友人ネタ話 vol.1 〜akikiの章〜 葵 竜誇 1998.12.03  −いるみねいしょん−  12月に入って、街並みは色鮮やかなイルミネーションに飾り、彩られる。 多彩に光り輝く電球。ツリーに下げられた数々の装飾品。 そして、自然の飾り、White snow 。  北海道札幌市中央区大通公園、12月24日クリスマス・イヴ。  この日、ある1組の男女がこの場所を抜け、家路を急いでいた。言葉少なげだが寄り添いお互いを体で確かめ合うような、そんな幸せを持つ2人。 「俺たち出会ったのは、今日だったよな」 「うん。聡があたしに声かけたんだよね」  2人はそんな言葉を残して、ざわめき溢れる雑踏の中へと姿を消してゆく…。  一年前、彼女は市内の小さな宝石店で働いていた。  その日はイヴと言うこともあり、シャッターを閉めたのは10時を少しすぎた頃。  彼女は急ぎ、約束の場所へと向かう。  しかし、向かったその場所には待ち合わせている人の姿はなかった。携帯電話を何度コールしても応答はない。  信じたくない言葉を胸に秘めつつ、彼女は雪の中で待つことに決めた。  そのころ、同じ街中を一人寒さに肩をすくめ、家路を急いでいる男が居た。  彼は同窓会と称した飲み会に愛想を尽かせ、足早に切り上げたその帰り。   ぴるりん。ぴるりん。  突然、彼の携帯電話が音を立てる。 「…はい。なんだ、なんか用? …えぇ? なんで俺が?」  ぴっ。  回線を切断し、会話を終えた彼の表情に疲労の感が見て取れる。 「なんで、他人の事まで面倒見なきゃなんないのかね…」  溜息まじりに彼は、つい今し方来た道を戻っていった。  −宛のないプレゼント−  彼女の前をいくらの人が通り過ぎていったのだろうか。  待ち人は来たらず、約束の時間から1時間が過ぎていた。  気落ちした心を取り繕おうと、手にしていたバッグから一つの包みを取り出し、手の中で遊ばせる。 『今日、手渡そうと思ってたのに…』  包みをバッグに戻し、空を仰ぐ。  灰色の雲が空いっぱいに広がっている。雪は当分止みそうになかった。  この空のように…彼女の心は晴れない。 「あの、相田 都さん?」 「あ…、はい、そうですけど…」  待つのに疲れた頃、唐突に自分の名前を呼ばれ彼女は振り返る。  そこには知ったことのある顔。  それはたしか、あの人の知り合い。 「あのですね、…藤井が会えないって言ってました」 「え、なんで貴方がそれを?」  心の片隅に追いやった思いが、確信へと変わる。 「さっき、電話来てそう言ってくれと。それと、もう電話しないでくれって…」 「…っ!」  驚愕、絶望。彼女の表情はそんな感情を一部も隠すことなく表れて…やがて悲しみを湛えた表情へと変わってゆく。 「それじゃ俺、これで帰りますから…」  あまりにも悲壮な表情に彼は目を背け一言つぶやき、きびすを返す。 「あ、待って」 「はい?」 「あの、お暇でしたら少しつきあっていただけません? 理由は…無いのですけど…」  悲しみをたたえた笑顔が、彼の目の前にあった。  市内のとある雑居ビルの地下に、現代建築の感じを前面に出したバーがある。  そのバーは間接照明の光を店内全体に満たせ、中央に置かれたグランドピアノの音とともに落ち着いた雰囲気を醸し出していた。  2人はカウンターに席を置くと、お互い交わす言葉もなくオーダーを済ます。  しばらくの静寂。それに見切りを付け口を開いたのは彼女、都の方だった。 「また、夢になったわ…」 「なにがです?」 「大切な人とクリスマスを過ごすの。今まで一度も叶わなかったから」  出されたカクテルグラスを指で弾きながら、呟く。 「あたしって飽きられやすいのよね。春に出会って冬には別れて…。結局いつも一人でクリスマスを過ごすの」 「そんな…」 「ありがと。でもいいわよ、慰めてくれるのは。もう馴れたわ」 「そうですか…」  かける言葉が見つからずただ、一言言葉を返す。  からんっ、と唐突にグラスの中で氷がはじけた。 「…今日はありがとう。あたしなんかに付き合って疲れたでしょう?」 「いえ、そんな…」 「そろそろ帰りましょうか。電車、なくなっちゃうし」 「あ、送っていきます」 「…ありがとう」  都は笑顔を見せた。  −聖夜に−  点け放されたTVから、この日のために作られた曲が流れている。 「そういや夢、叶ったかな?」 「何いってんのよ、叶ったじゃない。今、こうやってね…」  幸せそうな笑顔を、都はしている。  12月24日、クリスマス・イヴ。  この日は世界中の愛し合う2人のために。幸せは満ちあふれ、奇跡は空より訪れる。  去年の今日、出会った2人が理由無く引かれあったのはクリスマスの奇跡だろうか。  …それは冬の物語。 はっぴい・えんど。    こめんと。  と言うことで、クリスマスにぴったりはまる宣伝を含めた悪魔の手紙用原稿。  それを今回手直ししてお送りいたしました。  主人公は相田 都とakikiという、組み合わせ。さすがに名前かえましたが。  物語を紐解くとですね、akikiが札幌の専門学校に通いはじめて2年目の冬、市内の宝石店で働く相田 都に知り合うことから始まったと。同窓会とは高校の同窓会で、藤井というのは同じ専門学校の同級という設定です。 まあ、他にも都は北広島のマンションに住んでいるとか、akikiは未だに美唄市に住んでいるとかたくさん裏設定はあります。(汗)  このときAkikiは20歳(?)、都は23歳。まあ、いいところでしょうか。  ちなみに都には元ネタがあります。「ああっ女神さまっ」LDに出てきた宝石店の店員。 あれが元のキャラクターです。(笑)  ロングヘアーに軽くウエーブがかかっていて、優しそうで魅力的な…。と、妄想に浸れます。声優に麻見 順子さんがやっていることにも理由があるのですが…。 文章のバージョンは1.12です。