と汚名》

 宇宙戦艦ヤマトが反逆した。はるかイスカンダルまで往復し、地球を救った栄光の艦が。

 始まりは、ヤマトが輸送艦護衛任務の最中に受けた、謎の敵からの攻撃と謎の通信だった。
 その通信を受けたのはヤマトだけではない。地球の研究所も受け取っていた。真田志郎、そしてギルモア博士、則巻千兵衛、海賊課も。また、ニュータイプであるティファも予感を受けていた。

 司令部は警告を無視した。
 その傲慢と無能に憤った、ヤマトの古代進らは反逆とされても、通信の源を確かめる決意を固めた。

 ほぼ同時に、ギルモア博士・コズモ博士らが属する国際宇宙研究所が別のメッセージを受け取った。
 コズモ博士が、宇宙そのものの根源にかかわるエネルギー、ボルテックスの理論研究を進めた直後。まず001が警告を発した。
 そして未知のメッセージに混乱する研究所の近海に、地球防衛軍のあらゆる防衛システムをくぐりぬけた巨大な宇宙船が災害を振りまきつつ出現し、海底に沈んだ。
 それは帆船のような、飛ぶ鳥のような優雅な曲面で構成された船だった。海底で008が調査に向かったとき、その壁が開いて一人の少年が研究所を訪れた。
 サバと名乗るコマダー星から来た少年の話では、その星はゾアのダガス軍団に滅ぼされたという。
 ゾアの狙いは、ボルテックスの研究をしていた科学者、サバの父親コルビン博士の研究を奪うことだった。
 助けを求めて旅立ったのはサバの母親だったが、追っ手の神経破壊光線で母親も護衛兵も死に、生き延びたのはサバだけだった。

 防衛軍司令部は、その警告も受け入れようとはしない。むしろパニックを恐れ、サバの存在自体を秘密にしようとした。スペースウォッチコマンドが破壊されても、立体映像のガロに脅されても、対策一つ立てようとはしなかった。
「アンドロメダがあるんだ、この地球に敵はいない」
「優先順位というものがあるんだ。知ったことか」
 だが、ギルモア博士たちは別だった。そしてヤマトの乗組員たちも。

 009たちは、もとより防衛軍には属していない特殊な存在だ。
 そしてひそかに古代たちと連絡を取り、互いをサポートして旅立つ決意を固めた。そしてサバ少年が乗ってきたイシュメール号を改造し、武装を強化している最中に、001とコズモ博士が誘拐されたことが旅立ちを急ぐ理由となった。
 古代たちヤマト乗員もヤマトの修理改造を急ぎ、ともに決死の覚悟で宇宙に旅立つ日を迎えた。

 海底基地のハッチを体当たりでぶち破ったヤマトが、岬の研究所から海に漕ぎ出したイシュメール号が、海上で合流すると波を蹴立てて飛び立った。
 防衛衛星を破壊したヤマトに月からかつての航空隊が、新鋭機を引っ提げてヤマトに着艦したのは心強い援軍でもあった。

 同じ日に則巻千兵衛たちが宇宙に旅立ったのは、地球の危機などとは何の関係もなかった。千兵衛もメッセージは受信していたが、それどころではなかったのだ。
「はかせー、みどりせんせいが、学校やめちゃうんだって」
「な、なにぃ?」
「結婚する、とかあかねちんが言ってたよ」
「そ、そんな……」
 引き留めようと飛び出した千兵衛たちの目の前で、マンションを襲った巨大UFOは、怪しい光を放って山吹みどり先生を宇宙のかなたへ連れ去った。
 それを追いかける……それだけだった。
 千兵衛、アラレ、ガジラ……そして木緑あかね、空豆タロウとピースケ兄弟がスランプ号で飛び立ち、ヤマト・イシュメール号と道連れになったのはほんの偶然だった。

 月に近づくころ、ヤマトとイシュメール号に、突然航路外から奇妙な宇宙船が近づいてきた。
 雪がまだ出てきていないので、レーダー監視が不在。相原が通信から気がついた。
「メッセージ、入っています」
「メインパネルに投影しろ」
 古代の命令で見上げるパネルに、曲面で構成された駆逐艦サイズの船が浮かぶ。
「登録されていません」
「波動エンジンでもないですね。ですが、スピードはかなりのものですよ」
「所属と認識」
 古代が言いかけた時、必死の絶叫に相原が顔をゆがめヘッドホンを外した。
「と、トイレを、トイレを貸してくださーいっ!」
「おれたちもたのむ!」
 髭の、少し老けて見えるが二十代後半の太った男性と、十代の少年少女が脂汗をたらし、苦悶の表情でうめいている。
 誰もがよく知っている、切羽詰まった表情と腰つき。
 ヤマトのクルーが呆然としている隙に、さっと宇宙船は横付けし、気圧されたように開けられたハッチに飛び込んで、四人がトイレに全速でダッシュした。
 その背後では、一人の少女と翼のある小さいヒューマノイドが楽しそうに、トイレを我慢して足踏みする動きをまねて踊っていた。
 千兵衛は、船にトイレをつけるのを忘れていたのである……

「いやー、助かりましたよ。すばらしいトイレがありますなあこのヤマトは」
「トイレを忘れて宇宙に出る人があるか……」
 古代があきれて頭を抱える。
「生活班にはあらためて感謝しなければな」
「トイレが故障したら、と考えただけでも恐ろしい」
 島や南部があきれ果てていた。
「則巻千兵衛博士?世には出ないが、素材工学・ロボット工学・人工知能・時間工学の天才と言われる」
 真田がピクリと反応した。

 そんなハプニングもあったが、ヤマトたちは月近くでコスモタイガー隊の合流を待つ。
 そこに、突然警報が鳴り響いた。
「何?」
「軌道基地から、宇宙革命軍のクラウダ部隊だ!」
 ずんぐりした人間型戦闘機が三十機、コスモタイガー隊のいない方向から高速で迫る。
「くそう、コスモタイガーはまだ非武装だぞ!」
「全艦戦闘配備!パルスレーザー、迎撃用意!コスモゼロで出る、後を頼む!」
 古代が飛び出す。
「戦闘配備!」
 009と則巻千兵衛が叫ぶ。イシュメール号とスランプ号の側面に、数は少ないが強力な対空機銃が出現する。
「人型機は戦闘機ではありえないほど機動性が高い、気をつけろ!」
 真田の警告。
「あんなふざけたやつらに負けるか!」
 古代のコスモゼロが飛び立つ。

「なんて機動性だ」
 手足を鋭く動かし、瞬時に方向転換し、さらにライフルを追随させて射撃する人型機に、コスモゼロは翻弄されていた。
 倍以上のスピードでかろうじて引き離すが、その隙に母艦を狙われたら最後なのだ。
「荷粒子反応弾は、戦艦を一撃で撃沈できる威力がある!気をつけろ」
 真田が叫んだ。
 機銃も人型機の鋭い動きに追随できず、巨大なビーム刃が艦橋を狙う、そこにビーム砲がビーム刃の基部を貫いた。

「フリーデンだ!ヤマト、イシュメール号、応答せよ!救援に来た!」
「フリーデン?」
 古代のいぶかしげな問いに、
「ああ、あの第八次宇宙戦争を止めたフリーデンだ」
 009が笑顔で返す。
「サイボーグチームも!でも、001の気配がない、とティファが」
 大型狙撃銃を構えた、ビットモビルスーツを改造した人型機の、赤いジャンパーの少年が叫んだ。
「ガロードじゃないか!001はさらわれている、助けに行くところなんだ」
 002が嬉しそうに呼びかける。
「知り合いなのか?」
 古代の問いに、
「ああ。月での戦いで。フリーデンのジャミル・ニートだ。ヤマトの叛乱に加わらせてもらう」
 シールドについたエンジンで加速した、大型の人型機に乗った男が返す。
「あと、ちょっとここで探し物があってね」
 と、Gファルコンに乗った少女と、ジェニスカスタムに乗った女性が敵を攻撃し、飛び去っていく。
「よおし、援軍に恥をかくな!」
 南部が叫び、素早く主砲に対空散弾を装填させ、本格的に戦いが始まる。
 大型のガトリング砲を持つレオパルドデストロイ、機動性の高いエアマスターバーストが暴れまくる。
 ガンダムXディバイダーが敵機を切り捨て、別の方角からヤマトを狙う敵機を二機とらえる。一方にはビームマシンガン、もう一方にはシールドの多連装砲で撃破する。
 そして、ガロードが鮮やかな狙撃で敵旗艦の砲門だけを沈黙させ、素早くGファルコンが運んできた人型機の残骸に乗り移った。
 その残骸は、敵から見るとちょうど月のへりに漂っている。
「撤退しろ!サテライトキャノンで消し飛ばされたいか、月はすぐそこにあるんだぞ!」
 平文で公開通信を絶叫。
「うそをつけ、月基地は破壊されている」
「戦後、修理されたらしいぞ」
 うわさと、恐怖が敵部隊の間を駆け巡る。
 そしてガロードのところから、強烈な光芒が敵の母艦をかすめる。
「あ……」
 サテライトキャノン以上の恐怖はない。人型機部隊は撤退していく。
 もともと人型機は機動性は高いが航続距離が短く、高速の波動エンジン搭載艦を深追いはできない。
「助かったよ」
「ティファからの通信で指示された」
 と009。
 月の陰から艦首の大型砲、ノヴァミサイルを発射したイシュメール号が姿をあらわした。
 波動砲を地球人に撃たせるのは無理だ。そしてノヴァミサイルだけでは、知られていないので大きな被害を出す。サテライトキャノンは、誰もが知り恐れている。
 相手の心理を読んで戦わずして勝つ……それが、「過ちを繰り返さない」というガロードの信念だ。

**年数とかは、スパロボマジックということに**
 ヤマトがイスカンダルへの旅に出ていたころ、破壊された地上では無法者が放棄された武器を奪い合って暮らしていた。
 バルチャーと呼ばれる彼らに、一人の少年が一人の少女を助けるために加わり、そして戦い、過ち、乗り越え、成長した。彼らは破滅的な内戦を終結させ、伝説に終止符を打った。
 そして呪われた機体は月をめぐる破片となり、復興し平和を謳歌する地球で、皆はそれぞれの道を歩んでいた。
 だが、ティファ・アディールの予言を聞いて再び集まったフリーデンのクルーは、ジャンクから強引に作り上げた宇宙船でヤマトを追ったのだ。
 船は空母型全通甲板がある、150m程度の小型船。MS母艦として、修理工場をそのまま飛ばしているようなものだ。
「だが、月に来るのが精いっぱいで、とても恒星間航行ができる船じゃない」
 ジャミルの言葉に千兵衛が、
「こちらの船に横付けで固定しませんか?それぐらい引っ張っていける馬力はありますとも。そのかわり、できましたらトイレを貸していただけたら」
 切実な頼みに、フリーデンのクルーは驚きあきれていた。
 その結果、奇妙な双胴船が、それでも十分ヤマトに追随できる速度で月軌道を離れ、宇宙に旅立っていった。
 その中では真田・千兵衛・キッドの三人が破壊されていたガンダムDXをほとんどゼロから作り直していた。
「地球圏を離れれば、サテライトシステムは使えなくなるぜ」
「なら、ヤマトまたはスランプ号から給電できるようにしよう。それぐらいの出力の余裕はある」
「関節モーターと装甲のパワーアップはこの天才則巻千兵衛にお任せを」
「コスモタイガーのエンジンをつければ、平常出力も十倍以上になるぞ」
「いっそ、可変機にしない?」
 ……えらいことになりそうである。
 また全艦、千兵衛の技術もあってミサイルと機銃の性能が大幅に強化された。
 また千兵衛たちやヤマトクルー、フリーデンクルーは改造が半ばの状態で出航したイシュメール号の武装強化にも協力した。
 そして006の素晴らしい料理が、皆を存分に満腹させた。
 スランプ号も、写真を現実のものにできるホンモノマシーンや、自在に分子を組み替える変身ポンポコガンで極上の料理を提供した。
「それよりみんな、せっかく組んで宇宙を飛ぶんだ、飲もう!」
 あかねの叫びにヤマトクルーも009たちもフリーデンクルーも数名除き大喜びで、クルーがあちこち行ったり来たりしながら大宴会がはじまった。

 その3?隻が小惑星帯に差し掛かるころ、2隻の追っ手が急襲してきた。
「アンドロメダと」
「海賊課のラジェンドラ!」
 最新鋭、無敵戦艦といわれる防衛艦隊旗艦アンドロメダ。
 そして誰もが海賊以上に恐れる、海賊課ラテルチームのラジェンドラ。
「ちくしょう、海賊課だってあのメッセージは受信したはずだ。敵は海賊だろう」
 いきまく古代に、真田が
「海賊課から見れば、反逆者である我々は海賊だ」
 と肩をすくめる。
「われわれも一視同仁とされるのは心外だが」
 009ジョーが憮然とする。
「海賊か!かっこいいじゃねえか。ドクロ旗掲げようぜ」
 木緑あかねの若さは、むしろヤマトやフリーデンの若いクルーには共感されている。
「海賊課っていえば、確か」
 ピースケがおびえている。
「そう、一人の海賊容疑者を倒すために、三万人の観衆もろとも満員の劇場を吹っ飛ばしたそうあるね」
 料理を運びながら006がびくびくという。
「奴らの残忍さは、奴隷商人や黄金海岸帝国秘密警察、カタンガ政権の皮はぎ団以上だときく」
 008が怒りに拳を握る。
「気をつけろ。ラジェンドラのCDSはあらゆるコンピューターを破壊してしまう」
 真田が叫ぶ。
「心配ないさ。ヤマトは人間の艦(ふね)だ、いざとなれば手でのマニュアル制御でも戦闘はできる」
 古代がうそぶく。
「ああ。もし上が言ったように、アンドロメダ型の戦闘ロボットにされていたら、CDSでアウトだった」
 相原が相槌を打つ。

「本当にヤマトが海賊なのでしょうか?」
 ラジェンドラのブリッジで、機械の人工音声が響いた。
「どうでもいいニャ、うまそうニャ」
 黒猫、にしては妙に大きい動物が人間の言葉を発し、何かを食べ始めた。むしろ犬に近い意地汚い食べ方だ。
「あ、アプロてめえ、人が金星基地のヘレンちゃんからもらった大事なチョコを」
 ラテルがアプロの首を絞めていたら、アプロが泡を吹く。
「しびれ薬が入っています。本当は怒りを買っていたようですね、ラテル」
 ラジェンドラの言葉に、ラテルが号泣した。
「そんな……」
「さて、チーフ・バスターの命令を復唱します。『ヤマトたちが海賊かどうか見きわめ、海賊であれば倒せ。また、海賊課も受信したメッセージの根幹を探れ。〓冥について何か言っていたようだ』です」
「珍しく明確じゃないな。まあ、海賊ではないと証明されるまでは海賊とみなし、叩くだけだ」
「食えればなんでもいいニャ、腹減った」
「さっき食料庫の非常用クッキー食いつくしただろうが!」
 そんな一人と一匹と一艦を尻目に、アンドロメダもまたヤマトに迫りつつあった。

《2 緒戦》

 ヤマト、イシュメール、スランプ号+フリーデンの三隻は、アンドロメダ+ラジェンドラの追跡を逃れるため小惑星帯に入った。
 光速の数%という超高速、もちろん小石大の小惑星と接触しても爆発轟沈は避けられない。だからこそアンドロメダも追ってこないだろう、という計算だ。
「イシュメール号を先頭に立てる。フランソワーズが、航路上の小惑星を全部観測し、ジョーが大型レーザー銃で排除する」
「イワンさえいれば、安全な道を見つけてくれたのになあ」
 007が愚痴った。
「ティファも、能力で見ていてくれるってよ」
 ガロードも、ビットを改造して有人化したモビルスーツに、ティファと二人乗りでヤマトの甲板に立つ。

「グリッド2-1、左右0.00000173、上下マイナス0.00000023ラジアン」
「よし」
 002の指示に従い、宇宙服も着ていない009が、全長4mある巨大レーザー砲を正確に操作し、射撃する。
 その射撃を補助するため、ヤマトの艦首から強力なレーザーが高精度で格子網を虚空に形成している。

「ガロード。ここに」
 ティファが拡大した画面に、ガロードの大型狙撃銃が狙いをつける。ヤマトのエンジンに直結され、サテライトキャノンに匹敵するエネルギーを供給された大型銃から、太い光弾が放たれる。
「命中」
 多少の精度の低さは、光弾の太さでカバーできる。
「ありがとう、ティファ」
 と、二人は相変わらずコクピットでいちゃついている。
「あいつら、この任務に出たのっていちゃつきたいからじゃねーの?」
「ありうるな」
 ウィッツとロアビィがこぼしていた。

 そうやって小惑星帯を抜けた、だがそこにラジェンドラが突如出現した。
「ラジェンドラにはオメガドライブがある、どこだろうと瞬時に出現できる」
「くそっ、だがアンドロメダは振りきっているんだ」
「いいえ、右舷!」
 002の叫びに確認する。左右から挟み撃ちされている。
「セット、DCS」
 ラテルが素早く命令する。アプロが残忍に舌なめずりをしていた。
 アンドロメダの主砲が、光を漏らしている。正確にヤマトを射程に収めて。
「くそ」
 ガロードのビット改が巨大な狙撃銃を構えなおす。
「撃つな!地球人同士の争いは最低限にするんだ」
 ジャミルの通信に、ガロードの指がトリガーから離れる。
「くそっ」
 彼も内戦だけは起こしたくない。
「どちらが先に撃つか……それとも見逃してくれるか」
 古代が腹を決めるが、背後のラジェンドラが恐ろしい。
「CDSか…使われたら、助からないな」
 009が胸を押さえ、歯を食いしばる。サイボーグの体内のコンピューターは、生命維持に直結している。
「くそ、こんなときに001がいれば」
 002がぼやく。
「相原、ラジェンドラに通信しろ。『ヤマトはCDSでは無力化できない、手動操作できる』」
 古代が苦慮しつつ告げる。
「だが、サイボーグチームは」
「ほかにどうしろというんだ!真田さん、何かないんですか」
「CDS対抗兵器か。あれはファラデー箱でも防げないんだ、波動エンジンを利用すれば、時空を切り離して、これくらいなら守れるかもしれないが」
 と、真田は両手でメロンパン程度の空間を作って見せる。
「それで、誰が守れるというんだ。せめて人間一人分、いや八人分……」
「無理だ!」
 真田が叫ぶ。
 それを見ていた太田が、つぶやいた。
「タイムくん」
「え?」
「則巻博士が作ったというタイムマシーン、あれはそのサイズに入りますよ」
「な、なに……完成していたのか!」
 真田が畏れおののいた。
「スランプ号、スランプ号!則巻千兵衛博士!タイムマシンは持ってきていないか?」
「タイムくん?ああ、どこにしまったかなあ……」
 散らかった物置を千兵衛がひっかきまわす。
「相原!」
 古代の叫びに、相原が笑顔で通信する。
「ラジェンドラ、どうぞ。こちらにはタイムマシーンがある。そちらがCDSを使うすぐ前に戻って、破壊してやる」
 メインパネルでは、千兵衛がこれでもないそれでもないと、がらくたをひっかきまわしている。アラレもそれをまねて盛大に散らかしているから、よけい見つからない。
「海賊課、ラジェンドラから返信。『海賊とは交渉しない。即刻の武装解除か、死か』と言ってます」
「くっ……」
 歯ぎしりをする古代の前で、メインパネルが分割される。アンドロメダの主砲がヤマトを狙い、追い続けている。

「くだらないはったりを……ラジェンドラ、セットCDS」
 ラテルが画面をにらむ。
「CDS、レディ」
 ラジェンドラの声は常に変わらない。

「これ、ああポンポコガンだ」
 千兵衛が見つけ、放り出したのは変身ポンポコガン。
「あ、でもそれで、コンピューターを全部一時的に別の何かにしてしまえば、それでCDSはどうにかなるんじゃ」
「イシュメール号にまで行く時間はないぞ!」
「え、人間に戻れるのか?」
 通信を聞いていた004が驚いた。
「戻りたい……だがそれは、少なくともこの戦いが終わってからだ」

 やきもきしながら、がらくたをひっくり返す千兵衛を見ていた古代。そこに、突然通信が割り込んだ。
「フリーデンのジャミルだ!ティファが、早く地球の仲間を助けに行け、と、この方向だ」
 と、座標が、アンドロメダやラジェンドラにも送信される。
「こちらのレーダーも、攻撃されている艦隊と11番惑星をとらえてるぜ」
 あかねの叫び。
「イシュメール号のレーダーも戦闘をとらえました。情報を転送します」
 002が報告する。
「太陽系外周艦隊だ!」
「すごいレーダーだな、この距離から」
 真田があきれる。
「今は地球人同士争っている場合じゃない!奴らは間違いなく海賊だ!」
 古代が叫んだ。
「海賊は倒す!」ラテルが叫ぶ。「ラジェンドラ、Ωドライブ」
「Ωドライブします」
「ヤマト、小ワープする」
「アンドロメダはこの事態を地球に報告してください!」
 二隻が素早く虚空に消える。
 同時に、イシュメール号とスランプ号/フリーデン4が一気に加速し楽々と光速を超えた。

 二隻がドライブアウトし、ラジェンドラが存在確率を1として出現するのと、イシュメール号とスランプ号/フリーデン4が減速して通常空間に戻ったのはほぼ同時だった。
 ラジェンドラは出現した時点で、もうナスカ艦隊の一隻に体当たり、粉砕している。
「なんて頑丈さだ」
「セット、CDS」
「CDS、レディ」
 ラジェンドラの静かな声とともに、一瞬で何隻かの艦が動きを止める。
 そこにヤマトとアンドロメダの主砲が刺さる。それこそ固定標的でしかない。
 だが、動きを止めない敵……とてつもない大きさのタコのような動物がラジェンドラをつかまえ、締め上げる。
「うわあっ」
「うまそう」
 ハッチをこじ開け侵入する巨大な触腕にラテルのレイガンが放たれ、こんがりと焼けたのにアプロが大喜びでかじりつく。
 そしてすさまじい食欲で、半径3m・長さ20mにも及ぶ肉の塊をあっというまに食いつくしてしまった。
「うわ」
 イシュメール号、スランプ号/フリーデン4も同様の敵に襲われている。
 だが、イシュメール号にとりついたタコは006の炎と005の怪力に、そしてスランプ号に巻きついたのはアラレがあっさりと引きはがし、結んでバレーボールのように虚空に吹っ飛ばしてしまった。
「なんてパワーだ」
「まさかアンドロイド?……あれほど完全に人間同様、しかもあの出力」
 つぶやく真田に、千兵衛が必死で口に指をあてて「ないしょ」と伝えている。
 幸い、タロウやあかねは船内が引っくり返っていてそれどころではない。
「見ろ、11番惑星基地がやられている」
「それに、外周艦隊も」
「救難信号はなかったのか?」
「だめだ、この一帯に妨害電波が!地球との交信は不可能!」
「イシュメール号やスランプ号の、特殊レーダーだから探知できたんだ」
 だが、ほかにも巨大な生物と思える敵は次々と襲ってくる。
 ヤマトを襲う怪物に、フリーデンのモビルスーツ部隊が向かおうとする。だがいち早くアラレがものすごい速度になるジャンプで先行、やすやすと触腕をひっぺがす。
 それで稼いだ時間に、フリーデンからガンダムXディバイダーが到着し、ビームサーベルで敵を切り払う。
「地球の艦が炎上しているぞ」
「救助隊を!」
 ヤマトから救命艇が射出され、エアマスターバーストの護衛で炎上している艦に接近。
 イシュメール号が残った敵に襲いかかり、巨体にもかかわらず戦闘機のように身軽な機動性で翻弄する。さらにレオパルドデストロイがGファルコンのサポートを受けて加わり、強大な火力を叩きつける。

 救命艇から侵入した古代たちは、死屍累々の惨状に胸を引き裂かれる思いで生存者を探した。
 艦長室に、一人だけ生存者がいた……土方竜。元訓練学校校長として知られる宇宙戦士で、古代とも面識がある。
 救命艇がヤマトに戻ったとき、思いがけないトラブルがあった。置いてきたはずの森雪が、強引に乗船していたのだ。

 だが、そんな間も作戦は続く。
 ナスカ艦隊の残党は攻撃を挑み、第11番惑星基地を襲う戦車隊や戦闘機隊もあった。
 宇宙空間では主に002が監視を担当、ヤマトの主砲とフリーデンの甲板に陣取った改装ビットの狙撃が、監視圏内の敵をことごとく正確に撃墜する。
 そして第11番惑星ではヤマトからの援護を受け、コスモタイガー隊とガンダムたちが降下し卓越した戦力で敵を駆逐していく。
 Gファルコンと合体したレオパルドデストロイは巡洋艦並みの対空火力を発揮し、エアマスターバーストはいち早く地上で人型に変形、地形を活かして動き回りながら戦車を撃破する。
 コスモタイガーは圧倒的なスピードと火力で敵機を粉砕し、地上の戦車をハチの巣にしていく。
 その援護に発奮した空間騎兵隊の生存者も奮戦し、ついに斎藤以下生存者たちが救助され、ヤマトに収容された。
「なんだよあの巨大な機械人形」
 と文句を言うものも多かったが、今はそれよりも傷の痛み、死んだ戦友の悔しさのほうが先に立つ。

 戦いが一段落して、古代が地球とラジェンドラに通信した。
「諸君の身柄は私が預かる」
 という藤堂司令長官の言葉に、ヤマトクルーも009たちも大喜びだ。
 喜びと誇りに胸を張り、
「もう文句はないだろう」
 とラジェンドラに通信するが、ラテルの表情は変わらない。
「お前たちが海賊だと証明されるまでは海賊とみなす。敵は海賊だ!海賊の敵であっても海賊でないとは限らない」
 と、厳しく通告して戦闘準備を解かない。
「くそ、わからず屋め」
 と、戦いの覚悟を決めた古代たち。
 そのとき、
「通信です!強い、でも妨害されている」
 と声が入る。
「こちらにも信号が入っとるぞ」
 スランプ号からも通信。
「わたしも受信しました。解析します」
 ラジェンドラもそちらに集中、とてつもないリソースを傾けている。
『ちきゅ…わた…テレサ…はくしょ…やま…ぞあ…ずぉー…ましり…001…めい…てんび…こんと…どうか…みどり…かーりー…ぞあ…すくって…』
「〓冥だと!」
「通信解析、地球各地の研究所が受信したデータとも比較較正しました。『地球のみなさん、わたしはテレザート星のテレサ。白色彗星のズォーダー大帝……山吹みどりがマシリト軍団に囚われ……001も拷問されている……〓冥が天秤を襲撃し、混沌を……ゾア率いるガデス軍団。カーリー・ドゥルガー「を」「何から」救うのか、またはカーリー「から」「何を」救うのかは判別できません」
「当然、この宇宙を〓冥から救うに決まってるだろう!いくぞ、〓冥が優先だ!」
 そうラテルが叫び、真っ先にΩドライブの準備に入る。
「やっとしっぽをつかんだニャ」
 アプロもさんざん食って満腹し、闘志に満ちているようだ
「みどり先生が…」
「こちらも、示された座標に行くしかないです。そこはちょうど、001がさらわれた方角線でもあります……そこに、父が囚われているのなら」
 サバが決意に満ちて009たちを振り返る。
「だが、そちら方面は今、時空の流れが不安定になっている。ワープにはリスクがあるぞ」
 真田と島が空間レーダーを見てぼやいた。
「いや、行く。地球を救うため、そして仲間たちの大切な人を救うために」
 古代が決意に満ちてブリッジを見回す。レーダーには雪の姿がある。そして艦長席の土方がうなずいた。
「そう、行かねばならないのです。せっかく、多くの人の犠牲であがなわれた平和を、守るために」
 そう、苦しみを押し殺して言ったティファの肩をガロードが固く抱いた。
 ジャミルが二人の肩に手をかけ、全員がうなずき合う。
 そしてアラレが嬉しそうに窓に駆け寄り、千兵衛も固い決意をこめて、スランプ号の特殊なエンジンに手をかけた。
「出発!」

 次々と、四隻…一隻は双胴船…が虚空に消える。
 地球では、藤堂司令長官が祈りをこめて遠い夜空を見つめ、ギルモア博士が通信を受けて涙ながらに祈っていた。
 木緑家や空豆家の家族たちは、子供たちがどれほど危険な航海に出たのかも知らず、暢気に家事を続けている。

 白色彗星襲来まで、あと半年もない……