立川恵(たちかわ めぐみ)

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公式ホームページあり、リンク


作風概説

 可愛く、ダイヤでできたシャンデリアのような輝きのある絵としっかりしたストーリー。
 明るい笑顔ときゅうんとするような泣き顔、意思の強さを見せる時の圧倒的な光の量がすごく、「ダイヤモンドの光を宿した天使の羽」という自作にある言葉そのもの。変身シーンなど決め場で画面全体を斜めにし、胸像のアップに小さめの全身像を重ねる構図が得意。華麗なアクション、スポーツなど特殊効果もずばぬけてうまい。

 ファンタジーが得意で感性も鋭い。キャラクター作りもうまく、サブキャラも面白いし男の子(特に中身)がめちゃんこかっくいい。

 ストーリーもとても壮大で、しっかり感動的な恋愛を描ききることができる。ギャグも特に「あとで死ぬほど紹介してやるよ」やさりげない欄外でのキャラに対するツッコミが笑える。

 数は少ないが、特に初期の読み切りにも定評がある。変身などの表現も巧みで、華やかな画面から読者を引き込むのが上手い。


代表作

92「あさがおのポートレート」
 小さな朝顔は公園でアイスクリームを売っている一馬くんに恋をし、おてんとうさまにお願いをして沙綾という人間の女の子になった。でも期限は1週間。絵描きになりたくてバイトをしている彼を手伝って、彼のために!
 人魚姫を下敷きにした、切なさと純粋さに胸が震えるような傑作。

93〜?「夢食案内人」るんるん連載、単行本第一巻発売中。
 完結していないが、「怪盗セイント・テール」が軌道に乗って余裕がなくなったためか、なしくずしに消えている。
 悩んで悪夢を見ている女の子のところへ、やってくるのは夢を食って魔法を使うドリーム・バクのバクオくんとその飼育係まりんちゃん。
 魔法を使って夢をいい夢にして、そのいい夢をすこしバクオくんに食べさせて、という契約条件で助けてくれる。少女マンガのエッセンスが詰まった素敵な魔法少女もの。

94〜96「怪盗セイント・テール」単行本全七巻。アニメ化もされた傑作。
 夜を騒がす怪盗、ポニーテールがトレードマークのセイントテールは実は普通の中学生、羽丘芽美。親友のシスター見習いの聖良のところに救いを求めてやってきた人のため、ある時には騙し取られた家宝を取り戻し、ある時には心を救うために今夜も大活躍!
 でも、最近クラスメートの飛鳥Jr.が警察を指揮し、捕まえようとしてくる。だんだん彼が好きになるにつれ、彼を騙している罪悪感、自分自身なのに感じるセイントテールへの嫉妬、いっそ彼の腕の中に捕まりたいけど捕まって正体がばれたら嫌われてしまうジレンマと乙女心は乱れていく。
 一見すると「CAT'S EYE」の設定だが、恋愛の表現が最高!特に転換点になった鏡のシーンや告白シーンの素晴らしさは筆舌に尽くし難い。怪盗ものと見るのではなく、恋愛ものとして読むと身震いがするはずだ。
 愛妻弁当を始め手を変え品を変えの予告状、それに「つかまる」「つかまえる」が、セイントテールである芽美が身も心も全てアスカJr.のものになることを暗喩している寓意の見事さ、人気だけのことはある傑作。

97〜99「夢幻伝説タカマガハラ」単行本全五巻。
 しっかりものの小学生五年生、結姫ちゃんが空から授かった勾玉を手にした。それ以来鏡に幻の女性が出て何か訴えかけてくる。勇気を出して応えようとし、彼女が差し出した鏡を受け取った時、幻が浮かびあがって話しかけてきた。
 中つ国と呼ばれる現実世界と夢の世界、高天ヶ原の両方の太陽=天照が自然破壊によって危ない、助けてくれと語る女性「思兼神」、でも結姫は力尽きて眠ってしまった。その時光に包まれ、気がつくと結姫は夢の世界、高天原に。そこでいきなり大好きな隆臣が少し大きくなったような盗賊団の頭領にキスされそうになって!しかもこの世界での記憶もない。そして判明する。伝説の”地平線の少女”であった結姫の呪文は全ての生き物との和解をもたらす事を。
 仲間も次々集まってくるが、人間の自然破壊は容赦無く二つの世界を責めさいなんでいる。
 ありそうでなかった環境問題をメインテーマに置いた壮大なファンタジー。人間の業に胸が痛くなり、絶望をはらんだ衝撃の真実に体が震え、そして愛の深さに涙した。特にラストに至る盛り上がりは類を見ない。

99〜2002「電脳少女Mink」単行本全六巻。
 ミーハー少女、白石みんくが初めての恋を知った時、同時に手にした一枚の CD…それは2099年の CD-ROM だった。友達の叶花&真帆子ちゃんがそれを起動し、そこにあった仮想人物設定ソフトに遊びでみんくをアイドル化したデータを入力、実行した瞬間みんくはスーパーアイドル Mink に!
 その姿が話題になり、みんくが一目ぼれした相手でもある弱小芸能プロ(ちなみに真帆子の兄)のモトハル先輩が Mink を探し回って、みんくはその元に赴いた…でも、未来のソフトを起動したと知れれば、関係者ごと抹殺される!だから Mink の正体はヒミツ。
 巨大なクリスタルガラスを爆発させ、光を当てたように圧倒的な輝きにあふれる人気作。


今までの実績、現在の地位

 アニメ化の実績もあり、抜群の力量を持つ。その後作品がアニメ化されることはないが、全員サービスやカラーページなどの扱いは常に高い方。
 人気、一般での知名度も高い。特にネット内の関連ホームページの多さ、ファンの結束の固さは凄まじいものがある。

 最近本誌連載はなく同人誌を発行したり、ゲームのキャラデザをしたりと外でも活動している。「なかよし」の増刊でも描いており、今後は未知数。


個人的な感じ、思い出

 その純粋な魂とメッセージの強さ、切ない展開に文句なしに感動している。

 特に「夢幻伝説タカマガハラ」の名シーン、「いただきます、こんなに大切な言葉だったんだ」を読んだ者は、まともな感受性の持ち主なら自殺など命を粗末にする事はできるはずはない、と確信している。おかげでどう絶望的な状況でも自殺できず、閉口しているぐらいだ。
 またプロポーズのシーンも腰が砕けた。
 もっと知られてよかった、全ての子供たちに読んで欲しい、ここ十年の「なかよし」全体でも最高ランクの傑作だと思っている。なにしろ今読み返してまた泣いてしまったのだ。
 また発明家の圭麻に「こんなこともあろうかと」の一言を言わせなかったのか、単に思いつかなかったのか自粛したのか一度聞いてみたい。

「夢食案内人」など男の子のカッコよさも同じ男としてあらまほしい。

「電脳少女 Mink」の終わり方は筆者も不本意。「怪盗セイント・テール」と共通の構造(自分の変身した姿との三角関係)があった分、それをどう乗り越えるか楽しみだったが本編では Mink の力が生み出す奇跡…ショーに終始してしまい、みんくちゃんが成長し、自分で動くドラマの部分がほとんど進まなかった。
 今度こそドラマが進むと思ったところだったので残念。
 中盤ではあまりにやるせない展開に悲鳴を上げたものだ。

 これからどうなるかは分からないが、また感動させて欲しい。個人的には「夢食案内人」の再開と「タカマガハラ」の続編、純粋な学園ラブストーリーを希望している。